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第二十一節 戦いの幕があがる

前回のあらすじ

世良に相談した。結果、

超武戦で全てを取り戻す!

覚悟をしっかり胸に抱いて

超武戦、試合当日。


 峰空高校の演習場はかなりの熱気に包まれていた。


 ここに来てから初めて感じる空気で、少し襟元が気になってそわそわする。


ふ、体操服にはないと思っただろ? なんと今日から唯一無二、急遽作られた男性用ジャージを着ているんだ‼


体操服と違って襟があるんだなこれが。デザインを凝っていて結構いいし。俺の気持ちを静かに、上げてくれる。


 


 そんな今は控室。他の同級生も一緒だ。


 超武戦は武衛大の学生と二年、一年、三年同士で行われる。現在進行形で二年同士の対決が行われ、決着はあと少しだ。


 プログラムには書いてあるが、勝負する項目は当日まで知らされていなかった。


 二年はチームを組んでの勝ち残り対決。そして一年は、



「みんな! 悔しさは覚えてる? 私達を馬鹿にした武衛大連中を‼」



『はい‼』


 気合を入れる。この試合に向けて正しい努力を彼女達はしてきた。


 長谷川博士と自分が考えた練習メニューに泣き言も言わず、


 何度、何度保健室に俺が運んだか分からない。


 そのたび、目に涙をためながら練習という名の地獄に戻ってきた。


 仲間達と、支えあって。


 元々勝利には貪欲だった彼女達だ。今の三年よりも強くなっていると太鼓判を押してやるよ。



「長谷川先生方、それにコーチからひと言お願いします」


 いつの間にか、剣神の位置からコーチに定着した俺。長谷川博士以外の先生がオマケみたいでちょっと悔しそう。


 振ってきたのはうちのクラスの学級委員長だ。


 あ~、口には出さないが俺達、結構先生達に苦労をかけたんだ。


 先生達の鼓舞するセリフを肝に銘じておけよ?


 その中で理論の研究に先生としての仕事など特に大変だったと思う、長谷川博士が話し始める。



「試合はこれからだが君達は峰空始まって以来の完成度の高いチームになったと思う。誇りを持ってくれ‼ そして観客に認めさせてやれ。君達が強い証を‼」



『はい‼』


 最初から真面目モード全開、これは、下手なこと言えないな。


 そして、番が回ってきた。



「取りあえずはおめでとう。よく辛い練習に耐えた。後は笑うだけだな、本番は気負う必要はない。……楽しんでほしい」


 もちろん、友達が捕まったことは言わない。混乱するのは避けたい。


 きっと何かが起こって、彼女達を失望させてしまうかもしれないけど。


 俺は全て丸く収まるなら、それで構わない。


 最後の言葉は金山先生による連絡事項だった。



「いいですか生徒の皆さん。これはあくまでも大会であります。死ぬまで戦えという先生は一人もいません。ですから、ジャッジである私のドクターストップはちゃんと聞いてくださいね。君達なら絶対に勝てますよ。頑張ってください!」



