23話:契約
「契約ってなんだよ。」
契約の件。
思わず口が滑ってしまった。
弟には内緒にすべき、と玄おじから言われていたのに。
いつもそうだ。
気がついたら口が滑ってるんだよね。
弟は疑いの眼差しを私に向けている。
「......仕方がない。言うしかないのか。」
「今から私が話すのは昔話。」
....
黄泉喰っていう存在がいる。
黄泉を喰らって、現世に拡げるもの。
黄泉喰はすれ違う人々に毎度語りかけました。
「あちらの世界へ行きたくないか」
と。
それは何もわからぬ子供にまで。
語りかけられた子供は、
「うん。」
と頷きました。
そして契約は完了し、10日後、現世は黄泉の世界に侵食されることとなります。
子供はそのことを家族に伝えました。
「黄泉喰って子が10日後、あちらの世界へ連れて言ってくれるんだって」
「!?」
家族の家系は境界管理者、すなわち陰陽師でありました。
子供とはいえ陰陽師である我が家系の一端が
境界の侵食者である黄泉喰と契約してしまったこと。
それが恥で仕方がありませんでした。
よって、”その家系は一族全員、自害することを選択した”のでした。
「ここで死ぬのは嫌だ。」
そう思うものがいました。
彼女は黄泉喰と契約を行った子供の姉でした。
彼女は彼の手を引き家を飛び出しました。
9日もの間、2人は彷徨い歩き、
彼女の弟は意識が朦朧としていました。
彼の体からは黒い靄が沸々と出ており、
時々、人影らしきものも現れていました。
このままでは終わる。
彼女は絶望しかけていたそのとき。
「嬢ちゃん、あんたが引っ張っているものは何だい?」
彼女の目の前にフッと男が現れました。
目だけが、異様に静かでした。
「俺には見える。それは境界を侵食するものだな。」
男は元陰陽師でした。
彼女と弟は男に寺に連れて行かれました。
「契約を破棄することは俺の力じゃ無理だ。」
倒れている弟を横目に男は
「……代償を払う覚悟があるなら、抑えられる。」
そう言いました。
代償。
そう。代償は、
彼の一生です。
「黄泉喰を彼の中に封じることで現世を侵食しないようにする」
「だが、彼が血を出したら黄泉喰が出てくるだろう」
「その時は、わかってるな。嬢ちゃんが鎮めるんだ」
「うん」
彼女は覚悟を決めました。
「黄泉喰の出た時の気の流れなら、陰陽師の家系ならすぐにわかるはずだ」
「この術法を覚えておけ」
....
「それからずっと、私はあんたが血を流すたびに術法を使い、黄泉喰の侵食を抑え続けているの。」
「ごめんね。黙っていて。」
「この子供って....」
「うん。あんたのことだよ」
「くっ....」
そんな重大な秘密を隠していたなんて。
そして、俺はなんてことをしてしまったんだ。
身に覚えがない。幼い頃の契約。
現世を黄泉で侵食する、黄泉喰。
「ようやく気づいたようだね」
声が、頭の奥で響いた。
だから、だから、血を流してはいけなかったのか。
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