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 施設の説明を受け、ロッジを後にした。

 ロッジの店舗はこれからもちょくちょく立ち寄ることにしたい。

 ポイントを獲得できる目処が立ってからだが。


「セリー、魔法の威力が上がる大盾なんかはないよな」


 ハルバーの迷宮に移動しつつ、一応訊いてみる。


「うーんと。ヤギのモンスターカードを融合すれば」


 ひもろぎの大盾か。

 知力二倍はすでにイアリングにつけているから意味はない。

 二つあっても四倍にはならないそうだし。


「それしかないか」

「聞いたことはありません。盾は、アクセサリーと同様、武器にしかつかないモンスターカードも防具にしかつかないモンスターカードも融合できます」

「攻撃力上昇をつけることもできるのか」

「盾につけた場合は、融合した盾で直接攻撃しないといけないみたいですが」


 駄目じゃねえか。

 知力上昇の方ならいいんだろうか。

 竜人族なら、盾と杖を装備して。

 いや、知力上昇を盾と杖につけても両方有効にはならないから駄目か。


「いろいろ厳しいようだな」


 帝国解放会への入会も決まったことだし、その後は気合を入れて迷宮を探索した。

 グミスライムやサイクロプスを中級風魔法などでなぎ倒していく。

 魔道士のレベルが上がったせいかより早く倒せるようになったので、この階層ではもはや何の問題もない。

 属性の違うシザーリザードはちょっと大変だが、ミリアがなんとかするし。


 ミリアが石化した魔物はなるべくデュランダルで片づけた。

 石化した魔物相手なら安全にMPを回復できる。

 わざわざ正面から攻撃することもないので、無難に横から斬りつけた。

 シザーリザードが倒れ、煙となる。


「はい、です」


 今回は革が残り、ミリアが拾って渡してくれた。

 俺がデュランダルで倒した魔物のドロップアイテムまで拾ってくれる必要はあまりないが。

 ロクサーヌとベスタはサイクロプスのドロップアイテムを拾いに行っている。

 サイクロプスは風魔法に妨害されて前線にたどり着く前に倒れたので、拾いに行ってくれるのはありがたい。


「やりました、ご主人様。モンスターカードです」


 そのロクサーヌがモンスターカードを拾って戻ってきた。

 サイクロプスの一匹がモンスターカードを残していたようだ。

 ロクサーヌからカードを受け取る。

 鑑定でもちゃんとサイクロプスのモンスターカードになっていた。


「サイクロプスのモンスターカードか」

「武器かアクセサリーにつければ攻撃力上昇、コボルトのモンスターカードと一緒に融合すれば攻撃力二倍のスキルになりますね」


 すかさずセリーが教えてくれる。

 攻撃力二倍か。

 攻撃力が上がるのは歓迎だ。


 ただし、現状この階層で攻撃力が足りないということはない。

 どうしても必要というものでもないか。

 基本的に魔法とデュランダル主体で戦っているので、あまり出番はないよな。


 俺の聖槍かひもろぎのイアリングにつけるか。

 特に必要というわけでもないのにもったいないような気はする。


 カードのまま持っておくか。

 それもまたもったいない。

 手元に残しておけば必要になったときに必要な装備品に融合できるメリットはあるが。


 たとえわずかでも攻撃力を上げておくことが悪かろうはずはない。

 現状に不安はないにしても何かにつけておくべきだろう。

 融合した武器はいずれロッジの販売店に売ることもできる。

 次の装備の肥やしになってくれればいい。


 売ることを考えるなら、すでに詠唱中断がついているセリーの槍につけるのはもったいない。

 ミリアの硬直のエストックはもっとない。


「レイピアか、鋼鉄の剣につけておくか」


 消去法でいけばそのあたりになる。

 レイピアにしておくか。

 ロクサーヌ優先の方が無難ではある。


「レイピアより鋼鉄の剣につけるのがいいと思います。ボス戦で役に立ちます」


 ロクサーヌが進言してきた。

 確かに、ボス戦ではデュランダルを渡したベスタに一匹受け持ってもらっている。

 魔法でも同時に攻撃しているからあまり差は出ないと思うが、鋼鉄の剣を強化した方がいいかもしれない。


 鋼鉄の剣につければデュランダルが持つ攻撃力五倍のスキルと両方有効になるかどうかのテストもできる。

 そもそも、二刀流で戦ったときにデュランダルの攻撃力五倍が鋼鉄の剣に効いているのかどうかも分かっていないが。

