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ぱふぱふ

 

 用意したネタをテーブルに置き、全員で食卓についた。

 ベスタは俺の右隣だ。

 スープを順番どおりに配る。

 最後にベスタの前に置いた。


「あ、あの。いいのでしょうか」

「大丈夫だ。では夕食を始めよう。ミリア、お勧めの魚とかあるか?」

「ハーダッツ、です」

「じゃあ俺は最初にこれな」


 ミリアが指差した魚の切り身に衣をつけ、鍋に投入する。

 ジュワッといい音が響いた。

 うまくいきそうだ。


「バルデアという魚だと思います」


 セリーが教えてくれるが、地球にはいない魚なんだろう。

 翻訳されないなら、ブラヒム語だろうと何だろうとぶっちゃけ関係ない。


「ロクサーヌは何にする?」

「ではご主人様と同じものをお願いします」

「セリーは?」

「バルデアをお願いします」


 結構な人気だ。

 二人の分も投入した。

 ミリアは、聞くまでもないか。


「ハーダッツ、です」


 名称が二つあるのもめんどくさいな。


「バルデアらしいぞ。バルデアだ」

「バルデア、です」

「バルデアですか」

「知っているのか?」


 つぶやいたベスタに確認する。

 ベスタは興味深げに天ぷらの揚がる鍋を見ていた。


「はい。非常に美味しい魚だと聞いたことがあります」

「じゃあベスタもいってみるか」

「よろしいのですか」

「大丈夫だ」


 ロクサーヌ、セリー、ミリアの分と三枚続けて投入し、揚がってきた俺のを取り出す。

 金網はないので、適当に油をきって食いついた。

 行儀は悪いが、菜箸で食べさせてもらう。

 熱。


「ご主人様と一緒の席でご主人様と同じものを食べて、本当によろしいのでしょうか」

「大丈夫ですよ。ご主人様ですから」

「ご主人様、ありがとうございます」

「感謝なら釣ってきたミリアに言え。確かに旨いな」


 衣さくっと。

 中の身はもちもちして旨い。

 確かにいい魚だ。


「お姉ちゃん、ありがとうございます」

「お姉ちゃん、です」


 ミリアが胸を張った。

 ベスタの分の魚に衣をつけて鍋に投入する。

 揚がってきたのを順に菜箸で取り上げ、油をきって各人の皿に置いた。


「美味しいです」

「昔食べたバルデアより美味しい気がします」

「おいしい、です」


 なかなか好評のようだ。

 最後にベスタの皿に置いた。


「こんな美味しいものは食べたことがありません。ありがとうございます、ご主人様。ありがとうございます、お姉ちゃん」

「お姉ちゃん、です」


 何がお姉ちゃんなのかよく分からん。


「では次はきのこをいってみるか」


 ベスタに切ってもらったきのこを衣を入れたお椀に入れる。

 しいたけとは異なるが、前回このきのこはこのきのこで旨かった。


「私もきのこでお願いします」

「私は兎の肉をお願いします」

「バルデア、です」


 ぶれないね、おまえらは。


「次は何にする?」


 衣をつけたきのこを鍋に投入しながら、ベスタに訊く。


「え、選んでもよろしいのでしょうか」

「食べたことないなら、蛤などがお勧めだ」

「蛤、ですか?」

「とても美味しい食材です」


 ロクサーヌも勧めた。

 ハルバーの十八階層にはまだクラムシェルも出没するので蛤はアイテムボックスに結構入っている。


「前の主人から、何かの記念日に蛤の煮汁というのを分けていただいたことがあります。確かに美味しいスープでした。本体も食べるとは知りませんでした。よろしいのであれば、蛤をいただけますか」


