第五十節 織田信長の刀
前回のあらすじ
勝倉とのケンカで吹っ切れた。
たまには、自分らしくないことをするのも悪くないのかもしれない。
上級生が使う特殊な訓練場。ここは音が外に漏れないため誰にも迷惑はかからないだろう。
生徒会長、彼女に夜中、特別に使わせてもらった。姉貴は困ったような顔をしていたが理由は聞かないようだ。
でも、
「じょーくん、一つ約束して」
「な、何?」
ちょいちょいっと生徒会長が使える机の前に立っていたところから真横に手招きされる。
「少し高いよ。ちょっとかがんで」
「う、うん」
優しい手つきで、座っている椅子から片手を腰の後ろに手をまわしてきた。
もう一方は、俺の頭を撫でてくれている。
「私はじょーくんの味方だよ。だからなんでも、もっと心配させてね」
そこには、彼女の手をあまり借りないと意地を張っていた俺を、心配してくれる姉がそこにいた。
一人でできることが基準だった。一人でできないことは効率が悪い。
でも、本当の『一人』は知らなかった。
きっとまた、忘れてしまうのだろう。
だから、
「ありがとう。姉貴を、もっと信頼するよ」
「ふふ、だからって甘えん坊さんになり過ぎないでね!」
大切な関係、もっとスピードを上げて取り戻そう。今は、それだけでいい。
生徒会室から俺の固定概念である堅苦しい雰囲気は、今日は消えていた。
「いや~丈、すっげぇ! こんな広い空間が使えるなんて。舞さんに感謝だな!」
「感動している暇はないぞ。いいから、こっちにこい」
「おっけおっけー、わかった。て、何事?」
俺は空間を切り裂くために手を横にのばす。ギザギザとした亀裂から、異次元の入り口がパックリと開いた。
集中しろ! 一気に出すんだ。
ズシン、と手にかかる負荷。異次元が抵抗している。
でも、それだけじゃない。刀達が出現できないのは、今いる現世も存在を拒否しているようだ。
空間の裂け目が訓練場の横の広さ一杯に広がる。ドロドロした、この世界の物ではない毒々しい何かの量も多くなった。
「力を貸しやがれ! この俺に、かしずけぇえええ!」
キヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンン!
勝倉は悲鳴が上がったかのような音に、思わず耳を塞いでしまっていた。
刀の一本を引き抜く、異次元の黒い空間が上に移動していく。
栓を塞いでいたものがなくなったかのように、異空間から十一本の刀が落ちてきて鞘ごと突き刺さった。
これが、俺が一気に出すことが出来る量。
織田信長が使っていた刀達を取り出した。
一本ずつ出していては時間がかかるし、それになにより一気に出せるのか、
もしそうなら何分かかるのか知りたかった。
出てきたもの、『太刀』
津田遠江長光 鉋切長光 大般若長光 長篠一文字 岡田切 不動国行 鶴丸国永 鬼丸国綱
『打刀』
実休光忠 圧切長谷部 宗三左文字
『短刀』
不動行光
こいつらの力はまだ分からない。でも、一国を滅ぼすことが出来る力を持っているはずだ。
それを使って勝てるようになるかは、これからの行動次第。
――脳裏にかすめる、自分の力を過信して失敗した、もう昔である中学一年のころ。
俺は、繰り返さない。アイツと同じ人間を一人として出すものか!