『はい‼』



 円陣を組み、学級委員長が声を張り上げる。



「私達の超武戦は様々なギミックがある中での防御戦、武衛大の進行からターゲットを守り相手を戦闘不能にすること。信頼しているわよ!」


 委員長を守ることにホントに悪意がある、運営と武衛大が繋がっていると勘ぐってしまいそうだ。


 だって、『絶対に勝つ』というほうが無理だ。さすがに、相手が俺に委員長を切れといったらすぐに負けるだろう。


 それにこっちは特定の目標というものがない。相手が諦めるか、全員戦闘不能が条件だ。



『プログラム第二部、一年生同士による目標防御戦を始めます。一年生は会場に入場してください』



「行くぞ‼ みんな‼」


『よし‼』



「方後くん、ちょっと」


 彼女が一声かけたとき、長谷川博士に呼ばれた。近くに寄るとひそひそと俺に耳打ちする。冗談を言ってくる雰囲気ではない。


「捕まっている場所が分かった。武衛大のオンボロ掘立小屋だよ」


「ありがとうございます。いいですか、ちょっと彼女に会ってきます」


 控室から一般通路に向かう。博士は神妙に頷いてくれた。


 通路を歩いている、途中、


 誰かが並行して足並みをそろえてきた。


「俺と会う余裕があるのか、リク」


「いやいや、これでも部下や上司の目を盗んでここまで来たんだよ。君と話がしたくてね」


「俺はしたくないけどな。お前達とは」


「イラついているのは知っている。俺も止めたんだけどどうしようもなかった。それで、お詫びといってはなんだが追加情報を持ってきたよ」


「は、それを信じろと?」


「聞くだけでも聞いてよ。生徒会長、彼女がおかしいことは知っているよね? 君が睨んだ通り、ある人物から弱みを握られている」


「だろうな。で、そいつを教えてくれるのか?」


「そのことは話せない。【世界の薬(カウサル・メディスン)】のデメリットでその主人公(ヒーロー)の名前を伝えることが出来ないんだ」


「役に立たないな。なら、脅されている内容も言えないのか?」


「それは大丈夫。彼女は家庭内暴力を受けていた母を救うために過去を変えたんだ。けどそれが、矛盾になってしまったのが今の状況なんだよ」


 合点がいく。つまりその矛盾を多くの人に知られたら、世界に消されるということだろう。


「つまり今の話を参考にして、その主人公とやらの正体を俺自身が考えるしかないってことか? それってお前はどうやって知ったんだよ?」


「君も生徒会長に選ばれた、主人公(ヒーロー)だから。それで教えられないって思ってくれていいよ」


「聞いてしまったら?」


「彼女は人間をやめてカエルになる」


「魔女かよ。あのさ、俺の力で元に戻らないと思っているのか?」


「……、君は超能力に利用されていないと僕は思っている。それに健気じゃないか。例え君が失敗しても彼女は恨むつもりはないんだ。柄にもない、良い思い出を作りたいとばかりにバスデートを手に入れたようだし。もしかしたら、彼女なりの最後のデートだったんじゃない? それに」


「それに?」


「ここまで話しておいてなんだけど、君もう正体は分かっているでしょ?」


「どうかな」


「ほんと、調査しがいがあるよ」


 リクは風景の溶け込むように、分かれ道に消えていった。


 今までのことを振り返った。


 彼を信用すれば、話は繋がってくる。敵の主人公様の目的も姿も。


 話し終わったすぐ近くに、壁に寄りかかっている世良が今か今かと待っていた。



「どう? 場所は分かった?」



「入って奥、グラウンド近くに今にも壊れそうな掘立小屋がある。そこに捕らえられているみたいだ。案内無しでもわかるか?」



「大丈夫。来なさい‼」


 世良は俺に触れて集中するように目を閉じる。なんだよ⁉ という前に円武器が、現れた。


「じょ、丈の行ったことのある道は、この子が把握している‼ べ、別にストーカー出来るとか深い意味はなかったからね⁉」



 ちょっと目線があっちにいったりこっちにいったりしている。何も言っていないのにこの慌てよう。


 いや、待て。今コイツに余計なことをすると、不味い。


「分かっているさ。よし‼ 救い出せたら知らせてくれ、そこから反撃開始だ!」



「う、うん! ねえ、丈」


 きれいに流せたと思ったら世良が後ろを向く、胸の前で手を祈るように組んでいる。



「私、きっとやり遂げて見せる。そうしたらあなたにもっと素直になるわ。あなたを支えるために、ずっと」


 ぼそぼそと聞こえないぞ。何か大事なことを言っているのか。


「世良、なんだって? 絶対にやり遂げて貰わないと困る」


「もう! 一緒に頑張ろうってことよ!」


 こっちを向いて怒ってくる。なぜ?


「さっさと行ってきなさい! 早く、ほら!」


 せっかく気を使ったのに。結局こうなるのか。


 しかたない、取りあえず準備は整ったからそれで良しとしよう。



 武衛大、覚悟しろよ。最後に笑うのは、俺達だ。


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