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第7話 城の中にて―ある兵士の憂鬱―

「女使用人部屋に侵入者だぁ?」


朝はやく、仲間から知らされた報告に、俺は控え部屋の椅子に荒っぽく座り込む。

そして不快感を隠そうともせず顔をしかめた。

今日は久々にとれた休暇でエイミーとのデートだったのに、朝一番に呼び出され来てみればこれだ。まったくもってついていない。

おかげでエイミーにもフラれた。

突然の呼び出しでデートをキャンセルすること七回、とうとうフラれた。頬に散った手の跡がジンジンする。

俺だって頑張ったんだよ。朝一番になんとか時間を作って頭下げに行ったりしたさあ。

そしたら頬に張り手をくらわされて『私と仕事どっちが大事なの!』だって。

そんなの答えられるかっ!


「ああ、おそらく夜更けから明朝までにやられたんだろう」

「見張りの奴等は何をやってんだっ!……それで、被害は?」

「ああ……」


仲間の男はここにきて少し気まずそうに口にするのを戸惑った。

どこか困ったように眉尻を下げる。


「それがな、服が一着盗まれていたらしい」

「……他の女使用人がやったんじゃないのか?」


まず一番に考えられる可能性はそれだ。その次はスパイ。

とはいっても、城の中に入れるしかも女の召使は元々いいとこの嬢ちゃん連中の奉公が多いから金目当てというのはあまり考えられないけれど。

バレた時のデメリットまで頭の回らない馬鹿は何処にだっている。まあ身元も調べられているので滅多にやらかすアホな奴はいないが。

しかし、仲間はその問いに首を横にふった。

なんだかめずらしく歯切れが悪い。


「可能性はあるが、どうにも男らしき不審者をみたって目撃談が何件かあってな」

「はぁ?!大変じゃないか!お前こんな悠揚に構えていていいのか、賊が忍び込んでるかもしれないんだぞ……!」

「……うん、その心配は多分ないと思うんだがな、なんというかその……」


彼はしばらく宙にうろうろと視線を彷徨わせていたが、大きく息を吸うと、観念したかのようにつぶやいた。


「盗まれたのは、女使用人の私服だったんだ」

「なっ……!」


ふざけてやがる。俺は絶句した。

そんな奴のせいで俺は呼び出されたのか!

なんでよりによってそんなものを盗みやがったんだろうか。

だって無いじゃん、中身ないじゃん!

中身ないのにどうやって楽しむんだよ。……俺には理解できない。

大体なにに使う気なんだ、ナニか。自分の女の服でも貸して貰いやがれ。

彼女がいない?俺だっていないわ。むしろお前のせいでフラれたわこんにゃろう!

てかもし女がいる癖に盗んだとかならもげろ。

どこぞの変態ヤロウのせいで俺の休日はオジャカだ!

人に迷惑かけちゃいけませんってママに習わなかったのか?お前の母ちゃん泣いてんぞ。

頭の中で、考えつく限りの下品な言葉をつかい犯人をののしる。

苦々しく舌打ちをする俺を仲間は苦笑して諌めてきた。


「まあまあ落ち着けって」

「これが落ち着いていられるかよっ!」

「気持ちはわかるさ。……とりあえず他に盗まれたものは、今のところないらしいのが救いだな。宝物庫や別の使用人部屋も今確認中だ。俺たちもいくぞ」

「はっ、城に侵入されてる時点で俺たちの面目は丸つぶれだろ」


今日は運が悪いのだろうか?本当にツイて(・・・)いない。

イライラとしているせいか、いつもよりいくぶん乱暴な動作で椅子から立ち上がる。

そろそろ見回りの時間だ。どうやら今日はそれに被害検査も加わるらしい。

襟元を正して部屋を出るために扉を開けるが、ドアから出る時手の指を挟んだ。地味に痛い。


訂正しよう、俺絶対何かに憑かれて(・・・・)いる。今日は間違いなく厄日だ。

例の騒ぎがあったせいか、城の中がどこか不安な空気と慌ただしさにざわついていた。


「……中からだったりするのかもな」

「は…?」


ふと真面目な口調で仲間がごちた言葉に聞き返す。


「何言ってんだお前」

「いや、だってこの城は外から入るのがなかなか難しいつくりじゃないか。案外内部犯かなぁと思ってさ」

「……へえ、たとえば?」


珍しく考えたことを言う仲間に少し驚きの混じった声で問うと、彼は真剣な顔を崩しからかう様にニヤっと笑った。


「そうだな、実はお前とかだったりするんじゃないか?」

「はあ?!……何言ってんだっ、そこまで飢えてねぇよ!」

「すまんすまん、まぁさっさと解決させて酒でも飲もうぜ」

「チクショウ、お前嫁さんもらったばっかだからって調子のるんじゃねぇぞ!」

「ごめんごめん、さあいくぞ酒が俺たちを待ってる」

「その余裕の笑みがムカつくわ!おごれよ、俺の傷口に塩を塗りんだんだから奢れよ酒」

「はいはい」


今夜は新婚の仲間を飲みと愚痴にとことん付き合わすことに決める。

俺は絡み酒で泣き上戸だから覚悟しやがれ。俺のハートは繊細なんだ。


そして俺たちは軽口をたたきながら城を見回りだした。

今夜俺を待ち受け居ているであろう愛しのワインちゃんやビールを夢見て。



しかし、事態はすぐに急変する。

盗品確認のため立ち寄った部屋、――勇者の部屋はすでにものぬけの殻だったのである。

すいません。

中途半端な所ですが、時間がなかったためいったんここで区切ります。

*ちょっと訂正しました。兵士がよりかわいそうな人になっています。

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