 それは蛤を煮た残りを与えられたのではないだろうか。

 出汁が出て美味しいのかもしれないが。

 蛤で出汁をとって本体は捨てるという話は聞いたことがない。


「お姉ちゃんもご主人様に来るまで食べたなかった、です」

「そうなのですか」

「おいしい、です」

「楽しみです」


 ミリアの発言は半分通じてない。

 別にいいけど。


 揚がってきたきのこを一口食べ、蛤に衣をつけて鍋に入れた。

 次のきのこをロクサーヌの皿に、兎の肉をセリーの皿に載せる。

 そういえば兎の肉の天ぷらは初挑戦だ。


 責任を持って試食はしてみるべきだろう。

 兎の肉を衣の入ったお椀に入れる。


「俺も次はこれを試してみるか。どうだ、セリー。うまくいってるか」

「はい。美味しいです」

「そうか」

「私も兎の肉でお願いします」


 そう言うと思ってすでに二つ浸けておるわ。

 ミリアに魚を取り分け、兎の肉を投入する。

 ベスタの皿には蛤を置いた。


「これは……。確かに美味しいです。こんな美味しいものだったなんて知りませんでした」

「よかったですね」

「はい、ロクサーヌさん」


 ベスタは蛤にも喜んでくれたようだ。


「セリーは何にする」

「私はこっちの野菜を」

「この魚、です」


 この二人の注文はさすがに予想できない。

 ミリアが釣ってきた魚も何種類かあるので。


「ベスタは何にする」

「ええっと。本当に選べるのですね。どうしましょうか。ええっと。それでは、ご主人様と同じものをお願いします」


 兎の肉が揚がったのを見て、ベスタが頼む。

 ロクサーヌ二号のできあがりか。


「分かった」

「食べるものを選べるなんてすごいことです。どれもこれも美味しいですし。確かに、私はすごいところに買っていただいたようです」


 そこまで感激するほどのことでもないように思うが。


「泣くな。な」

「はい。すみません」

「ほら。パンでも食え」

「こんなに柔らかくて美味しいパンも、好きなだけ食べていいなんて」


 余計泣かせてしまった。

 失敗だ。


 その後もベスタはしっかりロクサーヌ二号になってしまった。

 俺と同じものしか頼まない。

 好きなのを選べばいいのに。


 だが選択の自由があるのもここまでだ。


「よし。風呂に入るか」


 食事を終え、後片づけを済ましたら、強制イベント一直線である。

 逃げ道はない。


「はい」


 ロクサーヌとセリー、ミリアは手馴れた様子で服を脱ぎだした。

 おおっ。

 ロクサーヌがシャツをはだけると大きな山が飛び出すし、セリーも可愛いし、ミリアも捨てがたい。

 ネコミミと尻尾があると当社比十倍はよく見えるよな。


 目移りしてしまう。

 彼女らの主人になって本当によかったと心から思える瞬間だ。

 素晴らしい。


 ベスタもその大きな身体からシャツをはいだ。

 バスケットボール並みの巨大な山塊が。

 でかい。

 ロクサーヌよりさらに大きい。


 大・迫・力。


 け、けしからん。

 許されん。

 許されざるなり。

 これは滅ぼされねばならない。


 ならば滅ぼしましょう。

 この手で。

 この舌で。

 塩をすり込む勢いで。


 風呂場に入り、まずはロクサーヌの身体から洗う。

 全身を泡まみれにして、洗い清めた。

 聖なる霊峰もしっかりと。

 何度洗っても素晴らしい。


「ロクサーヌさん、それは何ですか」

「石鹸です。これでご主人様に洗っていただくととても気持ちいいですよ」

「洗っていただくのですか」


 気持ちいいのは俺の方だ。

 もちろんベスタも抜かりなく洗わせてもらう所存である。

 選択権はない。

 風呂場の中に一人でかいのが立っているとそれだけで人口密度が上がったような気がするが、それはそれで嬉しい。


「次はセリーだな」


 セリーの可愛らしい身体を洗う。

 今日はロクサーヌの髪を洗う日だが、髪は後回しだ。

 石鹸は髪の毛によくないと記憶しているので、頭を洗うのは三日に一度にしている。

 あまり放っておいても脂ぎってくるだろうから、それくらいが適当だ。


 セリーの小さい身体を隅々まで磨き上げた。

 小柄な体躯をなでさすると、何かいけないことをしている気分になる。

 だがそれがいい。


 身体が小さいのだから胸だってここまであれば十分だ。

 卑下することはないのに。


 続いてはミリア。

 なめ回すようにじっくりと洗い上げる。

 おとなしく俺の腕の中でじっとしているミリアも可愛い。


「洗った、です」

「よし。最後にベスタだ」

「はい」


 ベスタが俺の前に来た。

 でか。

 目の前にちょうどバスケットボールが。


 まずは泡を塗りたくる。

 これだけ大きいともっと柔らかいかと思ったが、結構しっかりしているな。

 想像したよりも張りがあってしなやかに指をはじき返してくる。

 すごい弾力だ。


 もちろん脂肪分たっぷりの肉なので硬いということもない。

 洗いながら指を曲げると、半分埋まるようにめり込んでいく。

 硬すぎず、柔らかすぎず。

 これはたまらん。


 胸ばかり洗うのも周囲の視線が怖いので、全身に泡を広げた。

 大柄なベスタに絡みつくようにして、身体を洗っていく。

 全身やや淡い小麦色の肌なので日焼けをしているわけではないらしい。


 片手をベスタの胸に置き、片手を伸ばして洗っていく。

 ときには両手で鷲づかみにして。

 おお、すごい。


 何が詰まっているのか。

 夢と希望が詰まっているのか。

 そういえば空気が入っているのだったか。

 確かキノウとか言っていた。


 キノウって何だ?

