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異世界の映像

 ここは惑星オサムテ衛星軌道上。発見者のエイトムが勝手に命名した惑星である。

というものの、発見者に命名権があるから、今後この惑星はオサムテと呼ばれることになる。

エイトムは既に異世界の観測準備を整え、惑星オサムテを衛星軌道上から観測している。



「さてと、まずは映像を見てみたいよな」


エイトムはそういいながら観測衛星の望遠鏡の先を、夜、明かりがあったあたりだろうというところに向ける。エイトムの前にリアルタイムの映像が広がる。



低倍率で街らしいところは……と。やっぱり文明がありそうだ。何となくこの辺が街っぽい。

それじゃあ、倍率を上げて、と……おお!!あるある!街並みが見える!!家の屋根に、二足歩行をしている人っぽい生物もいる!流石に顔は分からないけど、久々のヒットだ!人口密度は、この領域は、少なくとも今の時間ではそれほど高くない。建物は平屋か、あっても2階建て止まりっぽい。

他には、これが乗り物かな。馬車?昔話に出てくるようなものだろう。車は……ないかな?見た目なさそうだ。ということは、当然宇宙空間に飛び出す技術もないから、不干渉か。ちょっと残念。まあ、いいだろう。観測を続けて映像を送っておこう。この地域はたまたまそういう文化の都市かもしれないし。もう少し観測を続ければ別の発見があるかもしれない。

それから、科学的な観測。これは、探査機を地上に落っことして結果が届くのを待てばOK。



そして観測装置を人のいなそうなところに投下して、結果を待つ。

一方エイトムは地表面の目視観測を続けるが、結局この星の文明レベルは動力に動物を使っているレベルより上にはいっていないということが確認されただけだった。



それにしても、なんか仮装っぽい人が多いみたいだけど。この人、尻尾みたいなのが見えるし、この人は羽のようなものが背中にあるし。なんだろう?



そんな感想をもちつつ観測を続けるエイトムであった。

今見ている画像以上に詳細な映像を撮るには、カメラを地上にもっていくしかなく、現時点では撮影不可である。科学が進歩しても大気による画像情報欠落は回避できない。


それから待つこと数日。観測機からのデータが続々と集まってきている。



自転周期は23時間31分12秒、公転周期が……約381日。一日がちょっと短いから地球換算で372日か。ほとんど地球と殆ど一緒だ。これなら、住むこともできそう。

シリウス4-5(シリウスの4番目に発見された惑星の5番目に発見された衛星)は酷かった。自転周期40分って、どうやって生活すればいいのよ?って感じだったもん。おまけに公転周期20日のうち半分は惑星の食になって夜が続くし。気候は平均すれば比較的よかったけど、あれじゃあ生活は無理だな。

その点、この星なら大丈夫。気温は、明かりが見られる近辺では……昼が25℃、夜が10℃。これも問題なし。

重力は0.85G。問題ないレベルだ。

気圧は0.9気圧程度かな?ちょっと薄いけど問題なし。大気組成は、窒素65%、酸素28%、アルゴン1%。主だった組成は地球と同じでこれも問題なし。それから、有毒ガスは……特にないけど、何だこれは?中間子?中間子が気体として存在するの?あれって安定しないんじゃないの?何か別の素粒子で安定化されているのかも。あとで研究所にサンプルを送っておこう。


そんな観測をしながら、最初のうちは慌しく、次第にのんびりとしてきたエイトムであった。

そして1週間分の観測データをまとめて、データ送付用のロケットにデータ、大気サンプル、土壌サンプルを研究所に送り届けるのであった。



    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇



 異世界にレトロな文明があることを公表し、また異世界フィーバーが世間では盛り上がっていたが、それ以上に研究所でホットな話題になっていたのが、例の中間子。


「なんでこんな物質が存在するんでしょうね?」


異世界から送られてきたサンプルを見て狂喜しているのはララム博士。解析部門にいる博士である。


「本当に。こちらの物理常識では考えられないですね」


と答えるのはアトス研究員。ララム博士の下で働いている一研究員である。


「この物質が大量に存在したら、今までの物質を遥かに凌ぐ硬度の材料が出来ますね」

「そうね。今までは原子核の周りを電子が覆っていたのに、これを金属のようにまとめれば原子核が密に結合したような物質ができるから、圧倒的に硬い物質が出来るわね。中性子星より密の物質が地上で入手できるのですからね」

「重量はどうでしょう」

「この中間子を数層にすればそれも問題ないのじゃないかしら?

物質としての特性は未知だけど、それでも硬度は維持されると思うわ」

「そうですね。そのような物質ができたら、いろいろブレークスルーがおきそうですね」

「でも、これが大気にあるみたいなのだけど、どうやって集めればいいのかしら?」

「それなら、私にいい考えが……」


その後、異世界観測を続けるエイトムのところに、新たな命令が下された。


大気から中間子を回収することになった。

ついては、地表におりて、拠点をつくること。

最初は人目につかないところにて、現地人の行動、言語の調査に専念すること。

回収方法は検討中のため現在説明できないが、現地人の協力が不可欠となる見通しのため、早めに現地人とコミュニケーションをとっておくこと。

協力者が得られれば尚良い。


「ふーん。地表におりるんだ。これで現地人の調査がより進むな」


そんなことを考えながら、衛星軌道上に母船を残し、着陸船に必要な機材などを移して地上に向かう。


「目的地は……この辺の山の中。

傍に湖があるから、水は現地調達可能。街道が傍にあって近くの町まで約20kmだから、最悪歩けるし、目立たない時間だったらバイクもある。馬車っぽいものもあったから、動物にも乗れるだろう。

探査機からの電波も20kmだったら問題なく届くから、OK。

ということで、この山に向かってレッツゴー!!」


着陸もワープを用いる。宇宙空間を移動するような大規模なワープでなく、ほんの数m~数百km移動するだけのワープ。まず数十km単位のワープで大気圏、地上数kmに移動し、それからは数百m~数mのほんの僅かな距離のワープを極短い時間で繰り返して、徐々に地表面に近づいていくのだ。傍から見ると空飛ぶ円盤が羽もないのに飛んでいるように見えるかもしれない。最後は人間がモニターを見ながら着陸箇所を決定する。

大気圏に高速で突入すると高熱になり、明るくなるため他の人間に見つかる可能性が高くなるが、この方法であればそのような心配がかなり少なく、結果としてエイトムは誰にも見つからずに地表に降り立つことが出来たのだった。

ようやく異世界に到着しました。

ヒロインは……現れるかどうかは不明です。

次は1週間以内に投稿したいと思います。

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