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第四十八節 裏の顔 

前回のあらすじ

敗けた、今、キリルの父親に頭を下げている。

自分の決めたことを実行するために力を手に入れろ。

いらない、俺にはいらないんだ、長谷川博士。



 俺は教室から出て、すぐに下校した。なぜなら、



「剣神様、転校生に負けたらしいわよ」



「え、嘘! あの超武戦を収めた剣神様が!」



「そうよ。しかも上級生が言うには≪序決八位≫様に『触れられた』らしいわ」



「私達でも、触れられないことぐらいはできるのに」



「やっぱり、剣神様は知識はあっても実力は低いんじゃないかしら」



「ということは、一年最強はヴァイマン君ってこと?」



「いえ、真智さんと世良さんもお強いですわ」



「こら、今剣神様関連の話題はタブーよ。なにせ

 施設を自らの保身のために壊したのだから」



「人間、裏の性格があるんだね~」


 強い人というものは、どうやらこの峰空では常に追いかけなければいけないものらしい。


 俺にはどうでもいいし、関係ない。どうせ一時外出禁止状態だし、久しぶりにゆっくりゲームでもしようか。


 俺は久しぶりの休日を楽しむかのように自分の寮に向かっていた。すると、



 カタ、カタ。


 風に流れて聞こえてくる、これは?



 違う、俺の心に響いてくる。実休光忠、の声?


 ひゅうっとつむじ風が巻き起こった。青い葉っぱをまきあげ、どこかへ導くように進んでいく。


 ついていく。俺は、知りたくなったんだ。


 今はそのもの自体が俺の代名詞になっている、武器が戦国武将を裏切ってくれた、その力を俺に与えてくれた理由を。



「げぇ!」



「何してるんだ? お前」



「い、いやあ。重要参考人で警察に捕まったせいでクレーターが見れなかったからさ。もう、最終手段に出るしかなくて」


 そこには高いフェンスの壁を上ろうとしている不審者顔負けの人物がいた。


 その名は勝倉 ハジメ、ちょっとした陽キャ風味を醸し出す、目立つ陰キャである。



「はぁ。何が言いたいんだ? どいつもこいつも」



「そ、そうだ! 丈、今から学校の外に出られるか?」



「なんだよ? 残念だが今俺は外出禁止」



「昨日銭湯の裏口から入っていった、テレビがお前の刀と言っていた濃姫さんが、使われていなさそうな倉庫に入っていったのが見えたんだよ! でも、追いかけても意味ないだろ? それを、お前に伝えるために」



「嘘つけ。逃げだしただけだろ? はぐらかさないでいいぞ、すぐに警察に侵入しようとしたことを伝えてやる」



「丈、許してくれよ~‼ ほら、一緒に倉庫にいってやるからさ~!」



「行く意味がない」


 話を遮ってきたから俺もしてやった。


 俺は証拠写真をスマホで撮る。そのまま、門番の人に見せようと歩き出した。


 でも、



「だけど、おかしいよな。悪いことしたんだろ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 ち、関わるな。関わるな関わるな関わる――



「勝倉、案内しろ」



「お、おう分かった」



 長谷川先生の罰を無視して何やっているんだよ、俺。




 ~*~



 勝倉に案内されてたどり着いた倉庫は、不気味な静けさが辺りを支配していた。入りやすい、けど口を開けて待っていた、そうふと感じた。



「どうだ? 東都ジオリホテルは壊せそうか?」



 俺達はただ広いだけの倉庫に侵入してすぐ、中心付近にいる三人の人物を目に捉えた。


 隠れる場所を変えながら、二人でゆっくり近づく。


 最初は小さい声だったが、はっきりと聞こえるようになった。



「ええ、壊すこと自体は簡単ですわ。でも、私が起こした事件で警戒しているようです」



「ふ、日本政府も馬鹿ではないという事か。もっとも、時間の問題だがな」



「……」



『おい、あれって最近テレビに出ているヴァイマン家、現当代じゃ⁉ それが超能力者がいることを知らしめた場所である国宝のホテルを襲撃って‼』



 バカ! 声がでかい‼



「……、うん? 今声が聞こえなかったか?」


 目線が俺達が隠れている方に飛んでくる。濃姫とキリルだ。



「ふふふ、いえ、大丈夫です」


 ただのネズミです。そういった濃姫は少し面白そうだ。


 濃姫の発言に少し困惑していたキリルもそれ以上何も言わない。


 バレている、探りたい相手である濃姫に。



「でも、今の所思い通りに進んでいると思いませんか? ねえ、ゴキル様」



「当たり前だ。お前が突然仲間になると言ったとき私が考えた最高最適の計画だぞ。自分の名前を汚さず、みんなに信用してもらう。そのためにお前に暴れてもらったのだ! 本当は悪人だった方後を止めるヒーローとしてキリルを、目立たせるために。それもこれも、目障りな国宝を落とす手順の一つだ」


