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20話:カラオケと不穏

「おすすめのカラオケ店があるの」


そう言って美久に連れられ、俺たちは個室の前に立っていた。


……だが。


この個室何かがおかしい。


まず、部屋が狭い。

歩くスペースが存在せず、テーブル一つに横長椅子が一つだけ。

そしてー内装がやたらとピンクだ。


....まるでカップル部屋だ。


「私、熱海君と隣がいい」

右腕に絡みつく美久。

「あたしも熱海くんと隣がいい」

負けじと左腕にくっつく未綺。


どうやら二人は隣同士になりたくないらしい。


仕方がないので俺が真ん中で、

右に美久、左に未綺という並び順で部屋に入ることになった。


「....狭い。」


両隣から密着されているからだろうか。


というか意図的に密着されている気が....。

....いやいや気のせいだろ。

俺は煩悩を振り払う。


「何か歌わないのか?」


「うーん……?」

美久は首をかしげる。

まるで、歌うことを想定していなかったかのようだ。


一体なぜ、カラオケに誘ったんだよ!

ツッコミたくなったが

我慢我慢。



「みんな歌わないならあたしから歌うね」

気を遣って未綺が歌うと言い始めた。


イントロが流れる。

流行りのJ-Popらしい。


そしてー


「庵絵rごいおいp@GjfOP!」


「fdshっじj:ふぉえs!」


「sdftfぃ卯bdrぁうぇ!!!!」


!?


思わず耳を塞ぐ。


....下手だ。

しかも、想像を超えるレベルで。


一瞬。カラオケなのに命の危機を感じた。


曲が終わる。

「未綺、お前歌下手って言われたことないか?」

思わず聞いてしまった。


「ないよ?みんな上手いって褒めてくれるけど」

自覚がないようだ。


「なに?あのヘッタクソな歌は」

美久が容赦なく斬る。


この後、歌で勝つ自信でもあるのだろうか。


「え?下手くそ?」

美久の指摘に、私がそんなこと言われるわけがないとキョトンとする未綺。


「まるで、ラーメンにショートケーキをぶっ込んだような歌だったよね。熱海君?」

美久が俺に問いかけてきた。


直接俺の口から下手と言って欲しいかのようだ。

だが、俺は下手とは言いたくない。彼女を傷つけてしまう。

なんて言うべきか。

「....。」

言葉が出ず、黙り込んでしまう。


俺の反応を見たのか青ざめる未綺。

「ちょっと気分が悪くなっちゃった。外で空気吸ってくるね」

バタッと未綺は部屋を出て行こうとする。

「あっ、おい!」

呼びかけたが、

未綺は俺の呼びかけを無視して出ていってしまった。


「やっと二人きりだね。熱海君」

邪魔者がいなくなったことに

美久は隠すことなく嬉しさを溢れ出させる。


「じゃあ私歌うね」

淡々と選曲し、


イントロが流れるー


ん?

....演歌?


歌詞が流れるー

「ー愛するあなたのことが遠くて♪」


選曲はとても女子高生がするようなものとは思えない。

だがー

上手い。

圧倒的に。


アウトロが流れ、歌が終わろうとするー


美久の歌を聴きながら、

俺は頭の片隅で未綺のことを考えていた。

急に飛び出していって心配だ。


立ち上がり部屋のドアを開ける。

「どこに行くの?」

美久の不安そうな声。


「お手洗いに行ってくる」

嘘をついた。


....


店の外。

黒髪ロングの制服を着た女の子が座り込んでいた。

「あーあ、せっかくいい感じだったのに。」

「熱海くんに嫌われちゃったかな。」

彼女の涙袋は泣いた後なのか腫れている。


「邪魔者はいない方がいいよね」

彼女は立ち去ろうとする。


「待って!」

彼の声だ。

もしかして追いかけてきてくれた?

振り返る。

「!」

「熱海くん....。」

思わず、また泣いてしまいそうになる。

追いかけてきてくれた。


それだけで嬉しかった。


「体調悪いって言って急に飛び出していくなんて」

「大丈夫か?」


心配してくれている。

心配をかけるわけにはいかない。


「うん。....ちょうど治ったみたい」

泣き腫らした目を擦り、立ち上がる。

「戻ろう」


....


店の個室。

そこにはピンク髪の女の子が一人残されていた。


「お手洗い行くって言ったけど、嘘よね」

「....熱海君、嘘下手くそなんだから」

彼女は暗い声で笑う。

表情は今にも泣きそうだ。


「....私がいなくなれば

全てうまく回るのかな」

彼女の目が一瞬無機質に光る。

フッと彼女の全身の力が抜けた。


ーXXXXを検知

ーXXXXXXXモード起動を申請します

ーXXXXによりXXXXで却下されました

ー利用条件が揃っていません


無機質な機械音声だけが、狭い部屋に響いていた。

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