第三十一節 二人目の転校生
前回のあらすじ
長谷川先生は俺の努力を姉と同じく認めてくれないらしい。
みんなのためにやっている、だからいいじゃないか。
どんな秘密も、これ以上悪く大きくしたくないから。
意地っ張りの、言い訳だった。
「実はこの学校に二人目の男子超能力者が来てくれることになりました! ハイ拍手!」
パチパチとした音を一人だけ、姉貴が出す。所かまわず出てくる問題に、俺は頭が追い付かない。
「良かったね! これでじょーくんにも女性以外の友達と一緒にいられるよ」
「姉さん、流石に嘘だよな?」
「嘘は言いません! 生徒会長として確かに聞いたの! それで、一週間後はこの学校の中でダブルデートをしてもらいます。そのデートの目的は複数あるけど、とりあえずは濃姫さんをデート相手にするから、じょーくんのカッコよさでメロメロにしちゃって! ついでに転校生にはこの学校を見てもらおう!」
テンションが高い。俺は事の重大さが分かっている。だから、喜べなかった。
二人目の男子ということは、国が俺の理論について全て公表する前兆としか考えられない。
長谷川博士に視線を向ける。彼女の目は真剣だった。多分あとで教えてくれるだろう。今の国の動きについて。
これは、デートどころじゃないな。
いや、これは逆にチャンスかもしれない。その男子のことを詳しく知ることが出来る。
「わかった。いいよ。で、俺は濃姫とデートするとして、転校生は誰とデートするんだ?」
「放課後までにどうするか決めようと思っているけど、私としてはじょーくんを濃姫さんから守ってくれる、強い人がいいな」
それはある意味、俺も同意だ。濃姫のことは、俺だけの問題だからどうでもいい。けど、転校生についてはもしかしたら世界に混乱を招きかねない。
真智か、今、三年生が追いかけてきているけど学年最強の地位を確立している俺のクラスの誰かがベストだろうな。
「てっことは、姉貴も参加するかもしれないと」
「ううん、私は無理かな。ほら、生徒会で忙しいし、じょーくんとのデートなら断らないけど転校生とデートはちょっとう~んと思っちゃう。大事なダブルデートなのは分かっているんだけど」
「生徒会長に甘えたいのかい。彼女は体が二つあっても足りないくらいなんだぞ。ここは身内に頼らないで、ほろ苦い恋を謳歌しようね」
どうやら、長谷川先生はあのことを覚えているらしい。ちょっと言い方がけなしている気がするが姉貴にこの件を関わらせたくないのが伝わってきた。
「違う。俺は姉貴とデートを見るのもするのも恥ずかしいんだよ!」
「じょーくん、恥ずかしがらなくてもいいよ。もう何でもさらけ出せる関係でしょう?」
「へ~、丈くん。以外にもお姉ちゃんっ子なんだね~」
「うふふ。先生、聞いてくださいよ。じょーくんが小さかったころはもうほんとに何回食べてしまおうか、考えるだけでも手の指だけじゃ足りないくらいなんです」
「姉貴止めてくれ! ただ無邪気だっただけだから!」
「特に、『ねえ、ちゃんと風呂入ってる』って友達から言われていたときに『おねえちゃんと? 普通じゃない?』と言った表情。友達が何も言えなかった私達の絆はどれほど」
「姉貴もういいから‼ もういいか! 授業も終わるしもう行くぞ!」
「私は思ったの、じょーくんの結婚相手にはちゃんとした人を選ぼう。世界中を敵に回してもじょーくんを愛してくれる、きゃふん! ああ、私は耐えられるかな?」
俺を愛してくれるのはありがたいけど、こんな風に時々暴走するんだよな~。
いいじゃないか、悪くはない。
いたって俺の日常だ。
これを壊すかもしれない、武衛大の一部、転校生、と、濃姫は違うことを祈りたいが。
もし敵と認めたら容赦はしないつもりだ。
「丈、アンタ変態だったのね! このロリコン!」
「信長様。可愛らしい方々ですね。もっと早く来ておけばよかったです」
「丈様、私のこの身長でも、体でも、濃姫様みたいに愛してくださいますか?」
……、普通の日常、だよな?
三人と合流した教室でなんとなく、頭上を仰いでしまった。




