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第二十四節 裏切りの刀

前回のあらすじ

俺は時間を稼いでいた。

それは、結局は無駄なのかもしれない……。いや、俺には責任がある!

一人で戦っているわけじゃないんだ!




 半円に曲がった剣、ショテルが全ての砲弾を防いでくれた。





 よって戦いは続いている、でも俺はもう、




 実休光忠の刃が折れた、これでは力を使うことはできない。他に頼ることも出来ない。




 あと、何分待てばいいのだろう。




 今は、普通の人間とまるで変わりがないんだ。



「よしよし、もう戦えないですか?」


 煙がまだ燻っている中、誰かがおよび腰で入ってきた。



「……金山先生、ですか? なぜ中に?」



「大丈夫かの確認です。辛いなら話をしましょう? 私がドクターストップかけましょうか?」


 囁きかけている、彼に従えといった弱気な声。



 もう頑張ったよ。休もう。勝てなくても勝倉達が帰ってこないわけじゃない。



 でも、彼に従うわけにはいかなかった。



 何で? と思わない。



 だって、彼が信用できないという人間と知っているから。



「いい。だってお前だろ? 武衛大に情報を流していた裏切り者は」



「? いったい何のことですか?」



「俺の刀、裏切り者相手ほど力が強くなるんだ。だから生徒会長にも勝てた。最初はなぜ生徒会長に勝てたのか分からなかったけど、でも刀が保健室に入った時、あなたに対してカタカタとなった。こいつは、本性を教えてくれた」



 そこからさき、御園生は弱みを握られていて二人で火事を引き起こしたりしている、グルになっていると理解した。


 たぶん彼女に、負けたら保健室に連れてこいとでもいったのだろう。


 実休光忠の性能を、聞くために。


 だから、恋人になったら少しは守れると思ったんだ。



「裏切り、ねえ。どうやら色々使い道があるみたいだ」



 爆風で掴んでいられなかった刀を拾ってこっちに近づいてくる。その顔は興奮しているようだ。



「これはあなたの刀でしょう? 大事に、体に身に着けておきなさい!」


 刀を持ち、勢いよく振りかぶった。


「くっ‼」


 左肩に刺さる折れた実休光忠、じわりじわりと血が広がって炎が侵食する。



「や、やってやりました。ひ、ひひひひひひひひひひひひ‼」



 遂に本性を表す。その目は充血し、先生の顔じゃなかった。



「金山先生、どうですか? 血を流しすぎていませんか」


 煙が晴れた。離れたところからメガホンで聞いてくる教官補佐。


 きっとこういっているのだろう。我々が戦っても大丈夫か、攻撃が通らないようならドクターストップをかけろ、と。


 つくづく、性格がねじ曲がっているよ。



「戦闘続行! 彼はまだ戦えるそうです!」


 観客に宣言する。


 すると、歓声が沸き起こった。


 観客はこれからの想定できない戦いに心を躍らせたらしい。


 震える会場、それに乗っかる悪魔。



「敵ながらあっぱれ! 宣言しましょう。あなたと私の一騎打ちを望みます。倒せなければ私達の負けでいい‼」


 更に、歓声が大きくなった。


 一騎打ちも何も、俺にはどうすることも出来ないことを知っているのに。


 戦車から降りてゆっくりと歩いてくる教官補佐。馬鹿だと思いたくて仕方ない顔をしている。皆を、俺を。



「ホントにお疲れ様。君には楽しませてもらいっぱなしだな」



「俺が? 何をだよ?」



 肩に血を出しながらよろよろと立ち上がる。俺の目の前に来た彼は、力いっぱい折れた刀を抜いた。



 グラっと痛みで意識が飛びそう。



 べっとりと着いた血を見て笑顔の教官補佐は、昔を懐かしむように話し出してくる。



「実は私も最初はね、いたって普通の感情の持ち主だった。言わなくても分かるだろう? この世界は男女平等、力も知能も平等の世の中だ」


 そうだ。俺が作った理論で世界を変えることが出来た。俺が想像した以上に。



「しかし、それにノイズが混じるようになった。君だよ‼ 男でありながら超能力も使える‼ 死んでほしいとどれほどの人が思ったか!! 男はね、君に全部負けたんだ。潜在能力という絶対的なもので、鍛えても、もうどうしようもないんだ‼ だからね」



 センサーではなく、心臓に狙いを定めてきた。俺はそれを、ただ見守ることしかできない。



「バランスを正すことを望んでいたと今になって思うよ。よって心置きなく、皆の希望のため、死ね‼」


 止めようとした。でもその手は空を切る。目の焦点が定まらなかった。





 あっけない死に方だな。






 こんなことなら、姉貴を助けに行かせずに、最後くらい、世良と一緒にいたかった。







 あれ? 俺って世良って呼んでいる。よかった。最後まで幼馴染なのに名前で呼ばないのは心残りになる。






 それが、言えていたなら、


 後悔は、ないかも。







 キィィィンンンンンン!





「待たせたわね!」



 刀が弾かれた、彼女達は、



「私の可愛い弟を、覚悟してください!」


(……間に合った)



 待ちに待った背中が、霞みがちな目に見える。


 遅いぞ。世良、姉貴。


 勝機が望める。ここから!



 手には力が、わずかにこもり始めた。



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