第三十節 懐刀
前回のあらすじ
愛を受け止められない! 女性達の行動は想像以上だった。
俺は、長谷川先生に呼ばれたことでこれ幸いに逃げ出してしまった。
「で、君は何をしているのかな?」
長谷川先生、超ヒモ理論の発明者となっている彼女が俺の方を見ながら頬杖をついてジトッとした目を向けていた。
「なんのことだ、ですか?」
「実は自主練の授業を担当している先生から相談されていてね。『あの子は先生の知り合いらしいので私達に教えられることはほとんどありませんが、それでも授業をサボるのはどういうことでしょう?』ってさ」
これは、さっきの騒ぎがバレているっぽいな。上手くかわそう。
「俺はサボっていません。昨日遅くまで起きていてちょっと休憩していたときあいつらがうるさく絡んできただけです」
おきていた理由は超ヒモ理論にのっとった超能力の鍛え方についてだ。
少しづつ、昔の感覚を取り戻そうと必死だった。
「君はその言い訳がこの学校で通ると思っているのかい?」
「博士も分かっているのに、鬼ですね」
「私は今、先生だからね。学業が一番大事という指導をしないといけないんだよ」
「はいはい。適度にやりますよ、適度に」
今は髪をかき上げて真面目モードだ。心配してくれている、ちゃんと話を聞くと決めたばかりだしな。
「先生、夜のことについてはもっと言ってやってください。私も本当に困っているんです」
執務机の椅子に座るもう一人、もともと高校一年生であったが今は生徒会長になった姉である方後 舞が頬を膨らませて怒っていた。
……いまいち慣れないと感じるのは、俺は前世のように姉貴の立場を覚えているからだろう。
「姉貴も『遊んでいる』って何度も俺に声をかけてくるけど、大丈夫だから」
「もう、知らない!」
真智のせいで、一緒の部屋になったり色々あったけど、どうにかうまくやっているなと思う。
俺は、いきなり三年生でつまらなくなったと感じるんじゃない? と聞いてみたが、
『ううん! 友達が何十倍も増えたから嬉しかったわ‼ 例えば、バスの知らない隣の人とも繋がりを感じるもの‼』
『ああ、さいですか』
それはきっと、生徒会関係で敵対した関係者だろうな~。やり過ぎた方もそうだけど、ご愁傷様です。
姉の能力、いや、体質と言ってもいいものは、
≪女神のハエ取り罠≫といって簡単にいうとカウンターのカウンターである。
相手は最初仕掛けても発動することはない。でも姉貴が反撃したことで更に地獄に落とそうとするとダメだ。
その人たちについては、超能力を使ってはいないだろう。それでも自然に同じようなことをしているのは、恐ろしさがパないですね。
「懐刀、濃姫、さんですか。可愛い少女と常に一緒にいることだけでも、プンプン!」
ボソッとにしては長いその言葉を耳にしたとき、俺はどこまで知っているんだと驚いてしまった。
「姉貴達、図書館での会話聞いていたのか⁉」
「なんの事だ? ついさっき私が話した、君の能力について知りたいと言ってきたからね。使える中で一番、危険な刀だったはずだ」
それは刀唯一の、『懐刀』という人を指す。俺の≪武将刀召喚≫の範囲が広いことの証明だ。濃姫本人に確認したことがあるから間違いはない。
でも彼女の力は俺を簡単に殺す。裏切るかもしれない。
だから、これ以上日常を壊されないようにあまり出さないようにしていた。実をいうと、他の刀を使わない理由の一つにもなっている。
「おかしいよね~。信長の『懐刀』といったら朝山日乗のはずなのに。じょーくんは能力の勘違いをしているんじゃと思ったのもしかたないよ~」
嫌味。そうだ! 一旦ここで、前からのことも含めて謝った方がいいかもしれない。
「ごめん! 前々から色々隠してた。先生に相談する前に、姉貴に頼ることも出来たのに」
深々と頭を下げた。少しずつ少しずつ彼女の頬が萎んでいき、
メガネの奥から見える溢れんばかりの笑顔が見えた。
「う~ん、まあ良し! 全て許します! ほら、『親しき中にも礼儀あり』っていうから」
「舞さん、それ意味が違うかな」
え、と長谷川先生の指摘に姉貴はピタッと固まってしまう。あたふたと髪の毛をいじって、
「と、に、か、く。今じょーくんに必要なのは安全! だったら私の全力で協力することは姉の務め、だよ」
「ありがとう、姉貴」
「全然、全然だよ! それにそろそろ厳しいことばかり言っているとじょーくんを求めるゲージが振り切れちゃう」
「ん?」
最後に何か言っていたような気がしたが、まあいいか。
ぶんぶんと違うと手を振っている、今まで素っ気ない会話しかしていなかったけど、これで元通りに、
「ということで、じょーくんにはダブルデートをしてもらいます‼」
「ん? んんん?」




