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第十四節 卑怯な手

「ではこれより一対一の模擬戦闘を行います。峰空から……」


 それぞれの陣営から名前を呼ばれた出場者が前に出る。今回は、それぞれのランキング百位同士の対決だ。


 出ていくのはうちのクラスの学級委員長。知らなかったが、≪序決百位≫らしい。


 そして対面するのは、不良崩れではなくバスに降りた直後にであったあの嫌味教官補佐だ。


「ルールはシンプルです。ギブアップを宣言して、敗北を認めさせればその時点で勝利になります。ただし、相手の生死に関する攻撃は避けること」


「それではよろしくお願いします」


 優雅にお辞儀をするイケメン野郎、見た感じ、きっと彼が武衛大のリーダーだろう。


≪武決百位≫という順位、俺は序決しか知らないのでお互いのランクが同レベルということはないかもしれない、それも、この戦いで基準がわかるだろうな。


「ふふ、そこまで痛い攻撃は出来ないのね、優しくしてあげる!」


 学級委員長、俄然やる気だ。



『委員長、私達の分までやっちゃって!』



「一斗! 落とし前をつけさせな!」


 お互いの陣営から声援が飛んだ。


 大丈夫、委員会決めで俺の代わりに学年リーダーに指名される女子だ。戦闘態勢も素人目だが落ち着いている。


 すると、


「それはうれしいな。でも君も本当にラッキーだったね。言い訳できない負け方が出来るんだから。後ろの生徒みたいに勝てる願望を見なくて済む」


 ピクっと学級委員長が反応した。



「では、試合開始!」



「食らいなさい‼‼」


 炎の塊、パイロキネシスで作られたファイヤボールがゆっくりと飛んでいく。


 委員長、素が出ているよ。それに、


 能力で勝てるほど甘くない、俺は知っていた。


 あの交換大使からもらったメモによれば、これは相手の常套句だ。



「君達、超能力の色々な評価は詳しく調べたりするのかい?」


 一年のリーダー、一斗は数歩後ろに下がった。それ以外に全く動きはない。



「私の能力は私が一番知っているわ! 少し強く放ったからかすり傷じゃすまないわよ!」


 少し余裕がある委員長。射程線上にいるから絶対に当たる。女子生徒は全員そう思っただろう。


 当たらないな、俺は冷静に分析する。


 一人一人分析してあったメモには彼女が冷静ではないときの飛距離、良くて数メートルと書かれていた。


 消えるファイヤボール。まるで、超能力で止めたみたいに。



「え、どういうこと⁉ もしかして武器を使った?」


「さて、どうでしょう?」


(相手に道具を使ったと思わせる、いくら放っても届かない。それが彼女にとって無駄を自覚させる要因になると。明らかな戦意喪失攻撃だな。でも、妙だ)


 確かに情報を持っているから、避けることは可能。でも、飛距離はその場合場合で誤差があるはずだ。


 なのにあの直前で消えているのは、


 誰か計算している人がいるな。


 俺は相手陣営に視線を巡らす。おかしな行動をしている人がいる。


 試合を見ずに、生徒の影に隠れて鏡を見ている!


 普通は授業に興味ない生徒と捉えられるだろう。でも太陽を峰空関係者が見づらい壁に反射している、これは光を使った信号だろう。


 訓練の裏をかく、これが何でもありという武衛大のやり方か。



「どうしました? 戦わないんですか? ははは‼」



「もう、もうやめて……」


 委員長は力を使い果たして諦めてしまっていた。教官補佐に殴られている、顔だろうが容赦なかった。


「せ、先生。もう彼女は戦う意思はありません。私達の負けでいいですから」


 学年主任が諦めの言葉をいってしまった。でも、


「いやいや、もしかしたら漫画みたいに超能力で逆転をするかもしれない。それに彼女は降参と言っていないな」


「もうやめてよ! 明らかにおかしいわ。私が助けに行きます!」


「長谷川先生、それは先生も参加していいと。だったら私も加わりたいですな。一人加わるのなら一人加わってもいいでしょう?」


 長谷川博士がうっと弱気になる。相手は引退したとはいえ本職の自衛隊教官、どういう事態になるかわからないのだ。


「最後です‼ 食べたものでも吐き出して無様に這いつくばりなさい」


「きゃあああ!!!!!!!」


 仰向けに倒れたお腹に大きく振りかぶるかかと落としが迫る。委員長は涙目で目を閉じてしまった。女子生徒達も酷いと目をそらす。


 でも、俺は違った。


 戦闘に飛び込み、刃を教官補佐の足に滑り込ませ、受け止めた。


「……出てくる勇気があったのですね。唯一の男子学生さん」




 砂煙が舞う中、俺はこいつと決着をつけないといけないことを刀から教えて貰った。



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