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第六十二節 謎刀

前回のあらすじ

二つの刀がある。一つは薬研藤四郎という刀、

もう一つは織田信長の懐刀だった過去がある、詳しくは教えてくれない刀。

どれも、一筋縄ではいかない。それは、生きていた。




「チッ、ふざけるな!」



「やったぜ! 濃姫ちゃんが戻ってきた! やるぜ、丈!」



「ああ‼」



「裏切る、信用するなと言われた通りだった!」



 二人並んで立つ、勝倉と俺。


 一方は覚醒していて、俺は湧きだす不気味なオーラが相手に不信感を与える。


 謎刀――。その存在が疑われている彼女にぴったりの力だった。



「丈、お互いできることを簡潔にだ」



「こっちは謎に振り回されるほど強くなる刀、あやふやの太刀筋を好む」



「オケ―。こっちは俺にたいして精神的に傷をつけさせない刀、相手の感情を奪える」



「敵の前で能力をごちゃごちゃと」



「それが」「出来るからな!」



「がぁぁああああああ!!」


 俺の優柔不断な剣先が見事に相手の裏をかき、エクスカリバーをすり抜けてキリルを弾き飛ばす。


 その間、刀傷を12か所付けたのは勝倉だ。返しては奪い、奪っては返す。


 心を徹底的に折られるのは、今度はキリルだった。


 今の俺達は、負ける気がしなかった。


 ボロボロになるキリルの体。俺達ははっきり言って殺さない程度に力を弱めている。それでも覆らない現実だった。



「がぁ‼‼」


 剣を教えられた通り、型通りに振るっている。


 それが、俺達にとっては最適な勝ち筋になることにもう何を信じればいいか、キリルには分からなかっただろう。



「悪いな、二対一で。諦めたほうがいいんじゃないか?」


 キリルはボロボロで手をだらんとしながら下を向いて立っている、


 ピクっと繰り返すように呟き始めた。



「僕は、間違ってはいない。相手はレベルの低い、なにも僕に影響しない。僕は、間違ってはいない。間違っているのは、お前達だぁぁあああああああああああ‼‼‼」



「な、なんだ⁉」



「……これは」



 転校生が言っていた男になった呪い、格上相手にも通じる切り札っていうものだろうか?



「僕はもう迷わない。例え女性としての最高峰の血を失って、女に戻れなくてもいい。お前達にだけは負けられない、負けたくないんだぁぁあああああああああ‼‼」



 蒸気を上げるキリルの体、血が蒸発しているとして、その一滴一滴にいくつの価値があるのだろう。


 そんなこと関係ないか。


 今の俺達と彼は戦っている、勝って証明すればいい。


 お前は間違っている、と。



「僕の剣はお前みたいに所有者がいないと使えないものじゃない。出来ることは何でも使ったこの全力。お前に、受け止められるか⁉」



「で、デカい‼‼‼‼」



「嘘、まだ力を隠していたのかよ。もう勝ち確の流れだったじゃん」


 巨大化するエクスカリバー、それを持った歯車の歯に突き刺さっていた神話の剣が一つのゴーレム人間をかたどる形に組み合わさっていく。


 不気味な姿、プールに浸かっているその下半身が膝にも届いていないことからもその大きさが俺達に恐怖心を叩きつける。



「この建物ごと消えろぉぉぉおおおお‼‼‼‼‼」



 天井を突き破っている宝剣人間がエクスカリバー振り回したときにホテルの壁に傷がついた。


 かすっただけなのに建物がぐらぐらと揺れる。



「剣相手じゃ、俺の『心移し』は発揮できない!」



 その通りだ。つまり、俺が受け止めるしかない。


 俺の、謎刀で。


 出来ないことはないだろう。でも、



「勝倉、お前は捕まっている人々を助けに行ってくれ」



「お前は、もしかして! あれを受け止めるつもりか!」



「……受けとめなければ死人が出るかもしれない。出来る出来ないじゃない、やるんだ」



「あははははははは、父様に命令されたときに最初からこうすればよかったんだ‼ 占領しろって言われたわけじゃないんだからさ!」



 大振りの構えを取る宝剣人間。一発振り下ろしただけで、このホテルは崩壊する。



「やらせるかぁああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」



 まだ振り下ろされていないうちに俺は威力をゼロにするため、謎刀を打ち付けた。



 キリィイイイイイイイイイイイギャリン!!!!!!!!!!!



 迷いが、余りにもなかった。



 ほとんど力を削げなかった宝剣人間が振り下ろした剣は、ホテルの壁を斜めに切り裂いた。



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