4話:熱海、尋問される!?
「さあ!洗いざらい、話してください!」
三橋翼はようやく捕まえた犯人に尋問するかのごとく自信満々に詰め寄る。
「だけどさ、お前ら、俺の命狙ってるじゃん。」
「しかも、お前らがどういう組織とか、俺何にも知らないんだけど?新手の暗殺組織みたいなもん?」
「こんなとこに美久のこと話したくないんだけど?」
「暗殺組織じゃありません!日本軍のロボット専門治安維持組織、略してJRMPO ですよ!」
「って!うあ!これ秘密だったんだ…!バレたら上官に怒られる…!」
翼という少年は真面目すぎて少し抜けているところがあるようだった。
「ロボット専門治安維持組織か。それでその治安維持組織様が美久のなんの情報を欲しているんだよ」
「美久さんのモデルの生体反応があなたを迎撃に行った日の14時30分10秒以降、検知できなくなったんです。
この時間帯、美久さんに何が起こったのかご存知ですよね?それを教えて欲しいのです」
だろうな。とは思った。なぜ俺が未だに生きていて、美久の生体反応が無くなっているのか。
美久の事を普段から監視している身からすれば必ず疑問に思うはずだ。
しかし、起こったことを正直に教えるべきか、考える必要がある。
初日、美久は俺を殺そうとしてきたが、俺の咄嗟の愛の告白により倒れ、
翌日以降、故障してしまったのか、俺に溺愛?モードとなっている。
これが実際に起きた本当のこと。
…
隠すべきは美久の故障のことかもしれない。
もし、美久の故障がバレたら、俺は戦闘型ロボットを戦闘不能にすることができる人物として
治安維持組織から見た俺の重要目標度が上がって今より多くの人員が俺の命を狙ってくるかもしれないし、
もしくはより厄介な組織から命を狙われることだってあり得るだろう。
…
「あの日、俺は美久と学校の屋上で邂逅した。美久は最初任務の事を説明して、俺を殺すと言ってきたよ。
しかし、彼女は俺を殺す事を戸惑っていた。目頭には涙があり、手は震えていた。
なぜ戸惑っていたかって?
あの日、たまたま登校途中、転校初日で迷っている彼女を見かけてね、学校まで案内したんだ。
彼女はこの時、こんな親切な人間を殺さないといけないなんて。と思ったんだと思う。
で、話を戻すが、俺を殺すことに戸惑っていた彼女に、俺は殺す以外の方法もあるんじゃないかって言ったんだ。
そしたら、数分考えた後、彼女はそういえば、と言い、ガチャっと、自身の首に付いている小型の発信機みたいなものを手で握り潰したんだ。
おそらくその行動で生体反応が消えたんじゃないか?
そんで色々あって、
俺と美久は付き合うことになったんだ。」
…
うん、我ながら上手くまとめたでっちあげ話だ。
翼は首をかしげて「ふむ...」とだけ。
「色々あって美久さんと付き合うことになった。といった部分が気になりますね。色々、とはなんなんですか」
こいつ、意外に鋭いな。現状との辻褄合わせで無理やり話繋ぎ合わせようとしたところを突いてきやがる。
こう言う場合はあの手を使うしかないな!俺も使うのは初めてだが!
「フッ、恋人同士には色々あるんだよ」
翼の顔は赤くなり「くううっ」と声にならない声を出していた。
翼は冷静な表情に戻り、
「事情は理解しました。これを踏まえ今後の対応について上官と話してみます。」
「それと、あなたの一挙一動を見ていると、核兵器並の危険度があるとはどうも思えないんですよね。
戦闘ロボット側の危険度計測ロジックについて作成時に不備が生じている可能性もありそうですし、このことについても今後の対応どうするか上官と話してみます。」
なんとか乗り切った。
これでしばらくは大丈夫かなと思いつつ、
ゲーセンだった廃墟を出て数分歩いたところ、
見覚えのあるピンク髪が一人駄菓子屋に佇んでいた。
ピンクと白のぐるぐる巻きの飴を眺めている。
「これって美味しいのかなあ」
「美久?帰ってなかったのか。」
今にも食べ物を買って食べようとしていたので声をかけてしまった。
(ロボットって食べ物食べられるのか?)
熱海の声が聞こえると少女は即座に振り向きか駆け寄る。
「熱海君だ♡再び会えて嬉しいよ!」
「そういえば、翼っていう子との話、大丈夫だった?」
「ワタシ、あの翼って子苦手かも。
だって今日、教室でワタシと知り合いでもないのに元カレ面して美久を返せ!なんて言ってきたんだよ」
今日翼の話を聞いた感じ、美久と翼は同じ組織で働いていたのだろう。
しかし現在美久はそのこと自体忘れて、翼を元カレ面する粘着ストーカーだと思っているらしい。
「まあいいや、熱海君が女の子にストーカーされるのは許されないけど、
ワタシがストーカーされているのは、裏で処理しとけばいい問題だし。大丈夫よ♡」
裏で処理しておくとは一体。物騒な発言だが、熱海は聞かなかったことにした。
…
場面は変わり、日本のとある軍事施設。
「…以上がP289戦闘用少女型モデル美久の生体反応消失における、14時30分10秒近辺の事象報告であります」
「ふむ、人を殺すことに躊躇いが生じて、いっそ殺すくらいならと、自身の生体反応発信機を壊したと。」
「実に人間らしい行動ではないか。美久の情緒アルゴリズムについて、後であの天才博士と会話したいものだな。」
「だが直近、取り組むべきことは美久の生体反応通信機の修理だな。」
博士は話すだけなら少し時間取れるが、修理依頼となるとこの先1ヶ月は埋まっている。
緊急の依頼じゃない限りすぐに取り合ってくれるのは難しそうだ。
「ふむ、どうしたものか。ああ、そうだ。実はこんなこともあろうかと」
フェスタ長官は何かを思い出したかのように手を叩いた。
「私にはロボット修理士の伝手があったのだよ。彼に美久の生体反応通信機の修理を頼もうではないか。」
「ツバサ君、悪いが美久の生体反応通信機の修理の任務、お願いできないだろうか?」
「これは修理依頼の手紙だ。」
「彼は少し頑固者でな、手紙を渡せばこの依頼は私からのものだとして取り扱ってくれるだろう。」
フェスタ上官の依頼に、翼は
「了解しました」と返事する。
「あと、彼、横山熱海については話を聞く限り、直近の脅威とはいえなさそうだな。」
「それとツバサ君、君はいつも真面目でちゃんと休みをとれているのか私は心配だ。」
フェスタ上官の心配に翼は休暇はいらないというアピールをする。
「大丈夫ですよ。というかそもそもロボットは24時間365日休まずに稼働し続けるのが普通ですよ。
人間じゃないんですよ」
「と言ってもな、上官としてはやはり心配してしまうものだ。先ほど与えた任務については完了予定日時をいつもより長めにとっておくから、この間に休暇もとっておきなさい」
翼はフェスタ上官の休暇押し付けに「…」と押し黙る。
横山熱海がまだ何か隠している気がして仕方がないので、
僕は働く気満々だったんだけどな…
と思いつつ、
上官の命令は絶対だ。と渋々休暇を受け入れる翼であった。