 調べられなくはないだろうがそこまでやるのも大変だ。


「そうだな。鋼鉄の剣にしておこう」


 ロクサーヌがいいというのなら鋼鉄の剣でいいだろう。

 何かのときに売却する候補だから、また取り上げることもあるだろうし。

 夕方、探索を終えてからセリーに融合してもらう。


「できました」


 セリーがあっさり融合した。

 今回は複数めのスキルでもないし、もはや余裕だ。



激情の鋼鉄剣 両手剣

スキル 攻撃力二倍 空き 空き



 セリーから剣をもらって、軽く振ってみる。

 攻撃力二倍だと激情の剣になるのか。


「さすがセリーだ。なかなかいい剣になったのではないか」

「ありがとうございます」

「この剣はベスタに預ける」

「はい。スキルのついた武器を使わせていただけるようになるとは思いませんでした」


 ベスタに渡すと、押しいただくように受け取った。

 感激しているらしい。

 ちょっとまずいかも。


「あー。その剣はいずれ今朝の店で売ることになるだろう。そのときには」

「分かりました」


 一応釘を刺しておいた。

 ロッジの店で売るときは何かを買うときだから、嫌とは言わないだろう。



加賀道夫 男 17歳

魔法使いLv50 英雄Lv47 遊び人Lv44 魔道士Lv37 神官Lv43 冒険者Lv38

装備 聖槍 硬革の帽子 アルバ 竜革のグローブ 竜革の靴 ひもろぎのイアリング


ロクサーヌ ♀ 16歳

巫女Lv34

装備 レイピア 鋼鉄の盾 耐風のダマスカス鋼額金 竜革のジャケット 硬革のグローブ 柳の硬革靴 身代わりのミサンガ


セリー ♀ 16歳

鍛冶師Lv38

装備 強権の鋼鉄槍 硬革の帽子 チェインメイル 防水の皮ミトン 硬革の靴 身代わりのミサンガ


ミリア ♀ 15歳

暗殺者Lv35

装備 硬直のエストック 鉄の盾 防毒の硬革帽子 チェインメイル 硬革のグローブ 硬革の靴 身代わりのミサンガ


ベスタ ♀ 15歳

竜騎士Lv35

装備 激情の鋼鉄剣 鉄の剣 頑丈の硬革帽子 鋼鉄のプレートメイル 鋼鉄のガントレット 鋼鉄のデミグリーヴ 身代わりのミサンガ



 翌日から強くなった武器で探索を行う。

 強くなったという実感は、ほとんどなかった。

 攻撃の主力は魔法とデュランダルなのでしょうがない。

 デュランダルと激情の鋼鉄剣の二刀流を試すのはボス部屋に入るときでいいし。


 そのボス部屋にはさらに次の日にたどり着いた。

 二十三階層から上はやはり時間がかかっている。

 てこずったわけではないし、魔道士のレベルが上がった効果は出ているだろう。


 ボス部屋に出てきたのは、ボスの他はグミスライムとサイクロプスが一匹ずつだ。

 風魔法を念じ、ミリアが向かったグミスライムに状態異常耐性ダウンをかける。

 ベスタがサイクロプスを倒したのは、ミリアがグミスライムを石化させ、ボスも同様に石化させたころだった。


 ベスタが魔物を倒す時間としてはあまり変化なしか。

 デュランダルの攻撃力五倍と激情の鋼鉄剣の攻撃力二倍が合わさって攻撃力十倍になっている、ということはないだろう。

 威力の圧倒的なデュランダルの攻撃力がさらに倍になれば、それと分かるほどの違いが出ると思う。

 全部ラッシュを使って攻撃したのと同様になるわけだし。


 やはり攻撃力五倍と攻撃力二倍の両方のスキルが有効にはならないようだ。

 残る懸念は、スキルなしの鋼鉄の剣のときにはデュランダルの攻撃力五倍が鋼鉄の剣に効いていたがスキルをつけたら攻撃力二倍が有効になってしまったという可能性だな。

 スキルを融合したのにかえって弱体化してしまったことになる。


 それもどうなんだろう。

 鋼鉄の剣に攻撃力五倍が効いていたかどうか分からないし、有効だったとしたら攻撃力二倍のスキルをつけても五倍の方が活性化されたままではないだろうか。

 それに、たとえ五倍から二倍になったとしても体感できるほどの違いはなかった。

 ボス戦以外ではデュランダルとの二刀流にならないから、失敗だったというほどの損失でもない。


「剣を強化したが、はっきりとした違いはなかったか」

「そうですね。ご主人様の魔法が圧倒的ですので」

「鋼鉄の剣の攻撃力が二倍になったくらいではたいした差は出ないようです」

「はい、です」

「違いはなかったと思います」


 みんなにも聞いてみるが、やはり違いは感じなかったようだ。

