第四十六節 血が薄まる呪い
前回のあらすじ
怖い、仲良くなりたい。
相反する二つの思いは自分自身のことで簡単に答えが出た。
止めてくれる人さえ押しのけて。
「丈君、お願いがあるんだけど、聞いてくれるかい?」
背中から血を出しながら立ち上がる、見ただけでわかった、もう、剣は持てないだろう。
「止めてくれ! 俺に勝たなくていいんだ‼ お前は立派だ!」
女の子を助けるために体を張ったんだ。もうこの事件は俺以外、攻められることはない。
「さあ、信長様! とどめを刺すのです」
「いや、だ。俺は‼ 人殺しはしたくない!」
「後悔しますわよ! 今ここで、禍根を断つのです!」
「はは。丈君、君は本当に甘い。あいつは主人公と話していたリクの言葉通りだ」
ふぅ、と息を吐いた。
「友達? いや、伝えなければと思う人だった。絶対にバラすなと父から言われていたのにね。その彼が、良い未来を君が『導いている』という言葉を使った。なら僕も『期待する』ぐらい、いいよね? 未来、僕の宿命を、僕が止めたことによる君の成長によって、変えるなんて、どうだい?」
今から、話すことは、他言無用、で頼む。
どんどん痛々しい言葉を節々に感じる、歯切れが悪くなっていた。
「キリル、いったいなにを?」
「僕ね、秘密が、あるんだ。それを、心の底から、使ってでも止めたい、そう思える相手は金輪際、現れることはない、と思っていた、んだけど。どうしてだろう。君を手に入れる、そのために、近づいた女の子たちを、見ていると僕も、ドキドキしていたのかもしれない、そう思えるよ、もう、女性には戻れないとわかっているのに」
彼、その周りから絵の具のように濃い、赤黒い気のようなものが湧き出てきている!
なんなのだろう、この感じる不快感は、
彼から何かが昇華している、とても大事な一滴一滴。
「母方からもらった女性としての血、それは、神聖なもの、その一つ一つ、に超能力の神髄が詰まっている。それが、僕がもっと力を引き出す悪魔との等価交換、に使う材料なんだ。こっちでは、『呪い』と言われるもの」
ガチ、っと初めてみた。初めて、腰に差してあった剣を抜こうとしている。
「これはね、正義と、剣が認めない、と抜けないんだ。だから、いくら『呪い』の代価で力が、強まっても、抜けないかもしれない」
転校してきた昨日時点でも確かに、ただの剣には見えなかった。
それは今この瞬間、俺の刀達が霞むほどの力の本流を持っていると納得できる、それ程の力を、発していた。
「君を超えて、濃姫さん、を止める。そして、もし見たままの現、実受け止めてくれる、のだったら僕にも、別の手段を手に入れる可能性をくれないか?」
ゆっくり、ゆっくりと、温かい光が抜かれていく剣身から漏れ出していく。
抜かれたとき、世界中にある光源の中心はここだったと感じさせる、今までのどれよりも強い、輝き
を放っていた。
「伝説の剣、エクスカリバー⁉ 初めて見た……」
勝倉が言い当てる、知っていたのではない、それしか当てはまらないような剣に見えたのだ。
キリルは構える。彼の周りには赤黒い気と神聖な気が混ざり合って、
伝説が異色の組み合わせを相手に誇示していた。俺には、止められないと思った。
スッと楽になる。刀を下ろした。
「いく、よ。一の技『アーサー』‼」
振り下ろした。地面を抉り、俺めがけて。――辺りが真っ白になった。
俺は、なんでだろう。濃姫を庇っていた。
キリルを信じていた。きっと被害は、俺たちにしかないはずだと思った。
もう、立ち上がることはできない。それでも意識があるのは、なぜだろう。
「う⁉」
うめき声しか出せなかった俺は、驚いていた。
キリルがいる場所に、彼はいなかった。
青い髪に、切れ長の眉、少し膨らんだ胸。
力加減が分からなかったのだろう、恥ずかしそうに剥き出しになった柔らかそうな体を隠している、
その女性は、告げた。
「やっぱり一瞬戻るんだ。もう自力では、戻れないのに」
「ご成長おめでとうございます、キリルさん」
いつの間にか濃姫は俺を押しのけて立ち上がる。
その言葉、いったい何が起こって。
「全てはあの方の思い通りです。行きましょう、もうこちらにきています」
「あ、ふう。そういうことか。わかったよ」
「そうだ。少しお待ちを」
駆けていった濃姫は近くで腰が抜けていた勝倉を撫でた。
「頑張ってくださいね」
それだけ、言った。
二人は外へ消えていく、状況が呑み込めなかった。
しかし、濃姫に踊らされている、そのことだけははっきりとわからされていた。
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