第三十八節 波乱の始まり
前回のあらすじ
くじ引きからデート券。はたまた、ハグポイントまで!
俺は、何かと戦っているのだろうか??
「今日はよろしく、方後君に濃姫さん。それに……、井谷さん」
「なんでこうなるのよ。私は何で、こういうどーてもいい時に運を使ってしまうの?」
「お似合いですわ、二人とも」
「おい、ちゃかすな濃姫」
「いや~やりやすくて助かるよ~。全員同じ学年、同じクラスなんて」
俺達はスタート地点であり、長谷川先生と話をする一年A組に集合している。ここから移動しながら、学校をぐるっと回る予定だ。
ああ、ツッコミはなしだ。いや、本当はツッコむ所しかないけど。
世良はヤバい、よりにもよってくじを引く一人目かつ一回目で『あたり』を引きやがった。
その場は阿鼻叫喚、せっかくクジを作ってくれた先生達がめまいでくらくらしはじめ、後に引けば引くほど当たりが出るのを見越している、綿密に計算していた生徒達がすべてを出し切ってしまったように呆けていた。
超能力ではない。それは俺と先生達が説明した。
いや、でももうこれは超能力を超越した何かだろうとおもうけど。
「実は僕、職員室とこのクラスしか行ったことないんだ。だから訓練場とか、かなり気になるよ」
「そうか。まあ、俺も学校内の施設が詳しい方ではないけどな」
入ってまだ一か月だぞ。覚えられるわけがない。
そんなこといったらこのデートの趣旨がゆらぐから、言わないけど。
「なら、ちょうどいいね! どんな建物があるのかな? ワクワクするよ‼」
キャピキャピした動きは少し女の子っぽい、ような。
「お前さ、本当に男か? ちょっと気持ち悪いぞ?」
ピキリ、っとキリルの動きが止まりギギーとロボットのようにこちらを振り向いた。
「あ、当たり前だろ? 何を言っているんだい?」
怪しい、ホント怪しい。
……、長谷川先生とその後輩が疑っているものはなんとなくわかっていた。
ハッキリ言って、こいつが男の可能性自体が低いと言いたいんだろう。
高い声、スラっとしている長い脚に中性的な顔立ちが、それを更に物語っているような気がする。
「そう、そういうのだったら。このダブルデートが終わった後、い、一緒に銭湯でも、行かないか、かい?」
お、ラッキー。言ってみるものだ。歯切れが悪いのが気になるが、これで男子か女子かすぐにわかるな。
ん? でも、もし女子だったら?
俺、一足飛びで階段を上ってしまうのだろうか?
『きゃ~!』
一部で小さい歓声が。眼鏡女子生徒を中心にちょっと赤くなっている。
男同士で銭湯に入るのが、そこまで珍しいか?
「銭湯って、どこにあるんだよ? 世良、知っているか?」
「どうして私に聞いてくださらないのですか、信長様?」
当たり前だろ、お前、こっちに腰を落ち着けて何日目だよ?
聞かなくても答えを知らないことが分かり切っている。
「あ~はいはい。じゃあ、どこですかね~?」
「商店街の近くです。信長様、あなた様はもう少し自分の領地を知るべきですわ」
「領地って。方後君は、野心家なんだね」
ほら~誤解された~。俺はなに一つ、そんなこと言っていないのに。
「はいはい、お喋りは案内しながらしてね~。そろそろ行ってらっしゃい~」
「分かりました。それじゃ、行くわよ。ぷぷ、領主様御一行、あはは」
「世良、黙れ」
さっさと目的を達成して終わらせよう、俺はからかわれるのにイライラを抑えていた。
ふと、頭をかすめた。俺には向上心というものはない。だから誰でも出来ることなのに、と言われ昔はよくバカにされていた。はずだった。
だから中学時代はからかわれることは気にしていなかった。
そのはずなのに、プライドが自分でも感じとれるくらい大きくなっているような。
どうすれば気持ちに整理がつけられるのだろう、という不安感が俺の心を支配しようとする。
歩調がずれる、三人に合わせるために俺は、足を速めて追いかけていてーー。




