第一節 凶暴な幼馴染に偽ることは
ここに、これから前回までのあらすじを書きたいと思います。
評価など、よろしくお願いします。
「だぁぁぁぁぁぁ~短縮だりぃぃぃぃぃ。いつもよりだりぃぃぃぃ~」
勝倉が叫びだした。短縮が彼の心にストレスを与えているらしい。
心が多分、この雰囲気にみしみしと締め付けられているのだろうか。かわいそうに。
「叫んでも変わらないぞ~昼休みも短縮なんだ。暇だし嬉しいだろ~」
俺は屋上の手すりに顎を載せながらだらけている。
現在、俺、方後 丈は屋上で友達である倉勝の愚痴を聞いている。その悩みはこの青天に溶けていくほどちっぽけだ。
でもちょくちょくガス抜きしてやらないとコイツは授業中おかしくなる。とばっちりを受けるぐらいなら付き合ってやるくらい問題ない。
「そもそも短縮ってことは帰る時間も早くなるんだ。悪いことじゃない」
「部活が出来ない短縮なんて早く終わる意味なんてないぜ!」
「そうか、俺は部活に入ってないから楽しさなんてわからない。だからラッキーだと感じるけど」
「お前の場合は赤点取りすぎて部活に入れなかったからな~」
「そう、だから俺には関係ない」
風を感じる。今なら鳥になれそうだった。しみじみと、目を閉じる。
開けた。校庭の風景が飛び込んでくる。どうやらサッカーをしているらしい。きっとスタートダッシュで校庭に一番乗りした連中だ。
今日は男子対女子らしい。いや今日も、か。
それは、SNS映えしそうな光景だった。
男子が必死にボールを持っていてそれに女子が体をぶつけて奪おうとしている。女子に気を使っている人は一人もいない。
あ、女子がボールを奪った。彼女は空を、空を……飛んだ。体を回転させて勢いをつけている。
そのままボレーキック‼
男子のディフェンダーはヘディングで立ち向かう。三人ぐらいボールに弾き飛ばされていったがキーパーの元に届くころには勢いはなくなり止めることが出来た。
男子の反撃が始まった。最終バックがそのまま味方を囮にして女子のゴールに向かっていく。
女子のワンツーマンが仇になったのだ。サッカーの基本戦術は男子が一枚上手だ!
とっまあ、ほんの一昔前だったらお金を払ってもみたいと思ったことだろうな。
超能力。
といわれる、この女子の現実離れした不思議な力は二十年前にある物理学者が『女性が持つ超能力について』という論文を世界に発表したことで定着したものだ。
世界中その理論に半信半疑だったが、少しずつ、国が軍事利用に使うようになると一気に広まっていった。
今では女性はサイコキネシスなどの超能力を持ち、男性は体の屈強さを持つというのが当たり前だ。
と、思われているらしい。
俺は知っている。この理論が発表されたのは俺が中一だったほんの一年前だ。流行ったばかりといった方が本当は正しい。
きっと女性の誰かが、時間を捻じ曲げたんだ。
なんで断言できるかって? これには、いろいろと訳がある。
「おいおい、丈よぉ。大人しいじゃねえか? 考えすぎなんだよ。もっと気持ちを吐き出すつもりで声を出してみろ! あぁ~亜香里ちゃ~ん‼ アイラブユー‼」
勝倉が校庭でドリブルしている女子に愛を伝え始めた。
彼女、物凄く嫌そう。
気持ち悪いよな。俺も、そう思う。
「それはそうと、お前って夏休み井谷とデートだって?」
「違う。姉貴のオープンキャンパスの道連れだ。井谷と俺の姉が友達だから一緒に行くだけだ」
姉貴、方後 舞は俺の姉だ。似ているかといわれるとそこまで。仲はまずまずと言っておく。
「いいよなホントに。美人な姉と可愛い幼馴染。二人を抱えながらデートなんてさー!」
「だからオープンキャンパスって言っているだろ‼」
話をちゃんと聞いちゃいない。会話が一方通行だ。なんでだろう。俺の言い回しが複雑なのだろうか?
