第十一節 断られてしまった
前回のあらすじ
追われるため図書館に逃げ込む。会うと思っていた、俺の姉は世良との関係が心配らしい。
無理矢理、発破をかけてくる。
行きたくないけど、卒業した中学に足を運ぶことにした。
放課後、この言い方もどうかと思うが卒業した母校である中学校に来ていた。
だって変だろう、卒業しないはずなのに卒業した。恥ずかしいったらないよ、在校生だったかもしれないやつが在校生に送られるんだぜ?
あの頃はオープンキャンパスから怒涛の日々だった。単位が足りないからって冬休みとかもなかったし、周りは冷ややかな目が多かった。
それは、今も変わらないようだ。
中学校は今部活の真っ最中、俺が校内を散策していると、同級生達が気まずそうに通り過ぎる。
……結構くるな。このアウェイ感。同じ歳なのに。
「おいおい、来たのかよハーレム野郎!」
「いて! あ」
そんなわだかまりを振り払ってくれる。
勝倉達には感謝しかねえよ。ありがとう。
「よお! 久しぶり!」
「どうです高校生活? こっちは~、なんと! こいつが告りました‼」
「おい! 誰にも言うなっていったよな!」
「方後~帰ってきてくれよ~。誰も会話にまとまりがないんだよ」
無駄に話し込む。意味なんてない。
俺にとってはまだ語りつくせないぐらい、大切な時間を失ってしまったと思うから。
埋めるように会話を楽しむ。そこに先生達や、仲の良かった後輩が加わってくる。
楽しかった。
きっと普通の卒業生と同じに今はなれている。心から、そう喜べた。
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勝倉に聞くとここにきた理由である探し人は、弓道場にいるらしい。
もともと色々な部活に助っ人として加わっていたから試合に出てほしいと頼まれたのだろう。
うちの姉と同じ道を彼女も歩いているのだ。
「失礼しま~す」
雰囲気的にほとんど帰ってしまったようだ。矢が刺さる音が、静かに緊張感を誘う。
彼女は変わっていなかった。
ピンクの髪をストレートに流し、正座しながら目を閉じている。反射する汗が集中力を裏打ちしているようで話しかけようか迷ってしまうな。
井谷、彼女を入学パーティーに誘いに来たのに。
久しぶりも何もあったものではない。
彼女はまったくこっちを見ないで、追及するように言葉をぶつけてきたから。
「先輩、こんにちは。わざわざどうしたのですか。学校には慣れたのですか?」
「それは嫌味か? 残念だけど、俺はお前達を後輩と思うつもりはないぞ」
「そう。なら敬語はやめるわ。私が入った時、敬語を使われない先輩として馬鹿にされなさい」
「お前も敬語が使えない後輩ということになるけどな。それより今いいか?」
「なによ? もしかして自慢でもしにきたの?」
「そうそう! 実は生徒会長を倒したら≪序決≫というランキング、一年最高レベルの七位になったん、
そんなことはどうでもいいから!」
自慢するといったら生徒総会で決められた順位しか頭に思い浮かばなかった。一応成績優秀だし、話のタネにならないかな?
「つまらないわ。早く要件を言ってよ。こっちはあなたと違って受験生なのよ」
会話が続かない。はぁ。といっても興味を持たれたら答えられなかったけど。
う~ん、いざ言うとなると恥ずかしいな。形は体育大会と一緒だろうから、俺ってそういう系はぎこちなくなるし。
姉貴は入学パーティーで超武戦に誘いなさいと言ってたけど。
そもそもの話、入学パーティーに来てもらわないといけない。
いっそここでもう一緒に誘っちゃうか。姉貴の名前を使ってやればすぐにしっぽを振るだろう。
「実は姉貴から言付けを預かっているんだけど」
「姉様から‼」
目が輝く。なんか悔しいな。
「来週入学パーティーをするから来てくれってさ」
「行く行く! 絶対に行くから。そう言っておいて‼」
これは、超武戦も押せば来てくれる!
「で、だ。お前超武戦は興味あるか?」
「もしかして! あのチケット倍率がものすごく高い超武戦を観戦でき」
そこで、言葉が途切れた。ハイテンションな雰囲気から一転。だんだんと険しい顔になる。
「もしかしてアンタ、自分の活躍を見てくれとかいうんじゃないでしょうね。姉様に言われたの?」
やべ、ばれた。
「え、えと俺の試合は適当でいいから、目的は姉貴を応援すると思って」
「行かない! パーティーもアンタが参加するなら行かないわ!」
「な、なんでだよ!」
「行かないったら行かない! もう帰って、練習の邪魔! 帰れーー‼」
罵声を浴びせられる俺。余りの剣幕に逃げ出すように外に出る。
何が気に障ったんだ。いきなりあんなにキレるなんて。
久しぶりの会話でそんなに極端なことを言った覚えはない。なんだろう、お互いの距離が修復できないくらい離れてしまっている気がする。
前は、嫌々ながらでも俺と行動するのは平気だったのに。
今は、そっとしていたほうがいいかもな。きっと原因は他にある、なにかはわからないけど。
力なく俺は弓道場を後にする。もっと彼女と話しかった。そばに入れないことが悔しかった。
この時、知らなかったんだ。
井谷は俺が超能力を持っているなんて知らなかった。でも八つ当たりのような発言で俺を世間の噂の的にしてしまったことで、自分を、攻め立てていたことを。
その日の部活動終了まで、弓道場からは彼女の泣き声が聞こえていた、そう聞かされた。
ダメなやつだと、心の底から思ったよ。




