第五十一節 練習用の木刀
前回のあらすじ
織田信長の刀達を一気に出せる数は分かった。
でも濃姫のこともある、俺はこいつらを使いこなせるのか。
最強を超えるにはまだ足りない気がする。大丈夫だろう、か?
別の手段も模索しないと、死ぬ気で。
「すげえ、俺でもわかる! これが……業物‼ 武士の時代に鍛えられた、刀」
勝倉は一本一本に興奮している。それを見せたうえで俺は、彼を騙すつもりだ。
最初は普通に出した何本かを渡そうと思っていた、でも濃姫が勝倉を意識していたのを、刀を取り出した後に思い出した。
いい方向に転ぶ気がする、直感的にそう思い至った。
「お~い、お前はこっち」
放り投げた。それは、
「なんだよ? これ? 短い木刀??」
「俺が肌身離さず持ち歩いている木刀だ。言っとくが、これも信長の持ち物だぞ?」
「え、そうなのか‼ 名前はなんだ、有名なものだよな⁉」
「残念、持ち物は持ち物でも、『織田信長の練習用木刀』っていう歴史書にも書かれていない一振りだ。良かったな、個性的だ~」
「いらね~~~~~~! 返す‼」
ここが嘘、木刀なんて召喚できるか調べていないが、多分出てこないだろう。
お前なら、きっとそいつの気持ちを知ることが出来るはず。結局俺には使いこなせなかった、その刀を。
頑張れ! リベンジする時の切り札は、お前だ。
「さて、じゃあ、練習を始めるか」
最初に引き抜いた実休光忠だけ残す、他の刀は空中に浮き、吸い込まれるように消えていった。
「おい、何で戻した?」
「え、ただの自慢したかっただけだから」
一呼吸の間があった。
「また、殴ってやろうか?」
「その元気はその木刀を少しでも扱えるために使えって」
「ふっつうさ~‼ 今の流れは出した刀を貸してくれる流れじゃない⁉」
「甘いな。初めて使う刀は俺でも扱いが難しいんだよ。それはお前だって知っているだろう?」
「濃姫さんのことか? ん~でも、俺には優しそうに見えたけどな~」
「俺もお前達のやり取りを見て思ったよ。うん、アイツの弱みでも握っているのか?」
「いいや、って! そうか。わかったぞ! 俺のカッコよさにメロメロになっているんだ!」
「はいそうだね~。ボコボコにされた姿を見ても好きでいてくれるなんて相当だね~」
なんて軽口を叩きながらお互い武器を構え始める。
顔と顔を向けあって勝倉は短い木刀、俺は相手より長い実休光忠である。
なんか違う、そういって頭を捻った勝倉。
「これって、さ。武器のとくちょ」
「道具のせいにするなよ? それを克服してこそ鍛える意味がある」
「そ、そうか? それにさ、一つ聞くけど。お前って剣道みたいな剣術関係習ったことあるの?」
「あるわけないだろ?」
「あぁ~‼」
頭を抱えた勝倉。どうした、何かおかしいこといったか?
「お前、それってどうするんだよ⁉ さっき言ったことの説得力もないし、どう成長するつもりかもわからね~よ‼」
どうやら、俺から刀の振り方を習うつもりであったらしい。それであいつらに勝てると。
無理だ。ハッキリ言ってやろう。
「成長? どうせ剣術を半端にかじったとして、それが身につくかどうかわからないんだぞ。だったら、俺達がやらなければいけないことは武器の本来の力を引き出すことだ」
「武器の、本来の力?」
「ああ。そのお前が持っている木刀は、お前の成長速度を高めてくれる。その成長速度を最大限まで引き出してやれ。常に持っていろよ。アイツと戦うときも使っていれば、きっと勝てる」
「……どのぐらいの勝率なんだ?」
「百パーセント。嘘でもすがれる、いい数字だろ?」
勝倉は木刀を両手に持ったまま頭上を見上げた。考えて、考えて、
二ヤリ、と俺に覚悟を決めた顔をする。
その、もしかして……、武器の本質がわかったりする? 嘘、マジで?
「俺達、武器に頼り過ぎだな」
「それが一番勝率があるんだよ。プライドなんて、犬にでも食わせるさ」
キリル達を止めるためなら、俺はなんだってやってやるさ。
過去を克服したり、最強を目指すのも、本気で。
「じゃあ、まずは俺の技――キリギリスを受けてもらうか」
「おまえぇ、テレビでその技の恐ろしさを聞かなかっただろ‼」
知るかよ。
俺は逃げ出した勝倉に、かなり強めで攻撃を加えてやった。
すみません。遅れました!