 ベスタからデュランダルを受け取って、石化した魔物を倒す。


「セリー、二十六階層の魔物は何だ」

「ハルバーの迷宮二十六階層の魔物はケープカープです」

「××××××××××」

「コイですよ、コイ」


 ミリアが突然叫んだので何ごとかと思ったが、魚なのか。

 ロクサーヌがブラヒム語を教えている。

 カープだからコイなんだろう。


「コイ、です」

「ケープカープも食材を残すのか?」

「残しません」


 セリーに訊いたが否定された。

 アライとか残してもよさそうなのに。

 ミリアの狙いは食材ではなかったらしい。

 単に魚相手だとテンションが上がるようだ。


「残さないのか」

「食材を残すのはもっと上位のコイですね。この迷宮だと五十九階層になります。五十九階層まで成長すれば、ですが」

「そこまで分かるのか?」


 迷宮は五十階層まで成長すると、入り口を開けて人を招き入れるようになる。

 ハルバーの迷宮の入り口が見つかってどのくらいかは知らないが、迷宮の成長には時間がかかるらしいので、五十九階層まで大きくはなっていないだろう。

 公爵の騎士団が迷宮を倒そうと入っているのだし。

 それなのにまだ到達していない階層の魔物まで分かってしまうのか。


「ええっと。ボスは三十三階層上の階層の魔物として出てくることはご存知……ないようですね」


 セリーが俺の顔色を見て納得した。

 知らなくて悪かったな。

 この世界では常識なのかもしれないが。


 なるほど、そういう風になっているのか。

 一階層から十一階層、十二階層から二十二階層、二十三階層から三十三階層まではどの魔物が出てくるかランダムだが、三十四階層より上では繰り返しになっていると。

 一階層のボスが三十四階層、二階層のボスが三十五階層。

 二十六階層のボスは五十九階層の魔物となる。


 二十六階層の魔物が分かった時点で五十九階層の魔物も確定するわけだ。

 五十九階層にも当然ボスはいるだろうが、そいつが食材をドロップすると。

 先の長い話だ。

 五十九階層のボスドロップともなると、結構貴重だろう。


「クーラタルの迷宮なら一階層ボスのコボルトケンプファーが三十四階層の魔物で、二十六階層のボスが五十九階層の魔物になっているのか」

「そうです。ちなみにクーラタル二十六階層の魔物もケープカープです」


 同じなのか。

 まあそういうこともあるだろう。

 十一分の一の確率だ。

 特に珍しくはない。


「へえ。そうなんですか」


 ベスタがうなずいている。

 ハルバーとクーラタルの二十六階層の魔物が同じであることに感心したのではないだろう。

 ベスタも知らなかったということは、ボスが三十三階層上の階層の魔物になることはこの世界の常識ではないということだ。

 俺の勝訴が確定した。


「ケープカープは、四属性の魔法を使いこなしてくる魔物です。中でも水魔法が得意で、水魔法に耐性があります。不得手なのは火属性で、弱点も火魔法です」


 弱点は火属性か。

 グミスライムにも火魔法は有効なので、遊び人のスキルは中級火魔法がいいだろう。

 ただし、サイクロプスは火属性に耐性がある。

 二十六階層でもサイクロプスは出てくるはずだ。


「サイクロプスが来たら、ミリアが頼む」

「はい、です」


 遊び人のスキルを変更して二十六階層へと上がった。

 ロクサーヌの先導で進むと、魚が三匹現れる。

 ケープカープだ。

 ブラックダイヤツナと同様、空中を泳いでいた。


 ブラックダイヤツナよりは一回り小さい。

 それでも一メートル近くあるだろう。

 ブラックダイヤツナほど真っ黒でもないが、背中の部分が黒褐色になっている。


 ケープカープというから首にケープでも巻いているのかと思ったが、そんなこともないらしい。

 普通にコイだ。

 やや細長くて、ソウギョみたいな感じ。

 とりわけ口先はカマスのようにとがっている。


 ケープというのはマントではなくてケープのことだったのか。

 喜望峰がある場所にできた町はケープタウン。

 フロリダ半島にあるのがケープ・カナベラルだ。

 口が岬のように細長いからケープカープなんだろう。

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ベスタの武器は鋼鉄の剣を強化するより鉄の剣を他のものに変えるべきなんじゃないか?
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