28話:いつも通りだったはずの昼休み
文化祭翌日。
昼休み。
教室はやけに静かだ。
文化祭という非日常に終わりを告げたかのように。
隣には美久。
「終わっちゃったね。文化祭。少し寂しいかも。」
「劇のあのセリフ覚えている?」
......!
ー「君を失うくらいなら、名前なんていらない。」
もちろん覚えている。
......恥ずかしい。
ふいっと目線を美久から逸らし、
即座に話題を切り替える。
「そういえば、文化祭の打ち上げがあるって聞いた。美久は行くのか?」
「うん。」
「衣装係だった子と仲良くなって、その子から打ち上げ一緒に行かない?って誘われたの」
クラスに馴染んでいるようだった。
「熱海君も来るよね?」
「......ああ。」
「良かった!主役が来ないと盛り上がらないから、来てくれるの嬉しい」
美久はまっすぐ俺を見つめる。
さっきから心臓の鼓動がうるさい。
「あのね、写真部の子がね、私達の劇の写真撮ってくれて、写真貰ったんだけど」
「見て。」
美久は俺に写真を手渡す。
倒れる俺と、それを抱き抱える美久の写真。
演劇の最後のシーンだ。
「......うまく撮れているな。」
「そうでしょ」
美久は俺に笑いかける。
「明日以降も、きっとこんな日々が続けばいいよね」
「ねえ熱海君」
「ん?」
少し言い淀む。
「.....なんでもない」
少しだけ、
言いかけてやめたような笑顔だった。
その直後。
パタン。
美久がパタンと倒れる。
「......おい」
「美久?」
「大丈夫か?」
声をかけても反応しない。
やばい。
......嘘だろ。
美久を担ぐ。
軽いはずなのに、異様に重い。
呼吸が浅い。
嫌な予感だけが膨らむ。
保健室に急ぐ。
......フェスタがいない。
机には置き手紙。
「屋上で待っている。」
......どういうことだ?
急いで階段を駆け上がる。
屋上の扉を蹴り開けた。
屋上。
「やあ、熱海君。」
黒い防護マスクを被ったフェスタがいた。
手には何かを起動するボタンを持っている。
あのフェスタのはずだが、雰囲気が違って見える。
防護マスクのせい?いや防護マスクがなくても何かおかしい。
「懐かしいね。この屋上。」
「全てはここから始まったんだ。」
マスク越しに不気味に笑っているのが分かる。
「何を言っている?」
「覚えていないのかい?美久がこの学校に転校してきた時、君に起こったことだよ」
「そう、殺されそうになった」
「あのまま死んでくれたら良かったのに」
「あろうことか君は美久に告白をし、今生き永らえている。」
フェスタは手元のボタンを押す。
ぐいっと美久の体が起こされる。
ー強制司令を検知
ー自滅モード起動を申請します
ー承認されました。
自滅....!?
美久は両手で頭を抑える。
自滅まで3、2
ダメだ!
美久の両腕目掛け、
体が勝手に動く。
美久の手を頭から、必死に引き離そうとする。
引き離せた!
1、
バンッ
何が起きたのか分からない。
視界が揺れる。
一歩、後ろへ崩れる。
遅れて。
ブスッ。
腹の奥が焼けた。
呼吸が止まる。
あ。
赤い。
溢れる血。
やばい
やばい
やばい
黄泉喰が....。
「喰ウ......スベテ」
黒い靄が学校全体を覆う。
黒い人影が現れる。
視界が黒く染まる。
学校が、消えていく。
いや、
喰われている。
「あははははは!」
フェスタは狂気の笑いを上げる。
甲高い笑い声。
「ついに、ついにやったぞ!」
「成功だ!」
「世界は破滅へ導かれるだろう!」
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