第六十節 突入
前回のあらすじ
≪序決七位≫に本当になりたいわけじゃない。
そんなことは百も承知だった。
敵は一人じゃない。でも、俺も一人じゃない!
三日目――、立てこもったと知ったときは直ぐに壊すんじゃないかと思っていた、が。
本心を聞いてみたいな、キリル。いや、これも偽名かもしれない。だったらこれが終わったら本当の名前で呼んでやる。
可愛いと言われるのを覚悟しろよ。
「来たね」
突入したホテルの中で、キリルが空の見える天井窓の光に照らされる。
その人工芝に囲まれた、室内プールにある白いテーブルのイスで待っていたようだ。
もちろん、彼についていった濃姫も一緒にいる。
「よう、元気だったか?」
「たいした力もないのに、本当に来たんだね? 凄いバカだ」
「へへ、男っていうものはそんなもんだぜ」
短い木刀をキリルに向ける勝倉。
「いっとくが、俺はなにもできなくともここに来たぜ。お前に、勝つために」
「生ぬるかったかな、てっきり簡単に折れる心だったと思ったのに」
「キリル、一つ言っておくぞ」
「? どうしたんだい方後君。濃姫さんにやられて死ぬんだ。最後の会話くらい、自分の納得いくものにしてよ?」
「俺達はお前を救いに来た」
ッッ! 彼は、今聞きたくなかったという顔をした。
葛藤があったのだろう、でも仕方がないと飲み込んだ。
結局わからなかったまま、前に進んでしまった。
「知った口を聞くんじゃない! 女は結局、男のサブ。本当によかったよ、これほど人生楽になったことはない!」
「いや、違うね。お前は女性をバカにしすぎだ。この際だからはっきりいってやろうか。お前はな、自分自身に負けたんだよ。父親を隠れ蓑にな」
ガシャシャシャシャシャシャアン。
周りに、大きい墓標が無数に姿を現した。
いくつもの外国にルーツがある剣が中心にある歯車の歯に食い込んでいる。
その墓標を置くことにより、更に聖剣の力を引き出す。腰のエクスカリバーを構えた。
そして、俺を見据える。
「外国では疑問の声があったんだ。君と比較されるとき、刀と剣はどちらが強いのかってね」
「どうしましたか、キリルさん? 自分でやるのですか?」
「そこで見ていて下さい。三日前は方後君の相手を頼みましたが、二人じゃないと勝てないと言われるのも馬鹿らしい」
「そう。なら私はここで座っているわね」
「濃姫、俺に伝えたいことはあるか?」
俺に、襲撃時間を教えてくれたことといい、彼女は何がしたいのか分からない。
戦いたくないんだ。それは勝てないからじゃない。
濃姫の、本心が知りたいんだ。
「伝えたいこと、ですか。昔から変わりませんよ? 前にも同じことを言ったでしょう?」
「……はぐらかさないで教えてくれ。俺はお前達を怒らせることをしてしまったのか?」
「どうやら、何を言っているか分かっていないようです。もう、くどいですわ」
理解したい、刀達はなにを俺に気づいてほしいのか。
「! 丈!!」
「なっ!」
「敵になった相手を説得しようとするなんて、ホント甘いね。方後君」
俺が濃姫の方に足を踏み出す、その一歩にキリルが肉薄してきた。まるで迷っている感情を振り払いたいと、感情をぶつけてくるように。
危なかった、寸前で勝倉がエクスカリバーを受け止めてくれなかったら勝負はもう決まっていたかもしれない。
すぐに離れた。挨拶みたいなもの、か。
「勝倉、サンキューな」
「早いとこ武器出せ。俺も受け止めてみてわかった。これ、俺達二人でも勝てないかもしれないぜ」
「実休光忠の能力も発動していないからそんなものだ。頼りにしている。この戦いのキーマンはお前だぞ」
「わかっているぜ、取りあえず」
「うん? って!」
勝倉は短い木刀を大上段に構え、突撃していった⁉
「先手必勝、おりゃああぁぁぁぁああああ!」
「ふ、あはははははははははははは! なにそれ? 君凄いよ! この命のやり取りの中で短刀の扱い方も知らないだなんて」
キリルは次、聖剣を持つ腕に勢いをつける。
「勝倉戻れ! 剣で腹から切り落とす気だ!」
「もう遅い!」
斬撃、用意周到に準備が整っている剣の威力は桁違いだった。
「今だ。丈みたいに、俺に力をくれ。木刀‼」
キイいいイイイイイイイイイイイインンンンン!!!!!!!!
「な、んだ?」
「あああああああああ!」
適当に振った木刀をあらぬ方向に振り下ろしたことで、ギリギリ避けられたようだ。
あぶねぇ、エクスカリバーは深々と人工芝に突き刺さっている、確実に死ぬ威力だったぞ。
キリルは聖剣を抜き、確かめるように振っている。少し違和感を覚えたのだろう。
よし、一応作戦通りだ。
このまま相手にペースを握らせない事ができれば、
「ふん。悪運の強いやつ」
次は予備動作なしで接近戦に切り替えてきた!
「はぁ⁉ ま、待て。今態勢が」
「死ねよ」
ギリリイイン!!!
「俺を忘れて貰っては困るぞ?」
今度は刀身が炎に包まれている実休光忠で俺が受け止める。
「ナイス丈!」
即席のチームで、初戦闘が始まった。