 そう大きな声で高笑いする、キリルの父親。


 はめられていた、そのことを彼は悪びれもしない。


 俺は思わず手に力をこめてしまうほど、悔しかった。


 しかし、濃姫がわざと俺達に情報を渡している、なぜだろう? それを考えると少し冷静になる。



「だが、私の計画のためにもしっかりしてもらいたいな。計画が頓挫するのは必ずお前のせいだからな!」



「ふふふ、分かっています。三日後、ホテルを落とすつもりですわ」



「よし、お前はどうなっても構わん、必ず壊せ。あれは私達の国の邪魔だからな」


 倉庫から出ていく、とても自信に満ちた表情を、していた。


 俺も、あれくらい大きな顔が出来たら。


 幸せに、今頃は生活できていたのだろうか。



「さて、もう出てきていいですわよ。信長様、それとお友達様」



「や、やっぱりだよな。お前達は嫌々ながら従っ」



「少し黙れ、勝倉」


 俺達と濃姫達は面と面を合わせる。キリルが気まずそうに目を逸らした。



「お前、本当は女だったんだな。そうとは思っていたが」



「……日本の、名もない刀に触れたんだ。それを使ったら、『呪い』を受けてね。何も知らず力を引き出していた僕は、女性の血を昇華させていつの間にか男性のままになったんだ」



「で、理由はなんだ? お前がこっちに来た」



「父の権力争いかな。あのひとは、とても弱い人なんだ。いつも女性に媚びへつらって、息を潜めて生きていてね。それでお酒や、カジノに逃げて。女性だった僕にもいつも申し訳なさそうな表情をしていた。その父が、僕が男として生きるしかなくなったときからチヤホヤされ始めたんだ。丁度君が、世界中に報道された時だった」


 ポツポツと、過去を話し始めた。


 日本にしかいないと言われていた世界唯一の男性超能力者、それが自分達の国にいる。一躍、キリルの父はその血に男性能力者が生まれるかもということでヴァイマン家当主にもなってしまった。

 

 生き生きと活動していたらしい。



「行き過ぎた、そう気づいたときには父はもう権力のために権力を振るう人になっていた。僕も、従うしかなくなっていた」


 とらわれている。濃姫との関係が、俺自身の心に暗い影を落とし始めていたことと同じように。



「お前自身の手で変えることはできないのか?」



「僕も考えたんだよ。方法は、ない。濃姫さんを止めるまで、君に期待していたけど。絶対に無理だと今ならわかるよ」


 彼女は味方の僕にさえ何をしたいのかわからない、止まらないよ。


 そう、自嘲気味に笑う彼女の表情は、超武戦で見たことがあった。


 キリルをこのままにしたくない。そう考えたら最後、つい聞いてしまっていた。



「濃姫、聞くぞ、何が目的なんだ?」



「私の目的は全て、信長様のためですわ」



「俺は、世界なんて欲しくない。それよりも今は、お前を理解したい」



「私は私のやり方がある。目的から、私のことを理解できるとは限らないですわ」



「俺は‼」


「そもそも、今ここで戦う気がないあなたに何が変えられるのですか?私を知りたければ、キリルさんを止めてみて下さい。【宝剣召喚】でエクスカリバーを抜くことが出来た、彼女を」


 その通りだ。言葉じゃ理解できない時、人間は互いに拳を握り合う。


 しかし戦う覚悟というものは、どこかに捨ててしまった、持ち合わせていなかった。


 それを――、



「俺が、止めてやる‼」



「え?」


 勝倉? お前、



「ふふふ、お友達様、ただの人間のあなたが止められると、本気でお思いですか?」



「勝倉だ! 俺は、バカだから、頭の中ぐちゃぐちゃで関係性なんて何一つわかっちゃいない! でも、ここは丈の友達である俺が言わないといけない‼ 勝つか、負けるかという話じゃないんだ。迷っている友達の代わりにやってやる! それが友達なんだ‼」


 ファイティングポーズをとる勝倉、


 ギラリと光る、抜かれたまま腰に刺さっていたエクスカリバー。彼を敵と認めていた⁉



「勝倉、くんか。ただのバカに興味はないんだけど。濃姫さん、あなたは方後君を」



「行くぞ丈! ケンカだ‼」


 信じられない、刀。今信じられるものは、友達の言葉。



「ケンカなら、いいか」


 俺達は武器を持たず、濃姫達に突撃していく。


 結果は、分かり切っていた。相手は喧嘩ではなかったから。



「三日後、もし再戦を望むのであれば東都ジオリホテルで待っていますわ」



 消えゆく意識の中、俺は満足した。




 また嘘、だった。

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