第十五節 宣誓
「言いたいことがあるが取りあえず、お前を全治一か月の怪我にしても構わないよな?」
刀で押し返した、相手はいったん距離を取る。
そこに教官が抗議を始めた。作戦通りと思っている心の中が透けて見える。
「おやおや、長谷川先生。一対一の戦闘に水を差す生徒が出ました。これを尊重して、私達も一人追加していいですかね?」
「何言ってんだ、卑怯な教官野郎。元々この戦い、一対一じゃなかっただろ?」
俺が口を出す。え、どういうこと? 峰空の生徒たちがざわめき始めた。武衛大の先生は眉をピクっと動かし馬鹿にしたように笑う。
「おやおや、それはどういうことだ?」
「今隠れている鏡を持っている生徒、そいつが太陽の光を使って信号を送っていた」
「先生! どういうことです⁉ 一対一の戦いのはずでしたよね!」
長谷川博士が生徒を見つけた。なにをやっていたか気づいたようだ。
「おっしゃっている意味が分からないな。私は指示を出していない。偶然そうみえたということだろう?」
「なら、アンタ達のメンバーを調べさせろ。スマホで計算している奴がいるはずだ。今の練習は団体訓練だろ、スマホは持てないはずだよな?」
「う……くくく、ええ。よく気づいた。さすが男子生徒! 女子生徒よりも賢い」
「先生、これがあなた達のやり方ですか? ことによっては重大な侮辱で上に報告しますよ!」
「峰空の先生方、あなた達は理解していないようだ。私達は上の方から『勝てると思ったら何でもあり』と教わっている。これはほんの小手調べだよ」
峰空学年主任の怒りを緩やかに受け流し武衛大の先生は涼しい顔だ。
「さあ、まだ試合終了とは宣言されてはいない。うちの生徒諸君! さあ、やるのです!」
「先生、待ってください!」
「どうした?」
武衛大の先生に不良崩れが何かを耳打ちした。すると理解した瞬間、悔しそうな顔に変わる。
「どうした。誰だろうと相手になってやるぞ」
お前らにはうちの学級委員長にしてくれたことを、倍返しだ。
「ふん、今はまだ君がこの学年最強と認めよう。でも、超武戦はこうはいかない」
「いくら手段を増やしても、俺達峰空が格の違いを分からせてやる」
「ははは、いくら威張ったところで峰空の前時代的な練習では全く力は伸びない。精々無駄な努力をしていればいい」
「お前らこそ、あまり俺達を舐めるなよ。宣言する! この学年を峰空きっての最強集団に育て上げてやる」
武衛大、お前らは俺を怒らせた。
今日だけじゃない。お前達はダイヤ事件での火事の首謀者とつるんでいる。そのかなりの裏切りに、俺の刀がカタカタとなっているんだ!
その宣言に、周りは大きくどよめいた。
長谷川博士はガッツポーズで嬉しさを存分に表し、
峰空生徒はその宣言に淡い期待を持ち、
武衛大生徒は危機感をあらわにする。
「く、行くぞお前達!」
武衛大の面々、彼らが使っている使用グラウンドに去っていく。
「勝者、武衛大の棄権により峰空高校!」
「やったぁぁぁぁぁぁ~~~~~‼」
戦いに恐怖を持ってしまいそうになったのだろう。少し泣いている生徒もいる。心の底から嬉しそうだ。
ええと。少し熱っぽい視線を感じる。
その視線はきっと、彼女達が成長したがっていることの裏返しだろう。
「丈くん。今の宣言は本気かい?」
真面目モードの長谷川博士が声をかけてくる。
うるさい、分かってるよ。
「ああ、暇な時間に訓練内容について研究だ」
「よし! 学年主任には私から話しておくよ」
「頼みます」
学級委員長に駆け寄っている生徒たちを見ながら強く思う。
これで、俺の罪は消えるだろうか。別に俺自身が強くなりたいわけじゃない。でも、作ってそのままだった自分自身に嫌気がさしたのだ。
守りたいものを守る。それでさらに不幸が生まれるのなら、それはおかしい。
研究は辛い。完成させた自分だから理解している。なのでそれに見合う形で彼女達にはしっかり強くなってもらうつもりだ。
それではまず、どういった切り口で組み立てていこうかな?




