第五十七節 世界を構築する者
前回のあらすじ
この世界は九次元が最初の空間だった。
今は、制限して制限して、三次元である。
俺のルーツは、違うな、俺の本体のいる場所は、どこまでなのだろうか?
「ここは?」
訓練場からどこか夢の中のような真っ白の世界に、俺は足を踏み入れていた。
壁はなかった、どこまでも広がりが続いているようだった。
確か、俺は。キリルに勝つために四次元を俺の中に定着させようとして、
「あらあら、こんにちは! わざわざこんなところまできて、お疲れ様です」
「え?」
俺のちょっと離れた先に、ニコっと笑いかけて手を振っている。その、よく見えない、女性? がいた。
でも、勘がその判断は時期尚早だと語っている。彼女はポンッと手を打つと、冷蔵庫を開いてなにを取り出そうか頭を捻っている。
カオスだ、間違いなく。ちゃぶ台や小さいテレビなど、一昔前の家庭用品が置いてあるところから見て、雰囲気が台無しだ。ああ、台はあるが。
「ほら、そんなところにいないでこっちにきて! 君とは長い付き合いになるんだから」
「そ、その前に教えてほしいことがいくつかあるんですが!」
俺のためだろう、ちゃぶ台の上に栄養ドリンクが置かれる。それ、普通初めてあった人に出す飲み物なのか!? 自分は自分で腰に手を当ててグビグビと一気に飲みきろうとしている!
「うん? いいよいいよ。好きなだけ質問してください」
「ここは、どこですか?」
「ここ? さあ? 俺も始めてくるの。たぶん、俺達の世界をやめようとした人間を断罪する場所、なんじゃないかしら?」
断罪って! 俺は後ろに飛び退く。すぐに刀をだそうと空間を割ろうとして、
「で、でない!?」
「まあまあ、そんな生き急がないで。どうせ今の君じゃ俺には勝てないのよ?」
超能力が使えない。今目の前にいる女性は、その超能力を発動させない、もしくは発動しないことを知っている、上位の存在。
「そら、君の刀です」
「うくっ!」
喉に突きつけられたのは、刀身が見たこともないほど燃え盛っている俺の、刀。実休光忠だった。
長い付き合いだ。この刀が複製かどうかなんてすぐにわかった。
そのまま、彼女はパッとはなした。白い空間の地面に落ちた実休光忠は音をたてずにバウンドしながら横たわる。
「いい刀だ。大事にしてくださいね?」
くるっと戻ろうとする。
「ま、待ってください! あなたは、もしかして神なのですか?」
後悔した。俺は、言ってはならないことを口にしてしまったらしい。
こえられない壁、この世界すら一瞬で終わらせられるであろう力を纏ったプレッシャーが俺に襲いかかってきた。
「神、とは誰のことです? 神は沢山いますよ。それこそ人の数ほどね」
「す、すみません。神とは九次元に住んでいる、この世界の始まりの方です」
しゅるしゅると弱まっていった、プレッシャー。答えを理解した女性はうってかわって嬉しそうな表情になった。
「ああ、そっちね。違う、違います! でも嬉しいな~! あったことはないけど、世界の始まりの人に間違われるなんて! しかし、あなた! 自分の仮説を少しぐらい信じた方がいいんじゃないかしら? こうなることは予想していたんじゃない? ねえ?」
女性のシルエットが朗らかに笑っている。すべてを見通しているように。
白団子頭の女子生徒に伝えた話、それには続きがあった。
俺が想像する先の予想、確かに四次元から三次元に来た人はいるだろう。
しかし、そんな一気に増えたら誰かが気づく。つまり誰か選別をしている人間がいる、はずだと考えていた。
ゲームマスターといった存在がいる。それは可能性の話、
まさか、
「さてさて、以後お見知りおきを! 俺の正体はこの三次元を創った構成能力者、司る次元は『起点』です! 本当は後二人、ここにいないといけないのだけれど、忙しいみたい。俺? 俺は実質ニートみたいなものだからだいじょうぶぃ!」
妙にハイテンション、つっこむ気は起きない。
こんな奴に殺されるかもしれないのか、勘弁してほしいよ。
「その、さっき断罪する場所って言っていましたよね、構成能力者様は俺を、どうしたいんですか?」
「ん~、別にぃなにも。三次元から逸脱しようとしたからって殺しはしないよ、安心してね。そうだ、君に助言を与えようか!」
助言、それは犬に食わせたら喜んで食べそうですね、特に負け犬が。
「断ったら、どうするんですか?」
「断れないよ。選択権を与えるほど暇じゃないんです~」
……、ベロベロバーしているんだろうな。見えないけど。
「おほん、では言うね。君にはまだこの力は早い。もっと自身の刀達の力を、自分で使いこなせると信じなさい。それが出来ることを知って欲しい、そう刀達は本気でぶつかってきているよ」
キィイイイイイイイイイイイイイイイン――。
実休光忠? 刀が、息を吹き返したように燃え上がる。
語り掛けてくる、
初めて俺のために、戦国武将を裏切ってくれた刀が。




