第八節 学園のもう一人の男
前回のあらすじ
勝った、のか?
まわりは驚きで声を出せていない。俺も同じだ。
実休光忠の力が何故か上昇しているみたい、だった。
「すごいね方後君‼ もしかして学校始まって以来じゃないかい⁉ 一年生が≪序決一位≫を倒すなんて!」
「そんなにすごいことなんですか? 運がよかっただけですよ」
「そんなわけないよ方後君。この学校は≪序決≫といわれているように生徒会で序列を決めていくんだ。普通は上に勝ったからといってその人より強いというわけではない。だが、君はこれまで黒星をつけられなかった≪序決一位≫を倒した。今年度最初の≪序決≫決めにも間に合うだろうし、君は上位確定だろうね!」
御園生生徒会長を介抱するため保健室に来ている中、保健の先生に熱がこもった声で話を聞かされている。
その人はこの学校で俺以外唯一の『男』らしい。
最初来たときは驚いた。だってこの学校、女子生徒の話を聞くに男に敵意を抱いている人が結構いる。
だから、きっと学校関係の大人たちも男は一人もいないものだと思っていた。入学式も一人もいなかったし。
金山という、彼は白い白衣を着て一見やせぎすの理系の先生かと思ってしまうのだが、会話しているとその温かさが良くわかる。包み込むような性格だった。
どうしよう。会話だけであれば毎日来たくなるな。
「で、どうなんです? 生徒会長はケガとかしていないんですか?」
「わた、私は大丈夫だから」
「うんうん。全然問題はないよ。ケガもない、でもちょっと天狗鼻が折れているかな」
良かった。俺が勝利した後この生徒会長は全く動く気配がなかった。余りにも大人しくなったので女子生徒が騒ぎ、保健室に連れて行くよう長谷川博士が指示をしてきたのだけど。
いったいどうしたんだというのだろう。
「でも、君はいったいどんな力なんだい? きみの能力は【武将刀召喚】で登録されているよね。使っていたのは実休光忠だけど」
「そうです。実はこの刀、能力を出すときがまちまちなんです」
上手くはぐらかす。
「へえ、詳しく聞きたいな~」
「それより、生徒会長の方が聞きたいですよ。なんですかあれ、【因果律の改変】なんて」
「よくぞ聞いてくれました! うちの学校の頂点、別名、【世界の薬】は全てを自分の思いのままにする能力! その力で≪武決≫は手も足も出なかった!」
金山先生が興奮して椅子から立ち上がり身振り手振りで歩き回りながら演説を始める。身内の話になると止まらなくなる性格らしい。
それをうまく要点だけ聞き相づちを打つ。よ~くわかった、聞けば聞くほどやっぱりいろいろ世界をこの手に出来る力だった。
自然発生でこれほどの力を持つとは、少し恐ろしいな。
そもそも、俺が完成させた超能力を二十年前に発表されたようにしたと聞いていたし、すごい能力だとは思っていたけど。
俺は金山先生に付き合い疑問に思ったことをそのまま口にする。
「その≪武決≫って何ですか? この学校は二つにレッテルが分かれているってことですか」
「いやいや、違うよ。≪武決≫っていうのは武衛大といわれる高校生自衛隊のランキングのことさ。君も本当はこっちに行くかもしれなかったんだよ? 戦闘能力を持つ男子高だからね」
へ~、武衛大の序列か。そんなのあったんだ。理論は完成して強い奴はもうわかっているし気にしてなかったよ。でもそれってつまり、
そんなのがいるから、俺は今まで男というだけでひどい目にあってきたのか。最悪だ。もっと俺のありのままを見てくれよ。
「そしてその武衛大と≪超武戦≫というのがあとひと月で始まるんだ。これはそれぞれの力を高めあう目的でやっているんだけど。君、もしかしたら学年別のリーダーになるかもね」
「先生、それはあり得ないですよ。だって女子高の代表が男子ってことにはならないでしょ」
俺はそもそも適当にやるし、やりたくねえ~。
「でもね、今回の武衛大はガチみたいなんだよ。情報収集から部隊構成まで。それに噂によると……」
辺りを見回す金山先生。そして耳元にささやく。
「誰かがこちらの裏の情報、特定の人しか知らないことを漏らしている奴がいるらしい。度が過ぎた内部告発は校則違反なんだけどね」
真剣な表情。離れるとなかったかのように笑顔になった。
「だから、情報が少ないきみをリーダーにする可能性があるのさ」
先生、聞きたくなかったよ。そんなめんどくさいことになる話。
教室に戻ったほうがいいな。ずっとここにいると家に帰れなくなりそう。ちょくちょく短時間いるのは大丈夫だと思うが。
「そろそろ、帰ります。授業もさぼってるんで」
「ああ待った、君ことを詳しく! それに聞きたいだろう? 生徒会長君、なぜ負けたかさ」
ビクンっと跳ねた。小刻みに震えている。
「どうしたんだい? いつものきみなら負けてもただでは起きないだろう?」
その言葉が、彼女にスイッチを入れたようだ。無理矢理、言葉をひねり出して言ってくる。急に上目遣いになりながら。
「ねえ、私の彼氏にならない? なんで、も、してあげる。本当になんでも」
「そうかそうか! これは凄い、祝福するよ! 君もオッケーだよね」
話を進めようとしてくる金山先生。俺は、努めて冷静にこう切り出した。
実はここに入ったときから答えは決まっていた。
「いいですよ」
へッという顔がちょっぴりかわいく見えた生徒会長は、一瞬震えが止まったようだった。
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