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30話:追加契約

「……だめ。」

「もう、抑えきれない。」


頭の中に遠く響く声。

姉なのか?


――暗い。


ここは、どこだ。


「久シブリ....(わっぱ)よ、ずっと待っていたぞ」

低くそれでいて幼子の声。


「......その声、黄泉喰か?」


「そうじゃ。」

それは着物を纏った幼子の姿で姿を現す。


「我は、あの道化(九条玄)に封印された時、お主と一体化した」

「ああ、あの時は悔しかったなあ」


「拡がり続ける存在が一つの場所に留まり続けないといけなくなるなんて」

「まるで矛盾じゃ。それがおかしくっておかしくって仕方がなかった」

あははは、と黄泉喰は大笑いする。


すっと表情を戻す。

「今、外の世界の黄泉喰は、我のコントロールを失って暴走を始めている」

「......聞こえるじゃろ?」


遠くで。


「起きて!熱海君!」

「上官?どうして......」

ガタッ

機械が落ちる音。


......美久?


「ゴホッ」

誰かが咳き込む音。


......姉さん?


「もう立てぬようじゃ」

「まさに、絶望、じゃな」


「くっ」

奥歯を強く噛む。


黄泉喰の瞳が細まる。

「我とてなんでもかんでも侵食したいわけではない」


!?

姉から聞いていた話と違う。

......どういうことだ?

俺を騙すために嘘をついているのか?


黄泉喰は俺を見つめる。

「我はな」

黄泉喰の口元が、ゆっくり歪む。

「綺麗なものから侵食したいのじゃ」

「......その後、現世全てを侵食する」


わかっている。

最初から。

黄泉喰は最終的には現世の全てを黄泉で侵食したいと考えているんだ。


そんな俺の疑念はものともせず、

黄泉喰は話を続ける。

「そう、順番が大事なのじゃよ。」

「なのに外の世界の黄泉喰といったら、順番なんて関係なくなんでもかんでも侵食するではないか」

「我の心意気からは外れたものじゃ」


......。


「助けてほしいか?」

暗く淀んだ囁き。


頷いてはダメだ。


答えは決まりきっているはずなのに

心がざわつく。


もし今、外の黄泉喰を内にいる黄泉喰のコントロール下に戻せれば?

後がどうなるかはわからないがひと時は平穏を取り戻すことができるだろう。

そしたら、あの黒幕に反撃するチャンスが訪れるだろう。


どうする?


ダメなのはわかっている。


これは契約だ。


救済じゃない。


姉さんの声が遠ざかる。


......間に合わない。


......もう。


「……助けてくれ」



「よく言った!」


「まずはお主からじゃ!」

幼子の甲高い笑い声。

黄泉喰の小さな手が、こちらへ伸びる。

触れた瞬間。

......理解した。

もう、戻れない。

何かが、俺の内側で笑った。

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