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25話:消えたジュリエット

ジュリエット役を賭けた戦いが、今まさに始まろうとしていた。


「さあ、あたしから演技を始めるね」

自信満々な表情の未綺。


―そして、一瞬にしてその表情が悲壮へと変わる。


ーー「ああ、ロミオ、ロミオ!どうしてあなたはロミオなの?」


圧倒的だった。

空気が変わるのがわかった。


演技が終わると、拍手が湧いた。


「次はあんたの番。精々頑張ることだね」


ふうっ。美久は深呼吸する。

ーー「私たちがバラと呼ぶものは、他のどんな名前で呼んでも、同じように甘く香るわ。」


悪くはない。

だが、未綺の後では分が悪すぎた。

教室が静まり返る。



「ではよかったと思う方に挙手してください。」


「未綺さんの演技がよかったと思う方」

一斉に手が挙がる。


「美久さんの演技がよかったと思う方」

パラパラと数人が手を上げる。


後が怖いので

俺はあえてどちらにも手を挙げなかった。


「そんな......。」

投票の結果を見て美久の表情が暗くなる。


「大丈夫か?」

「そもそも俺ロミオ役やるわけじゃないから、そんな落ち込むなって」


美久を励まそうとしたところ。

学級委員から釘が刺さる。

「ロミオは熱海くんじゃないとやらないって未綺さんが言っているので絶対やってください」


「せっかく演劇勝負したのにロミオが熱海じゃないのは未綺さんに失礼じゃない?」

クラスメイトの疑念の声。


「......は?」

このクラスの人間はどうやら全員未綺の傀儡らしい。

しかも落ち込んでいる美久のことはほったらかし。

久々に、本気で腹が立った。


ガタンッ。


席を立ち上がる。


「てめえらさっきから勝手にゴタゴタと決めやがって!

俺は一言もロミオやりたいなんて言ってねえからな!

こんな演劇、ぶっ壊して―—」

言い放つ前に美久が割り込んだ。


「熱海君、やめて!私は別に落ち込んでいないし、未綺がロミオは熱海君がいいって言っているんだから、やってあげればいいと思うよ!」


「だけど....!」

反論しようとするが言葉が出ない。


「私は大丈夫。ああ、早く熱海君の演技見てみたいな」

笑っている。

でも、目は笑っていなかった。


....

文化祭10日前。


「熱海くん、セリフの練習しよ」

未綺が演技の練習に誘ってきた。

美久の姿はない。


「ああ」


「熱海くん、最近ずっと心あらずみたいだけど大丈夫?」


「大丈夫」


「じゃあ始めようか」




ーー「ロミオ、ロミオなのね。あんまりだわ、そんなところに隠れて。立ち聞きしていたのね。」


ーー「あなたに会えたから、もう死んだって悔いはない。」


未綺はぱちっと指を鳴らした。

「違う。セリフが間違っている。」

未綺はため息をついた。


ぼーっとしていた。

「ごめん。もう一回いいか」


「しょうがないなあ」

未綺は息を吸う。


ーー「ロミオ、ロミオなのね。あんまりだわ、そんなところに隠れて。立ち聞きしていたのね。」


ーー「違う。ジュリエットに一目会いたくて、月に誘われてここまで来たんだ。」



「うん。完璧ね」


放課後の教室に、何度も同じセリフが響いた。


....

練習漬けの日々は、驚くほど早く過ぎた。

気づけば、文化祭当日となっていた。


......。

あと一時間後に演劇が始まるのだが、

なぜか未綺が見当たらない。


「一体どこに......。」

胃の奥がざわつく。

クラスメイトに未綺がいないことを伝えると驚きと不安が広がった。

「行方がわからない以上、誰か、代役できる人を探さないと」

監督役は焦っている。


「それなら」

衣装係が手を上げる。

「美久さんはどうでしょうか?」

「今まで裏方で衣装作りを一緒にしてきましたが、ジュリエットのセリフもたまに口ずさんでいたんですよ。もしかしたら代役が務まるかもしれません」


美久、衣装係だったのか。だから道理で見かけないと思った。


「....それで行きましょう」

監督役はすぐに了承し、控室にいるであろう美久を呼び出す。

「ジュリエットの代役お願いできないでしょうか?」


一瞬の沈黙。


「……私、やります。」

視線はまっすぐ俺を見る。

迷いはあるはずなのに、声は静かだった。

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