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第四十七節 父親

前回のあらすじ

丈 VS キリルの戦闘、悪はいったい誰か。

答えを知る者は静かに戦いの行方を観察していた。



「今回は方後丈の刀である濃姫さんを止めて下さって、本当に、ありがとうございました」



「いえいえ、キリルも悩んだのでしょうが、友達が悪い方向に進んでしまうのを無視出来なかったのでしょう。お力になれて本当に良かった」


 ニコニコと笑うスーツ姿の男はヴァイマン家当主である。


 下手に出たらこの態度、本心は俺達のことを考えていないのは手に取るようにわかっていた。



「もっとも、彼女が聖剣エクスカリバーを抜けたのはこちらにとっても収穫でした。私達一族は【宝剣召喚(レジェンドキネシス)】という全ての伝説の剣を使うことが出来る能力を持っていますが、エクスカリバーは初代しか抜けなかった剣ですからね。この力で一層、この峰空に貢献できるでしょう」



「よろしくお願いいたします。期待しています」



「ああその濃姫さん、ですが私が一時預かるつもりです。方後君も彼女をどうしても止められないらしいですし、少し学校を休むことにもなりますがキリルにとって監視はスキルアップにも繋がるでしょう。いいですよね?」



「はい、お願いします。その間にこちらもどう処理するか、決めさせていただきますので」



「任せてください。でも、濃姫さんさえ制御できない人間が栄えある峰空の≪序決七位≫とはね。どうです、もう私の息子と変えたほうがいいのでは?」



「……すみません。生徒総会での決定は正規の手順を踏んでいただかないと」



「頭が固いですね。どうやら、私達はその程度であるようだ。濃姫さんを預かるのは止めましょうかねぇ?」



「‼ 考えさせて、ください」



「ええ、いい返事を期待していますよ」


 俺に発言権はなかった。ただ、頭を下げていた。


 俺のせいで校長、長谷川先生も礼儀のなっていない人に従うしかなかった。


 しかし、この安心感はなんなのだろう?


 濃姫という、イレギュラーの対応をしばらくしなくていいい。


 そう考えただけで、世の中が生きやすくなった。


 でも、それは変化を捨てた現状維持だった。とても、心地よいゆりかごのよう。


 沈んでいく、どっぷりと深みにハマっていいよな。



「では、私はこれで」



「はい、今日はわざわざご足労いただきありがとうございました」



「ありがとうございました」


 俺が感謝を述べた。ちらりと見られる、もう眼中に入っていないのかここにいることへの疑問の表情をしていた。



「方後くん、よく我慢したね」



 校長室から出て教室に戻る途中、長谷川先生から心配そうにそう言われた。



「別に、中学時代はよくこんなことありましたからね」



「でも、悔しかっただろう? 超能力理論を開発したのに、その超能力の扱いで馬鹿にされるなんて」



「悔しくないです。どうせ、上には世良がいますから」



「そのことだけどね。今回の件を考えたら君も、超能力で上を目指し始めたほうがいいんじゃないかい」



「どうしてです? 俺は現状、守りたいものの壁になれる力を持っている。超能力の利用方法も考えないといけませんし、これ以上同時進行してもどれも中途半端に」 



「君、自身の超能力が井谷さんを一瞬超えたことは理解してる? 僕達は超能力こそ選べなかったが超能力の力加減は人ひとりに与えることが出来た。それで井谷さんに最強の力を与えたようといった君の願いは叶えられた」



「……」



「僕ら大人は、井谷さんに最強の力を与える代わりに君にどのぐらいの力を持つかの選択権を与えなかった。僕も関与していないものを、君は政府からもらった」



「へぇ。僕はてっきり博士が選んだと思っていました」



「違うよ。と、今はそれはいい。つまりだ。てっきり政府は目立たない程度の弱い力しか君に与えなかった、と思っていたんだけど。そうじゃなかった。君は強くなるべき、そして、濃姫さんを見返したり、この峰空の最強に相応しい実力を身につけて問題を解決するんだ」



 髪を上にかきあげる、真面目に話していた。俺はこれを、受け止めなければいけないのだろう。けど、



「いや、です」



「なんで……、君がもっと誰かのためになれる、自分の身を守ることも出来るその手段を自ら掴まない理由は、あるのかい?」



「俺は超能力を開発した、その犠牲になっている人を救った。もっと、もっとたくさんの人を。俺は思うんです。『どちらにしろ満足はしない』って。なら、一定の力はあるんだからそれで救えなかったら諦めていいじゃないですか」



「君は、守りたいものを守りたいんじゃなかったのかい?」



「はい、そうです。でも大抵の守りたい人は、自分の身は自分である程度は守れる、それにこれ以上強くなって濃姫を押さえつけられなかったら? それこそ被害が尋常になりますよ?」



 自分のことが嫌いになっていた。体に身についていなかった、希望の言葉達。


 少しのことで倒れる、もう、努力なんてしたくなかった。



「ふう。ここで怒鳴ってまた解決、いつまでもそんなことをしていたら、流石にお互いのために良くないよね。よし」



 パン、パンと頬を叩く長谷川先生。気合を入れている?



「止めていたけど、もういいね。君は少し頭を冷やした方がいい。よって、峰空から出さないから。これは罰だと思って」



「え? は、い。わかりました」



 ぜんぜん、痛くもかゆくもなかった。というか、安心すらしていた。




 俺は見放されたの、だろうか?



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