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第十六節 超能力理論とその訓練内容

今は午後九時、あの掘立小屋にいる。ミーティングルームなんてないから雑魚寝の所で反省会だ。


 そこで俺は先生や生徒の前に立って、一身にその視線を受けていた。


 緊張してしまいそうになるが、ここで自信ない態度をとってしまうとダメだ。


 俺は息を吸い、自分がぱっと思ったことを口に出すことにした。



「さてみんな、お風呂や夕ご飯で頭をリセットできたか?」



「いいえ、何故か武衛大用と峰空用に分かれていて、時間も押していましたからある男子が女子風呂に入ってきました」



「それにご飯は席取り合戦があったと思います。誰かさんが私達をどうやって高みに連れていってくれるのかを聞きたい人で」


 うん、うんと女子生徒が頷く。


 やべ、藪蛇だった。風呂は~見えなかった。そう見えなかったぞ。ちゃんと目隠しをされていたし女子生徒が入っていない湯を使った。


 夕飯は知らない。今アドバイスするから気にしないでほしい。



「ごほん、まあそれは置いておくとして本題に入ろう。俺達一年生は昼間、武衛大の作戦に引っかかった。それはなぜかわかっているか?」



「実力が足りなかったからって言いたいの?」



「彼らが卑怯な連中だったからよ!」



「いいや、違う」


 俺は武衛大から無理矢理借りたホワイトボードを使って今回の敗因を書く。



「簡単な話だ。俺達は内と外、両方の情報が不足している。あの戦いだって交換大使がいるからどういう作戦の傾向があるか聞いておけばよかったんだ。超能力を鍛えるやり方もみんな、勘違いしていると思う。しかしこれは、完全に国が悪いけどな」


 そう、全て国が悪い、ひいては俺が悪いんだ。



「じょうほーが足りないのは分かった。でも、訓練内容については先輩達だって同じ」



「そうです。私達のやり方でみんなレベルアップしていきました。これでも間違っているというのですか?」


 女子生徒と学年主任が異を唱える。いいや、違うんだよ。



「それは自分に合った生徒限定です。いいか、超能力は超ヒモ理論というもので成り立っている。その次元をまとめたのが起点、空間、創造だ」



 ボードに書く。三つを三角形の頂点に書いてそれぞれに丸をする。



「俺達が住んでいる世界の成分だ。電気回路はわかるだろ。この世界の成り立ちはまさしく電気回路なんだ。電流(創造)が回るためには、スイッチ(起点)、電線ケーブル(空間)、が必要。つまりスイッチでオンオフを制御、空間という体などの入れ物を用意して、エネルギーを循環させる。それで超能力の力を引き出しているってことだな。はい、ここ大事だぞ~。テストに出すからな~」



「て、テストですか。はわわ⁉ 私自信がないです!」



「相手にしない方がいいよ。こいつはそもそも学生だから」



「あ、そうでした。なぜか威厳を感じてしまって」



「確かに。何故か説得力があるわよね」



「はいはい。お喋りは後にしろよ」



 説得力があるのは完成させた理論のパーツを一つずつ証明して積み上げたからなんだが、言っても信じてくれないだろう。


 取りあえずは話を真面目に聞こうとしてくれている、いい傾向だな。第一関門は突破しているとみていいだろう。


 意味を理解してくれたら進んでやる生徒達だ。これは教えがいがあるぞ。



「ここで躓くのは電流が機械を動かすものだから創造も物理の学問である電力関係の考え方だと思う人もいるだろう、でも全然違う。創造、起点、空間はそれぞれ力を持っている。例えば空間を使って説明される超ヒモ理論では起点と創造がスイッチとケーブルになっているんだ。よってこれを深く知るために一旦、これを分解してみよう。超ヒモ理論は九次元の理論。人間も九つの次元に住んでいると証明されている。その次元量を増やしたら、自分の能力は増える」


 この構成能力を三つずつに分ける。ボードには丸の下に書いた。



 創造―時間 意識 エネルギー 魔法



 起点―始点 中点 終点 錬金術



 空間―縦 横 高さ 次元超能力



 ダダダとホワイトボードが埋まっていった。



「なぜこの九つなのかと全員疑問に感じていると思う。超ヒモ理論で形にすると理由は、全部ヒモとして見ているんだから『長さ』が単位に入るからだ。と、理論確認はここまで。ここからさっきの話の続きだ。まずは自分のタイプを知ること。いっていることわかるか?」



 女子生徒達は皆一様に話についていくのがやっとという感じになってしまった。だろうな。これ長谷川博士でも一気に呑み込めはしなかったし。



「要は自分のタイプ、空間的次元能力なのか、空間的魔法なのかそれともってことを判断することだ。基本、縦、横、高さの次元を鍛えれば確実に結果が出る。だが、空間は人間が認識できる都合上成長に時間がかかる。でも創造、起点の次元は量的に少量で世界を作っているから鍛えれば莫大な結果を得るときがあるんだ。言っとくが、同じ能力だと思って同じタイプとは限らない」


 なぜなら起点的次元能力とかも存在する。理論が全く別になるから彼らには関係ないが、しかし超ヒモ理論は別な理論の存在も予言しているんだ。


つまり、俺が作った超能力理論は超ヒモ理論にのっとって使用できる異能の力ということ。まあ、今は言わなくていいだろう。


 俺にできるのはここまでだ。あとは、少しずつ研究していくしかない。



「これ、本当なの? 本当にこれを鍛えれば強くなれるの?」



「保証はする。するかしないかはお前たちしだいだ」



「方後君。これは、もし本当だったとして誰に聞いたんだい? 私達でも知らないことが沢山あるんだが」


 あ、やば。正直に答えるなら『自分が開発したんで分かります』という事なんだけど……。


 あまり理論に触れすぎた。公表はしているし安全だと考えていた。どうする……?


 すると真面目な顔で大人しく聞いていた御園生が助け船を出してくれた。



「実は、これ長谷川先生に特別に教えて貰ったことなのよ。だから安心していいわ。私達も生徒会として公表しよう思っていたの」



「え? そうだったのですか生徒会長!」



「そうですか! 長谷川先生が!」



「ちょ、ちょっと待って。私は」



「長谷川先生、これでもっと私達強くなれるんですよね!」



「……うん。でもその理論は私が君たちのために聞いたわけではないんだ」



「なにいっているんですか‼ あの匿名博士から話してもいいと言われていたから私達は聞けた。それだけで十分です!」



「これで大丈夫ね! 私、明日から頑張る!」



「目標も決まったし、明日から気合入れていこうみんな!」



『お~‼』


 さっすが、匿名博士の知り合いという名は伊達じゃなかったみたいだ。ありがとう、御園生。


 顔が曇っている。別々の気持ちが揺らいでいるように見える。けど今はそれより、



(丈くん‼ これは貸しだからね‼)



 遠くで目をつかって訴えてくる博士。もともと他人の力を自分の物としてひけらかすのは好きじゃないのだ。超能力理論の平和利用だって俺にやって欲しいと思っているくらいだからな。



 だけど、博士の名を出したらやってくれる気になったようだし。結果オーライだろう。




 今から、試合が楽しみだな。



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