「丈。友達だろ? お願い連れ」
「やめとけ! お前この前もそれ言って姉貴に避けられて、井谷には殺されかけただろ⁉ ああいうやつらには無理に関わらない方がいいんだよ。俺達凡人は特に」
「ああいうやつらで悪かったわね!」
あ~、噂するとってやつか。井谷 世良、ご本人の登場だ。
整った顔立ちにピンクのツインテール、瞳は情熱的な赤、彼女は俺達を睨みつけて腰に手をやっているが子猫のように可愛らしいので少し悪戯してやろうという気になってくる。
学校指定である紺色のセーラー服に身を包みリボンが清楚な印象を与える白、袖などを少し着崩してぶかぶかにしているあたりちょっとした色気が出て男子は気になって仕方がないらしい。
「いい? 将来を約束されている私と姉様がどうしたらもっと社会に貢献できるか。日本一の超能力者の高校『峰空』がそれに当てはまるのか、それを確かめるために行くの。別に、無能力である男子となんて」
顔が少し赤くなっている。きっと大声でデートデートと連呼されたので恥ずかしかったのだろう。急に俺達の話に入ってくるぐらいだ。それしかない。
「悪かった。ごめん」
言い訳はしない。ささっと謝ったほうがいい。じゃないと、彼女に関わらない方がいいといった理由が飛んでくる。
雲の上に保存されている半円状に大きく湾曲している両刃の剣、ショテルが。
もうそろそろ昼休みも終わるし、早くこの場から離れたほうがいい気がする。
「じゃあ俺はそろそろ……」
間が、悪いのだろう。いきなり突風が吹いた。他の女子生徒がスカートを押さえる中、井谷は意識が別の方に向いていてとっさの行動が出来なかった。少し、ほんの少し、
パンツが見えてしまった。
「く、黒……」
馬鹿め。勝倉、口に出すな。死ぬぞ。
「きゃっ‼ は、はは。許さない。許さないわよ‼」
シュシュシュン、ピタ。
あまたの数ある剣が、それぞれ属性を帯びながら俺の頭にピタリと標準を定める。
「ひぇぇ」
勝倉にも飛んでいったらしい。振り向きたいのはやまやまだが少しでも動くと貫かれそうだ。
不可抗力なのに。はあ。
「井谷。お前は社会に貢献したいんじゃなかったのか?」
「う、うるさいうるさい‼ ホンットに、アンタ運がいいわよね! 姉様の兄弟じゃなければ殺してやるのに!」
彼女は、口がよく動いていた。さっきから自分に言い聞かせるみたいに。
あまりの剣幕にもう何を言っているのか分からないけど。
俺はもう事が収まるのを諦めて額に向けられている剣を掴んだ。
「くぅううう‼」
体に電流が駆け巡った。激しい痛痒さになるのだろう。剣は遠くに投げ捨てるが……もう普通なら死ねるよ。
「え⁉ 触っちゃ」
井谷はこちらに手を伸ばす。でも、はっと気づいて手を戻した。
まったく、後悔するならやるなっての。
「じょ、丈? 大丈夫か?」
降参したように両手を万歳している、勝倉の泣きべそが的確に現場をものがたっていた。
男性が暴力をふるったら罰せられるのと同じように、女性が超能力を使って怪我をさせても罰せられるのは変わらない。
それでもこいつだから情状酌量、だろうな~。別に法に訴えたいわけじゃないし気にしないけど。
そう、それでいい。
だって俺はほとんどダメージを負っているわけじゃないから。
「気は、すんだか? 勝倉! 宿題が残っているから先に教室行くぞ!」
「……わ、分かった」
歩き方はあくまでダメージを負っているかのように、このことがよっぽど、罪悪感が残る。
彼女は再び手を伸ばそうとした。でもまた引っ込め、胸を押さえて涙目になっている。
どうしてこんなことに、それが、ひしひしと伝わってきた。
でも悪いな。どうしてもこのことは秘密なんだ。
俺が自分で開発した、超能力が使えることは。
八時に毎日投稿したいと思います。




