第二十八節 濃姫
前回のあらすじ
もう、終わったことなんていいよね!
そんな感じで日々を過ごしていた。はずだったのに、
懸念が次々と積み重なっていく、今、この時も。
『え?』
「お久しぶりです信長様。最近呼んでくださらないので会いに来ましたわ」
「お、お前! 勝手に出てこれるのかよ!?」
「信長、様?」
「丈! アンタどこの誰とも知らない女の子を誘拐してきたの⁉ わざわざ学校にまで連れてきて!」
和服だし、明らかに、年下に見える少女が二人の間に顔を出した。ニコニコと、物怖じしない態度である。この学校の関係者とは思えないので、二人は混乱しているようだ。
同じだよ。俺も、一生関り合いにならないって決めていたのに。
だって、いつ殺されるかわからないから。
「世良、真智。落ち着いてくれ。彼女は俺の刀。【武将刀召還】で出てくる信長の嫁の濃姫さんだ」
「……嘘ですよね?」「アンタ、バカにしてるでしょ」
そうですよね~。いきなり言われても信用できないと思っていたよ。
自分でも、信長の嫁なのに俺と結婚しているという状況がまず意味不明だし。
「一応そうだとして、アンタはいつから信長の刀ではなくお嫁さんを召還できるようになったのよ」
疑問点、一番大事なことを世良が言ってきた。
「そうですよ! もう大昔から転生してきて結婚済みなんて、大大二股ですよ!」
『そっち???』
俺と世良はすっとんきょうな反応。どうやら、真智にとって能力の疑問はどうでもいいらしい。
でも、理由には思い当たる。彼女が俺のファンクラブの会長をつとめているからだろう。
真智を頂点とする、『丈様をきちんとわけあい隊』はそれぞれ皆『ハグ』ポイントを稼いでいる。
それを消費することによって、俺との会話時間が決められるらしいのだ。
噂では、『ハグ』ポイントは厳格でそれを消費したのに邪魔をした場合は、徹底的にシバかれるらしいよ?
もうこの学校では通貨の一部に昇格したらしい。背筋が、冷たいよ。
つまり、真智にとってイレギュラーを排除したいと思っているのかもしれない。
「あら、世良は丈様の力を疑っているのか? 丈様にできない事なんてあるわけないじゃないか」
「うぅ! 知っているわよ! いや、知らな、違うそういう意味じゃない。とにかく!」
世良が濃姫を睨みつける。いや、止めろ! この人に敵対するな!
「世良、攻撃は!」
「もう遅いわ!」
彼女の超能力【円定理】が動き出した。丸を押しつける力。丸の形を持っている物は等しく彼女の制御下に置かれる。
窓から入ってきた空中に保管してあった半円状に曲がった剣、ショテルが濃姫に迫る。火、風、水、土の属性を持った一つで何もかも壊す、破壊の一撃が。
「あらあら、私も少し覗いていましたけれど。あなたの武器はやっぱりちょっとした攻撃で撃ち落せそうなものなのですね」
「はァ? 負け惜しみ? 痛いだけじゃすまないわよ!」
「うるさい方ですこと。“タントウ”」
彼女が懐から刀を取り出したの見たとき、俺は過去がフラッシュバックする。
「濃姫、止めてくれ‼ 何でもしてやるから!」
「うふふ、なんでも? それなら少々手を抜きましょうか」
“タントウ”、濃姫が使っている武器は斎藤道三が与えた特攻武器だ。能力は、『信長の命を奪う』という俺にとって最悪なもの。
そうなのだとしたら、世良には本来の力は出せないだろ? と思う人もいるだろう。
違うのだ。ナマクラになったとしても、使い手は濃姫という、肝が据わった武将の妻であることに代わりはないから。
くるっと、俺の方を振り向く。俺はもう逃げ始めていた。
投擲‼ 真っすぐ俺の方に向かってくる!
「なにしてんの⁉」
驚いた顔をする。世良が言いたいことはもっともだ。実はこの投擲、目的は俺の動きを思い通りにするためだけ。
周りの物、本棚などに被害を与えたくないのであれば、逃げ道のコースに世良のショテルがある。
「だからやめろって言ったんだよ‼」
俺は、実休光忠を召喚。世良が攻撃を迷ったこともあり、簡単にショテルをたたき落とすことが出来た。
“タントウ”は俺が避けたときに地面に当たって転がる、ぱっと消えて濃姫の手元に戻った。
彼女はそれをごそごそとしまうと、口元を袖で隠して笑っていた。
「世良、なんで攻撃した⁉」




