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第四十四節 勝倉

前回のあらすじ

ドキドキしながら着替えます。

あー男だと信じていませんでしたー。

仕草にドキドキします。男なのに。


俺達は静かに浴槽に浸かっていた。


 会話はない、それでもキリルは裸をまじまじと見てしまったことを笑って許してくれた。



「僕も日本文化の銭湯というものに誘ったけど、裸を見られたことはあまりないんだ。だから、こっちにも落ち度はあるよ」


 もっとも、おかしいのは俺だったのはゆるぎなかった。


 だって下半身にも、大事なものはついていたから。


 でも、少しの女の子らしさが自身の妄想を大きく駆り立てている。


 いわく、本当は女の子なのではないか? という、確信も可能性もない判断だ。


 超能力で男子のふりをしていて、【宝剣召喚】にはそれを可能にする剣がある?


 他の誰かに超能力で姿を偽ってもらっている?



「もう、止めだ止め!」


 俺の見立てでは女性だと思う、それでいいじゃないか。あとは政府と協力してどうするか、それ次第だ。


 そもそも女子と浸かっているというだけで、妙な緊張感で銭湯に入っていられない‼



「早いが先にあがるぞ。別に、ゆっくりしてていいからな」



「わ、僕も出るよ。一人じゃ、流石にきついから」


 悲しいことに、俺達はたった数分のためにお金が飛んでいってしまったようだ。


 俺が余計なことをするからだな。うん。



「クシュン!」



「いきなり気温差があるところに出たからな、風邪をひくなよ?」



「ありがとう。方後君」



「さっきのお詫びだ、なんか買ってやるよ。温かいものでいいか?」



「そんな、悪いよ」



「買い方、どうせ分からないだろ。いいんだよ」


 ササッと着替えて売店に向かう、目指す場所は自販機だ。


 はあ、もう性別が分からなくて上手く話せない。


 男だと信じられなかった。ほんと、超能力って面倒くさいものだったんだな。


 もっとも、俺はそれを暴く手段を持っている。それをしても良かったんだけど。


 今やる必要は、特にないし。


 ん? 銭湯に入ったって、あれ??


 もし警察とかにバレたら、キリルは犯罪で捕まっちゃうのか?


 俺も巻き込まれる?




 なんて、考えていたら。




「くそ、マジでうぜえ!」


 見知った顔が銭湯に入ってくるところだった。



「うん?」



「あ、よう! 丈じゃねえか‼ 元気か?」



「勝倉、どうしてここに!?」



「いや、峰空のお嬢様達が校庭にデカいクレーターを作ったって聞いてさ。結構特番も組まれていたし一度見に行こうと思ったとこだ」


 勝倉(かつくら) ハジメ、俺の中学時代の親友であり二年間同じクラスだった腐れ縁がある、部活動をするために生まれてきた男だ。


 その陽気な性格はどこでも通ずるようで早速告って、爆発したらしい。メールで送られてきた悲しみの言葉は、もう直ぐにごみ箱に捨ててやったよ。



「そうなのか? でも、入れなかっただろ?」



「ああ、その通り。くそ‼ 下っ端のくせにあの門番、同じことを何度も何度も、聞き飽きたわ‼」



「あはは、あまりあの門番にケンカ売らない方がいいぞ~」



「は、あんな奴なんてワンパンだ、ワンパン」



「はは、はあ」


 俺は知っている。関わった男性の中で一番強いのは、実は彼なんじゃなか、と。


 こっちも巻き込まれるフラグかぁ。止めてくれマジで。



「そうそう、こっちに来るときにこの銭湯の裏口から峰空の女子生徒が入っていくのが見えたけど、お前の知り合いか? ここでバイトでもしているの?」



「バイト? 残念ながら峰空はアルバイト禁止」




 ドカァン!!!!!!!!!!!




「爆発だ‼」



「また、峰空の生徒が校庭で無茶した音か?」



「いや違う、この銭湯のボイラー室からだ‼」


 二回目の爆発が轟いた。その音に合わせて、熱いお湯が空高く吹き上げられているようだ。


 ズン、ズドン‼ どんどん増えていく、いったいどうして?



「方後君‼」


 キリルが俺達の方に駆け寄ってくる。まだ完璧には着替え終わっていない。



「銭湯が襲われている、ここは僕達で」



「そうだな。避難誘導しつつ、警察を待とう」



「丈、お前‼ ここはお前の力で華麗に解決するところだろ⁉」



「馬鹿言うな、俺達が無許可に超能力を使ったら」



「いえ、使ってもらわないと困ります」


 黒髪の、小さい女の子、峰空の制服を着ている、昔の肖像画から出て来たような雰囲気を纏っていて。


 どうして、お前。



「なんでしょうか? 私は私のやりたいことをしている、それを止める権利はもう、信長様にはないですわ」


 濃姫、彼女が辺りに混乱を振りまいていた。その証拠に従業員が彼女を見て恐怖に染まった目をしている。


 俺の悪い予感が当たった。いつかこうなるんじゃないかと思った。


 俺の手には余る、そう思って封印していたものが、




 静かに、牙をむけていた。


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