第三十二節 笑う
前回のあらすじ
ドキドキ二人目の転校生!
姉さんにも何か狙いがあるようでかいつまんだ話、納得、
納得できるか~!
その日は最後まで、濃姫は俺の刀として元の空間に戻らなかった。
どうやら世良と真智とでガールズトークに花を咲かせていたらしい。先生達ともいつの間にか仲良くなって俺と二人で座れるように椅子を用意してもらったようだ。
狭いから戻れと言ったが、頑として聞いてくれない。ほとほと手を焼いて困ってしまう。
更に日本史の授業では先生の質問に正確に答え、プラスアルファで補足をしたら、質の高い時間になったことを感謝される始末。
で、その先生がうちの副担だった。もう、校長に言って生徒として扱いたいと言ったらしい。
いつの間にかこちらの言葉にも慣れたみたいだし、適応力がすさまじかった。
「ふふふ、いい時代ですわね、信長様?」
「疲れた……」
頭を軽く掻きむしる。刀であったら楽だったのに、どうして体が付いているのだろう。
戻って寮のベットに横になりたかった。少しだけだったら休憩しても……、
ダメ、だな。
下校時刻、いつもと今日は違う。学校に外泊許可を貰って駅に向かい足早に進んでいた。
「信長様、どちらに行かれるのですか?」
「長谷川先生の家だ。お前も行ったことがあるだろう?」
「はい、確かあの小さい離れの近くにあったかと」
「俺の実家を小さい離れっていうんじゃねえ。あれが普通だ」
「ですが、将軍の家ともあろうものの大きさではありませんわ。長谷川先生様の家よりも小さいなんて」
「今でさえ俺の評価は高いかもしれないがが昔は勉強もろくにできない、劣等生だったからな。そんな俺の親はどこにでもいるサラリーマンと専業主婦だ。超能力理論を開発した博士の友人とは比べないでくれ」
「でも、本来公表したのは信長様でしょう? いったいこの世は何を見ているのですか? 簡単にあなた様のお姿に気づきそうなものですのに」
今すぐ世界にあなた様の素晴らしさを気づかせて差し上げましょうか、と冗談であってほしい言葉が聞こえてくる。タダでさえ俺は目立っているのに、これ以上外に出ることを面倒にしないでくれ。
それに心配しているんだぞ。母さん達に危険が及んでいないかとか。
武衛大のこともあるし、長谷川博士が警察の巡回のルートに入れているといってくれているからそこまで心配はしていないけれど。
それは、さっき長谷川先生が姉貴を止めてくれた理由にもなっているんだ。
「保留にしておきましょうか。一週間後は信長様とデートですし、ふふ、何でもしてくれる。ふふふ」
あ~、それ、言ってしまったけど大丈夫だろうか。
聞いたところ、何でもしてやるという約束はデートの日に使うという。
死刑宣告を受けたみたいだ。それはもう、時限爆弾を抱えている気がして夜、眠れないかもしれない。
でも、殺そうと思えばいつでも命を狙われている状態だし気にしてもしょうがないかな。
あ~刀で明日を迎えなくするものってないのか~?
「――着いたぞ」
長谷川先生も俺と一緒で普段は寮を使っている、しかし今日は予定が出来たと言って学校を途中で終えたらしい。
その理由は言うまでもなく、俺に国のスタンスを説明するためだ。
「失礼します。長谷川博士、博士~!」
「お~、丈く~んそのまま奥まで来てくれ~」
「ここは好きではありませんわ。何やら妖術の匂いがして心配になります」
「別についてこなくてもいいんだぞ?」
「いえ、ついていきます。我慢いたしますわ」
それは優しさなのか、隙を疑う算段なのか。俺には分からなかい。
出来れば優しさの方であってほしいとは思うけど。関わった以上、遊びとかを一緒に楽しんでみたいからな。
奥の扉を開ける。そこには、
「こんにちは、方後丈くん」
「……お久しぶりです」
雰囲気でもう来ていることは何となくわかった、手の上で転がされていると感じる緊迫感だ。
前に会った時と変わらない、
黒スーツでデザインが大人しめのネクタイを付けている長谷川博士の後輩が、博士と笑って立っていた。




