第十三節 自分の無責任さ
前回のあらすじ
バス移動一つにとっても波乱があるのは当たり前⁉
なんとか武衛大にたどり着いたが、相手の態度が悪すぎる。
でもしかし、聞こえてきた捨て台詞の意味はなんなのだろうか?
さっきの掘立小屋を見たから感じることかもしれないが、
訓練場は普通。なだらかにされていて、キレイに整備されているのが分かる。
これなら、安心して訓練できるだろう。グラウンドを区切って、同じ一年生と思われる武衛大の学生は団体訓練をしている。
まだ一年なのにここからでもわかる。一糸乱れぬ組織訓練だ。
それに触発された御園生生徒会長が大きな声を張り上げる。
「いいですか皆さん‼ これから基礎訓練を行います。準備開始!」
『はい!』
そういえば、俺ってみんながどうやって訓練しているか見たことないな。
実をいうと峰空でやると思っていた、超能力の効率よい使い方という授業はまだない。いわれたのはそれこそ、どれもこれも個人の能力を高めろという内容である。
いわゆる部活だと筋トレみたいなことをしろという事。それが一番戦闘では重要になるのだ‼ と。
(俺はその時間、隠れて寝て過ごしていたけどさ)
だって一人で練習してもいいってことだったし。複数だろうが個人だろうが成長できればいいらしい。
そんなことは横に置いておいて。
でも、なにをするのだろう? 開発した自分でも基礎訓練方法というのは詳しくは知らないのだ。
「では、放て!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドン!!!!!!
火、水や風などが対面の女子生徒に放たれる。大丈夫だろうか。当たったら痛いだけでは済まなそうな気がするが。
「ハァ‼‼‼‼‼」
それを、身体強化系はかき消した。他の能力者も各々の超能力で同じように対応している。
ん?
「よし! どんどん続けなさい!」
『はい!』
いや、待て待て。
「長谷川はか、長谷川先生。ちょっと」
「どうした~」
「どうしたもこうしたもない。なにこれ?」
「見た通りだよ~。訓練訓練」
嘘、こんな訓練していて能力が伸びるわけないだろ⁉
「もしかして~。こんなよくわからない訓練しても伸びないっていいたいのかい?」
「分かってるのかよ……。だったら今すぐ別メニューに変えろよ」
「それが学校はこれで伸びるっていうんだよ。経験から正しいって言われちゃった」
経験って、使っていれば能力が伸びるってこと?
俺が開発したのはそんな使用回数で伸びるようなものだったのか!
あまりに適当すぎないか。
てっきり、超ヒモ理論の構成成分に則った、革新的な訓練だと思ったのに!
『この学校は能力に頼り過ぎている』
あの公認スパイが言っていたことがやっとわかった。
「はは! どうしたんだ? 練習をしに来ているんじゃなかったのか? それでこの四日間少しでも強くなるのかよ?」
そこに交代で休憩していた武衛大生徒が茶々をいれてくる。結果どうなるかは知っているようだ。
「うるさいですわ! 喋っている暇があったら無駄な努力をしてください!」
『そうよ、そうよ‼』
「なんだと!」
「よせ、かまうな」
武衛大の仲間が必死に止めるにもかかわらず一人がちょっとしたことで怒りを爆発させる。
「待ってください、勝手に来ないで!」
「まあまあ、いいじゃないか御園生君」
不良っぽい武衛大生徒が峰空の使用しているグラウンドに来たのを皮切りにそこに二つの陣営が集まる。
にらみ合う両者。本来、いくら二十年前に超能力が入ってきたからといってここまで武衛大の精神は幼くならない。
しかしもともと入隊する人が減っている状況化で超能力という女性の躍進により、苦肉の策として素行の悪い人間を入れるようになっていったのだ。
嫌になるけど、たぶん、俺のせいだと思う。それに、
超能力の効率的な鍛え方だって俺が開発して投げ出さなければ、こういう状況にもならなかったはずだ。
「先生、今お互い訓練をしています。こんなことをしている時間はないはずですが」
「いえいえ、そんなことはない。そうだ。みんなが集まりましたし、合同訓練でもしましょう。どうです生徒会長?」
武衛大の指導教官がニヤニヤしながらそう提案してくる。
御園生は感情を押し殺して、見つめていた。理解に苦しんでいる、でも要求を呑むような顔だ。
一日目の今日、練習は軽くして土地になれてから明日本格的に自分たちの連携を確認するはずだった。
それは相手方にも説明しているのだろう。合同訓練は最後にすると予定には書いてある。
お互いに交換大使によって情報はある程度得ているにしても、あまりやりすぎると手の内をさらしてしまうことがわかっているからだ。
「もちろん、峰空にそのような勇気があればの話だが」
「……」
学年主任は乗り気ではないらしい。話を聞いて苦い顔をする。
「いいじゃありませんか、先生。私は賛成です」
御園生、お前の仕事は俺達のフォローだろ。こんな面倒事、お前らしくない。
「大丈夫、勝負をするのは一人だけ。それで、薄っぺらい峰空の力の底はみえるかもしれないが」
「言わせておけば! いいでしょう! ですが勝負内容はこちらで決めさせていただきます」
「ええ、どうぞ」
俺は見逃さなかった、相手が一瞬勝ち誇ったような表情をしたことを。




