第三十三節 国の方針
前回のあらすじ
濃姫はもう社会に順応していた。素直にすごい。
さっきまで、俺はこいつを面倒くさいと思いながら長谷川先生のもとに向かっていて、今たどり着いた。
て、え? 二人は笑っている、どういうことだ?
笑う二人に良くない話にはならないように感じて、少し緊迫感が薄れる。
「丈く~ん、どうやら心配する必要はなかったらしいよ~、ん~サボっちゃったな~」
博士がソファーにやつ当たりするように体を投げ出した。
「君にも、順を追って説明する。まず、国は全てを公開したいわけではない」
「つまり今回の二人目は、政府として許可したくなかったってことですか?」
「そうなる。私達も驚かされたよ。今回の二人目は外国の少年らしくてね、無理矢理転校をねじ込まされた」
俺のミスでもない。安心したよ。意外と気をつけているんだぜ、政府を相手にするって。
「でも、二人目なんて嘘でもよく政府が認めましたね。国と国との関係は複雑化しているんですか」
「まあね。こちらも確認しようとしたんだが、出身の国にとっても重要人物らしく深くまで捜査できなかった」
お金持ち、または役人の息子ということなんだろう。余計なことをしてくれたよ、ほんと。
「でも~こうなることは丈くんが暴れたときに分かっていたことだし~そこまで~」
「先輩、何言っているんですか! 確かに先輩達には関係ないかもしれませんが相手の国が何か隠しているのは確かです。もしかしたら、安全対策条約の本当の意味である超能力理論の本質を明るみに出そうとしている可能性もあるんですよ!」
「それが回り回って~私達の秘密を暴いたり、面倒事を増やしてくるって~?残念でした。丈くんの『彼女になりたそうにこっちを見ている』さんは最強戦力です~」
何をしても彼女は負けることはないのです~、というのは長谷川博士。世良のことを言っているのだろうか。
その言葉を聞いて頭をかすめる、超武戦で世良をほんのわずかの間超えた、俺。
いや、あれはまだ考えなくていいか。
「先輩、今日はやけに投げやりじゃないですか? いつもだったら問題が起きる前に抑えようとするのに」
「だってさ~、日本が裏切る方がもっと恐ろしいもの」
「でも、それよりもっと最悪の事態になるかもしれませんよ、博士」
俺は、手を抜くつもりはない。どんな相手か確かめた方がいいだろう。
「後輩君の言葉を聞いたら、もう対策は取っているんだよね~。だったら、言うことは一つだ」
「それを、私達もお願いに来ました」
「ダブルデートの時に相手の素性を調べてくれ、と」
「その通りだよ~」
「君には危険が付きまとうかもしれないが、頼まれてくれないだろうか」
博士と違って超能力機関の人は律儀に頭を下げてきた。
「いいですよ別に。今回のことは俺を庇ってくれた中二のときの借りを返すことになりますし」
真智が年齢をいじっているため、俺は中学三年生のときに借りを作ったことになっている。
でも、それは博士と政府の役人には説明している、くどく説明する必要はないだろう。
「そういってくれると嬉しい。実際にあの時政府も意見が割れたからね。でも、これでほとぼりが冷めるだろう」
何かを含む言い方。政府も、一筋縄ではないということだろうか。
「そうだ、前々から聞きたかったんですが」
「なんだい? 答えられる範囲で答えるよ」
「なぜ、超能力者を女子限定にしたんですか? 別に男子が超能力を持ってもいいじゃないですか」
そうすれば、超武戦のようなことにはならなかっただろう。自衛隊は今頃最強の軍隊になっているはず。
女性に力を与えたことで男女平等にはなったかもしれない、でもそれにしてはデメリットが多すぎる気がした。
「……私は、怖かった」
「え?」
「超ひも理論のことだよ。縦、横、高さ、それを一つ抜いて炎にしたときその炎が空間を埋め尽くせば能力は次元である」
次元は能力と一緒、隠れている余剰次元を活性化させて作り出すエネルギー。
「私はそれなりの地位にいるつもりだが、この理論についての本質をまだ国は言い出せないでいるようだ。それが、理由になるのかもしれない」
「そんなよく分からない理由で、女性に危険が及んでもいいってことかよ」
つい、怒気を荒げてしまう。
「そうじゃない、女性が鍵なんだ。私の直感だけどね」
力なく笑う博士の後輩は、責任の重みになんとか耐えているようだった。
女性が鍵。超能力理論は、いったいどこに向かおうとしているのだろう。
世良が笑っていられる、それだけは守り抜くと心にそっと誓った。
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