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22話:ぼやけた過去

暗い一室。

ノートパソコンの画面だけが明かりとなる。

パソコンの前に座る人物は画面に映るログを確認する。


「本来なら、美久は意識を飛ばさず迎撃モードへ移行できる。」

「だが、意識を失う。」


「......想定外だ。」


「そして、再起動のたびに直前の記憶が欠落する。」

「頻度が増すごとに、忘却量も増大。」


「......あり得ない。」


「メイ博士。あいつ何か仕込んだな?」


「......安全装置か?」

画面の前の人物は舌打ちする。


「厄介だな」

パソコンの蓋を叩きつけるように閉じた。

....


美久と未綺の喧嘩で終始落ち着くことのできなかった

カラオケが終わり帰路につこうとしている


電車の中。

未綺は先に降りていった。

俺は現在、美久と2人電車に揺られている。


美久はぼうっと電車の窓から見える景色を眺めている。

何を考えているのだろうか?


「楽しかったか?」

美久に尋ねる。


「......!うん。楽しかったよ」

わずかに間を置いて、応える。

微かなノイズ。


夕焼けが、窓ガラスに滲んでいる。

まるで拭いきれない染みのように。


....


自宅前。

玄関に入ろうとすると。


ガッシャーン!


すごい音がした。

俺は慌ててドアを開ける。


焼け焦げた匂い。

恐る恐るキッチンへ歩く。


....。


「あはは、失敗しちゃった」

キッチンに、フライパンを持った姉が立っていた。

フライパンの中には元は魚だったらしき黒く焦げたものがあり、

姉の足元には皿が何枚か割れている。


......これを片付けろというのか。


「夜ご飯作ってあげようと思ったんだけどなあ」

呑気に言っている。


「はあ....。」

思わずため息が出る。


だが、

そんなことより。


「おい、どこに行ってたんだよ。」


(げん)おじのとこ」


「あの契約の件を聞きに」

「あっ、いやなんでもない。」

姉は焦って口ごもる。


(げん)おじ――九条(くじょう)(げん)

俺たちを拾ってくれた寺の住職だ。

「横山」という姓を得られたのも、(げん)おじのおかげだ。

(げん)おじに拾われる前、俺たちは道端を彷徨っていたらしい。


....


幼い頃。

俺は気がついたら姉に手を引っ張られていた。

「....どこに向かうの?」


「誰も私達を知らないところ」


「いやだよ」


「だめ、遠くへ、遠くへ逃げないと」


「....」

だめだ。意識が....。




「こりゃあ重症だな。」

低く、ざらついた男の声。

「....抑えることしかできねえ」

「あれは“死”だ」


黄泉喰(よみばみ)め」


「ちっ、破門された身だ、力が及ばないのも仕方ねえ。」


「お願いします。弟を助けてください。」

姉の必死な声。


男は数秒黙る。


「……代償を払う覚悟があるなら、抑えられる。」


沈黙。


「血を出してはならぬ。」

「わかったな?」

その言葉だけが、なぜか消えない。

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