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第五十六節  ダイブ

前回のあらすじ

みんなには秘密だ。

これ以上バレたら不味い情報が俺にはある。

三次元と四次元の関係性も――また。

 やっと都合が互いについた部屋の扉を閉めた。



「ついに本性を現したわね‼ こんなところで二人っきりにして、私を襲うつもり⁉」



「な、なにいっているんだよ? 長谷川先生に言ったら人気のない小さめの訓練場しか貸してくれなかったんだ‼ 決して、他意はないぞ!」



 最近になって結局、白い制服を自分好みに着崩してしまった世良が、そこにいた。


 明かりをつけても少し薄暗い部屋に赤い瞳がかなり自己主張している、中学と一緒、袖をぶかぶかにしていて、ちょっと手を出すのが基本スタイルである。


 睨みつけて腰に手をやっている。そんなに、イライラしているのだろうか。



「嘘ね、早く要件を言ってよ‼ 私はあの姉様の友人をぶっ殺さないといけないのよ?」



 早く逃げろ、知らない人‼ こいつはもう、目にハートを浮かべて人を殺すことしか考えていないぞ!



「世良」



「な、何よ。やめてよ」


 手を掴む。自分から手をつないだのは、これで二回目。


 ピクンと、ピンクのツインテールが動揺しているように揺れる。


 世良は俺の真っすぐな目を見ようとしない、羞恥で赤くなっているのだ。誰もいないから、大丈夫。



「はぁあにゃ。ここじゃ、やだ。私はもっとドラマチックに」



「俺だけを思って、心を分けてくれ‼」



「は、ああ。も、もう一回いって。優しく、ね」



 俺の手が彼女の胸に抱かれた、力を抜いている。


 彼女は真っすぐ見つめていた目線を受け止めようと自分から合わせ始めた。その何でも聞いてくれそうなほどけた瞳を見ると、これはやったか? と俺も嬉しくなる。



「分かった。俺に、世界を変えてしまう力をくれ‼ お前しか出来ないんだ‼」



「分かった恋人に、え? 力? チカラ? ち~から? 告白じゃない?」



「告白、あんだそれ? ただお前に、俺を思ってほしいだけだ。応援みたいにな」



「……」



「ん? どうした?」



「馬鹿ぁああああああああああ‼‼」



「ふべし‼」


 入ったぁああ‼ 今日のビンタの威力、最高記録だぁあああ‼ その飛距離、想定五メートルぅう‼


 どうしてなんだ? お、れは、ただ、お前のその力を借りたいだけ――、


 意識はキッチリと刈り取られていた。目覚めるまでは、数分間、時間が必要だろう。




 しばらくお待ちください、まる。




「で、何がしたいの? 私はあなたが知っている通り、【円定理(サークルキネシス)】しか持っていないわ。今まで人に超能力増強(イー・エス・ピー エンハンスメント)みたいなことしたことはないのよ?」



 イライラしながら地団駄を踏んでいる世良、その目の前で、俺は反省の意味を込めて冷たい床に正座をされていた。



 言語化が難しいことを言ったらこのざま。くそぅ。



「それは大丈夫、です。ただ俺を応援しているみたいな感じでいてくれればいいから」



「そんなことでいいの? いったい何を考えているのよ。ホント秘密主義」



 ごめん、詳しいことは言えないんだ。


 それが国と取引をした俺の、しがらみ。


 きっと、いや、コレはよそう。


 世界が変わらない限り、俺は秘密を抱えて生きることは変わらないのだから。



「頼む、俺に強い力を与えると考えてくれるだけでいいんだ」



「最低限、何をしたいかを聞かないと、ヤダ。ただでさえアンタは変態だし。私の知らないところで直ぐに問題を起こすじゃない」



 う、どうしようか。きっと話したら迷惑になる。だからキリル達のことは言えない、



 言えないんだ。って言えない事ことが多すぎるな、ブルーになるよ、マジで。



「俺と一緒に、ある人と戦ってくれる人がいるんです。彼の足を引っ張りたくない。詳しくは言えない、でも」



 呼吸音が聞こえるほど静けさが、数秒かけて広がっていく。あやふやにしか言えなかった。



 更に難しい顔を浮かべさせてしまっただろう。傷口を、広げるだけだった。



 でも彼女は、少し笑みを浮かべて。



「へぇ、もう、いいわよ。分かったわ、協力してあげる」



 え、どうして? 彼女はそれ以上何も言わず俺に近づいてくる。


 俺はぽかんとしてしまった。



「で、私は祈るようにしていればいいのね?」



「お前、急に意見を変えるなんて」



「男の友情に口を出すほど、私はまだまだ落ちぶれてはいないわよ」



 思わず口を閉じる。そうか、俺は『彼』っていった。



『それを分かったうえで~こーちに近づかないで――』



 根本の予想以上。俺の周りの人達は優しく、見守ってくれる人ばかりだった。



 ありがとう、世良。



 これで、アクセスできる。



 彼女の隠された力、その司令塔としての役割を利用して、



 四次元世界の俺を引っ張り出す。同調するんだ。



 これは賭け、四次元世界に俺がいなかったら、もしかしたら気がくるってしまうだろう。


 けど、



「ああ! よろしく頼む! いくぞ、3、2、1!」



 これの目的、それは安定している彼女を中心に渦巻く九次元を無尽蔵に、俺自身に預けてもらう事。



 一気に次元を増加したことにより、俺は――





 この世界の人間を辞めた。


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