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第2話 据え損なんてあってたまるか

なんかおかしい。


勇者として城に迎え入れられ早三日。

私は多大な違和感に苛まれていた。


実をいうと、勇者ってことは黄色い悲鳴が上がるようなアイドル扱いなのかなあなんて、ちょっと期待していたのだ。

けれど突き刺さる視線は期待や熱狂以前に不審者を見るようなものばかり。それどころかお城の人々とは挨拶することすらまず無い。

係わりたくないと思われているみたいで、意図的に作った距離感を感じるのだ。

あれは遠慮とか、ましてや畏怖なんかじゃない。ポジティブルに考えて侍女の女の子に話し掛けたところ、横にいたおばちゃん侍女に屑をみるような目で睨みつけられる結果に終わった。

間違いない。あの目は『このロリコン野郎がッ…!』といっていた。

絶対に何かが間違っている。


ハーレムどころか話すのすらお爺さんもとい狸ジジイとオッサンぐらい。

なにが悲しくてそんな生活を送らなきゃならないのか。

こっそり部屋を抜け出そうとすると、どこからか現れたジジイに阻止されるし。

あの人は私のストーカーですか。いいえ、あれはただの狸です。

今日も部屋から抜け出して数歩、ゾクリと背筋に走った寒気に私は体を震わせた。

……見張られている、絶対に見張られている。


「おや勇者様、どちらに向かわれるので?」


当然のように斜め後ろからかけられた声に、引きつった笑顔を浮かべる。

このジジイ、暇なのか。

「……あ、あははー。いや、ちょっと城内見学を。やっぱお城って美人さんが多いですねー!」


うなれ私の表情筋……!

動揺丸出しの私にジジイは胡散臭い笑みを浮かべた。


「ほう、これは恐縮ですな。勇者様は手配させた者にもお手をつけられないので、てっきり好みに合わないのかと」


そうなのだ。

このジジイ、私に夜のお相手を手配、なんて余計な真似をしてくれやがったのだ。

さすがに初日にいきなり寝室に夜這いに来られた時は本気で肝が冷えた。

だって部屋に入ったらベットの中にムッチリ巨乳のお姉さんがスタンバイしてたんだもの。

なんとか誤魔化して、たぶんお姉さんを手配したであろうジジイを呼び出し、そんなのは必要ないと説き伏せ追い返したものの、ジジイは「ほほう、わかりましたぞ」とニヤニヤ含み笑い。

ホントに大丈夫かこいつ?と思いつつ迎えた翌日の晩。


ベットの中には小鹿のように震えるロリペタ少女が入っていました。


全然わかってないっ…!


私が頭を抱えて崩れ落ちたのは言うまでもない。


さらにその翌日なんてショタ少年がベットに潜り込んでいた。

ジジイはどういう目で私を見ているのだろうか。知りたいけど知りたくない、むしろ全て無かったことにしたい。

日に日にお城の皆さんの視線が冷たくなっているのは、きっと気のせいじゃないだろう。

だめだこいつら…早くなんとかしないと…、なんてリアルに口走ったのは初めてだった。


そんなこんなで、大事なものを失いながらも『女とばれる=死亡フラグ』は何とか回避しているが、そのうち彼女たちは風呂にまで押し掛けてきそうな気がする。

こうなれば女とばれるのも時間の問題だった。


「ハハいやそんなまさか、……じつは、自分の国では一度でも婚前交渉をすると『ウホッ!野郎だらけの筋肉天国~☆(ポロリもあるよ!)』に落ちる呪いがかかるという言い伝えが……」


あったりなかったり。


「……それは随分と、恐ろしい国ですな……」


「ええそうなんです、恐ろしいんです。しかも一番怖いところは、本人だけじゃなく係わった人間にもこの呪いがかかるのです」

「なんですと、まさか…!」


無言で見つめると、ジジイはゴクリと生唾を飲み込み後ずさった。心なしかケツをおさえている、…ような気がする。

蒼白な顔して悲壮な表情になったジジイに頷きをかえした。


「あなたの想像通りです」


すみません嘘です。

そんな心の声はもちろん間違っても表に出さない。

ガクリと項垂れたジジイの肩に手を置き、出来る限りの力で気遣うように優しい声を出す。

今なら私、役者になれる気がする。


「あなたを巻き込みたくない、わかっていただけますね?」


「うぬ……。いたしかたない」


緩みそうになる口元を押さえ、真面目な表情で私はジジイに手を差し出した。

グッと強い力でお互いの手を握り合う。

すばらしい達成感だ。


「……自分もそろそろ部屋に戻ります。あ、後で部屋にポリムの実を丸ごと一個、届けてもらえませんか?」


ポリムの実は味と形が林檎にそっくりな実で、皮は紫色をしている。かじるとシャリシャリではなくゴリゴリと音がするのだけれど、食感は林檎と同じという摩訶不思議な実だ。

初めて食卓に並んだ時は、その毒々しい色にびっくりした。


「ポリムの実?昼食に出しましょうか?」


「いえ、ちょっと小腹が好いちゃって。それにあんなに人がいたら丸ごと食べるわけにもいかないでしょう?」


「まあいいでしょう。丸ごとですな」


「ええ、お願いします」


頷くと、私はおとなしくもと来た部屋へ歩を進めた。

諦めたわけじゃない。計画を練るのだ。

この軟禁状態と、この三日間ジジイとしか喋ってないという恐怖の自体から脱出しなければならない。


すべては汚名返上のために…!


2話目をちょっと書き直してみました!

書くのが遅くてすいません。

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