 機能が入る。

 帰農が入る。

 気嚢か。


「ベスタ、息を吸ってみて」

「はい」

「吐いて」

「……」

「もう一度吸って」

「……」


 外から丸分かりというほどではないが、手を当ててみれば確かに分かる。

 息を吸ったときに右の胸が大きくなり、息を吐くと左の胸が小さくなった。

 確かに気嚢だ。

 気嚢が入っている。


「あれ? 気嚢が入ってるのに、何で胸の大きい竜人族は駄目なんだ」

「無駄に空気しか入ってないからだと思います」


 それは理由になるのだろうか。


「そうなのか?」

「胸の大きい竜人族の女性に罪はありません」


 セリーに訊いてみても、そういう理由しかないようだ。

 母乳は出ないらしいから、人間の女性のように乳腺があるわけではない。

 ただし乳首っぽいものはついている。

 ある種の擬態なんだろう。


「気嚢が入っているから、胸の大きい女性の方が運動能力が高そうな気がするが」

「そうなのですか?」

「竜人族の運動能力が高いのは、気嚢があるからだろう」

「空気が入っているだけですよ」


 セリーまでがそんなことをいってくるところを見ると、気嚢の機能については知られていないのかもしれない。


「俺たちみたいな人間族は、息を吸ったとき直接肺に空気が入る。息を吐くと肺から出て行く。実はこれだと、ちょっと効率が悪い。気嚢が二つあると、息を吸うと右の気嚢に空気が入る。息を吐くときには左の気嚢から空気が出て行く。空気は右の気嚢から肺の中を一方通行で流れて左の気嚢に抜ける。効率よく空気を取り込めるのだ」


 生物の時間に習った鳥の解剖図を思い出しながら説明した。

 鳥の場合は左右じゃなくて肺の前後についていたと思うが。

 気嚢のおかげで鳥類は呼吸能力が高い。

 だから空気の薄い上空を飛べる。


「そんなことを知っているなんて、さすがご主人様です」

「何故効率が悪いのか、よく分かりませんが」

「すごい、です」

「そうなんですか」


 竜人族のベスタはうなずいているのに、セリーは納得していない。

 やはりセリーが難敵か。


「人間族などの場合、肺の中を空気が出たり入ったりするので、新鮮じゃない空気が肺にとどまりやすいのだ」

「別に新鮮とか新鮮じゃないとか関係ないと思いますが」


 セリーが首をかしげる。

 ヘモグロビンとか酸素とか二酸化炭素とか、もちろん知らないのだろう。

 どうやって説得すべきか。


「じゃあこう考えたらどうかな。桶の中に水を入れ、逆さまにして出すのと、両方に穴の開いた筒の中に水を流し込むのと。筒の方が効率よく、単位時間当たりにすればより多くの水が流れるだろう」

「それはそうかもしれませんが。むむむっ」


 基本的に何故新鮮な空気が必要なのかが分かってないと、理解はできないかもしれない。

 セリーが悩んでいるうちに、勢いでごまかそう。


「竜人族の戦闘能力が優れているのは、気嚢を使った優れた呼吸のおかげだろう。気嚢は大きい方が空気がたくさん入る。だから、胸の大きい女性の方が運動能力が高いという解釈も成り立つ」

「そうなんですか。竜人族ですが聞いたことなかったです」


 胸が大きいのは悪いことではないとベスタにも分からせてやった方がいいだろう。

 まったく悪いことではない。

 これほど素晴らしいことはない。


「さすがご主人様です」

「触ってみれば気嚢があることが実感できるぞ」


 ロクサーヌに勧めてみた。


「えっと。ベスタ、いいですか」

「はい、どうぞ」


 ロクサーヌが手を伸ばし、ベスタの胸に触れる。

 なにやら淫靡で背徳的な雰囲気が。

 美しい。

 ロクサーヌのしなやかな指がベスタの張りのある肉塊にそっとそえられ。


 やべ。

 前かがみになってしまう。


「で、では髪を洗う前に、俺の体も洗ってもらえるか」

「分かりました。確かに、呼吸によって空気が出入りしているようです」


 ロクサーヌはそのままベスタとなにしてくれていてもいいのだが。


「はい。ご主人様をお洗いすればいいのですか」

「そうです。こうして全員でご主人様の体を洗います」

「かしこまりました」


 ベスタが向きなおって俺の正面でひざまずいた。

 ロクサーヌが俺の肩をこすり、ベスタが身体を倒しながら近づいてくる。

 まさか。


 ぱふぱふ……だと……。


 馬鹿な。

 ありえん。

 ベスタ、どこでそんなテクを。


「そ、それは」

「こうすると主人となるかたに喜んでいただけると、先輩の奴隷から聞きました」


 耳年増だった。

 その先輩の奴隷はなんということを。

 あ、あんた、なんちゅうもんを教えてくれたんや。


 素晴らしい。

 最高だ。

 こんなものが滅びていいはずがない。

 断じてない。


 栄光のこの世に生を享けて以来、今日まで十七年間、加賀道夫のために絶大なるご支援をいただきまして、まことにありがとうございました。

 ぱふぱふは永久に不滅です。

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