第四十九節 訓練
前回のあらすじ
約束を破る、勝倉と共に侵入した倉庫で三人が話をしている。
そこで暗躍されていた計画は俺を少し揺さぶ、らなかった。
言わないといけない、やらなければならない。
それを真っ先にしてくれたのは友達だった。
俺と勝倉は、濃姫とキリルに敗北した。
彼女達は強かった。いや、これは違うな。
俺達は彼女達と違って命のやり取りなんて経験していないと思わせる、遊び半分な力しか持っていなかっただけだ。
一斗に挑戦して来いと言っておいて、このざまさ。わかった気になっていた。
もっとも、権力で解決すればいいだけ。俺が長谷川博士にキリルのことを説明すれば、あとは国が落としどころを探って解決してくれるだろう。
「嫌だぜ俺は! この借りは、倍にして返してやる!」
「……、おめでたい意見だな。俺達にはもう、先生に解決してもらうしか方法はないんじゃないか」
親の命令でホテルを攻め落とす、彼女はそう言っていた。それまでに俺達は鍛えることはできるだろう。
でも、それで勝てるかどうかは別問題だ。
「丈、お前! ボコボコにされて悔しくないのか! いつから負け犬の考えになったんだよ!」
「現実を見ろよ。俺は濃姫に絶対に勝てない。お前も、ただの男だ。お互い殴り合いだったとしても、勝てないんだぞ?」
もし生徒会で忙しい姉貴がいれば、きっと俺に賛成してくれただろうな。
しんっと静まった部屋、ボロボロの体で座っている。
誰に話してもいいのであれば、保健室を使って怪我の治療をしてもらうのだが、そういうわけにはいかない。
きっと信用してもらえないだろう、それで真智あたりが気づきしつこく聞いて暴走するんだ。
そうなればいいのに、どうして俺は隠れるように部屋にいるのだろうか。
もうどうしようもない、勝倉を勝手に入れてしまったし。
「丈、先に謝る」
「なんだ? く、うぐぅッッ‼‼‼」
いきなり殴れた!
「お前は優等生だよ。頭がいいんじゃない、どう言えば分からないけど! お前の見ているとムカついてくる‼‼」
「なんだいきなり‼ お前こそ意味が分からないね!」
傷が酷い所に当たった。マジで、ふざけるな!
「オラ、イラついてきたか、だったら殴って来いよ。他は関係ない、お前のねっこからやりたい意思で!」
「いいぜ、やってやらぁ!」
部屋がぐちゃぐちゃになる、目覚ましは壊れて、教科書は投げ合って、投げるものがなくなったから、勝倉に馬乗りして力のこもった拳を打ち付ける。
くそ。これ見たら、姉貴が悲しむだろうな。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「うっっっっっふあああはははははははは‼‼‼‼」
勝倉はあおあざが出来ている顔で笑っていた。今けんかしていたはずなのに。 笑うんじゃねえ!
「いったいなんだよ。お前!」
「丈、俺は変われない。でも、変われないからってなんだ。俺達が生きているのは、行き当たりばったりの世界だ。そうだろ?」
(大事なことは『手札を見てから』じゃないんだよ‼)
長谷川先生に言われた、俺のダメな部分。
忘れかけていた。唐突にぐるぐると同じ道を歩いていたことに気づく。
やらないほうがいい、でも、やらなければきっと。
もしかしたら、俺はなにか大切なものを失うだろう。
友達、先生。彼らは俺が進むべき大事な道をしるしてくれる、ほんの些細なお節介で。
後悔した。もう怒りより、バツの悪さが胸に残る。
「わかってるのか? 今度は死ぬかもしれないぞ?」
「死なないぜ! 俺もお前も! そして全てハッピーエンドだ!」
「頭お花畑かよ。いいぜ、やろう。三日で強くなる、そんな嘘みたいな方法で」
俺は変わらない、のなら。昔やらなかったことをしてみようか。
そうすれば別の結果が出てくるはず。
訓練の内容は、そんな思い付きで決まった。




