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15話:柔らかさと違和感

柔らかい。

この柔らかな感触にずっと浸っていたい。

少し目を開ける。

豊満な胸が俺の顔の上に乗っかっている。


胸の主は、俺が目を開けたのに気づいたらしい。

ふわりと重みが消えた。


「目を覚ましたようだな」

フェスタだ。


「ショックで気を失っていただけで、傷については軽傷だ。安心していい。」

フェスタは治療に使ったであろう血が染みたガーゼを指先で摘まみ、値踏みするように眺めている。


ベッドの近くに置いてある鏡を見る。

頬にガーゼがテーピングされている。

だが血はもう止まっているようだ。


幼い頃。

公園で転んで膝を擦りむいたことがあった。

血がにじみそうになり

姉が血相を変えて駆け寄ってきた。

「血を出しちゃだめ!」


今日家に帰った時、怪我したことを知ったら

姉はまた血相を変えて怒るだろう。

そんなのは面倒だ。


俺は勢いよくガーゼを剥がす。

剥がした瞬間、一瞬だけ空気が重くなる。


「美久君、愛しの熱海君が目を覚ましたようだ」

フェスタの呼びかけに反応し、

先に目を覚ましていた美久は振り返りこちらを向く。


「熱海君、生きててよかった...」

「本当にごめんね。私、さっきは少し感情的になりすぎてしまっていたみたい」


記憶は正常のようだ。


「フェスタさん、聞きたいんですが、美久の記憶って強制再起動されない限り、直前の記憶が欠損することはないんですよね?」

「当たり前だ。なに、再起動したことでもあるのか?」

フェスタは不思議そうな表情をしている。


「いえ、気になったので聞いただけです」

強制再起動したことがバレたら、

翼がフェスタに怒られてしまいそうな気がしたので黙っておくことにした。

命の恩人に恩を仇で返すわけにもいかないしな。


「そういえば、俺たち屋上にいたと思うんですが、誰がここまで運んでくれたんですか?」


「翼君だよ。私の優秀な部下だ。」

フェスタは冷静に翼のことを評価する。


また翼に助けられてしまった。

なおさら、強制再起動の件は話せないな。


「そうなんですね。翼に感謝を伝えておきます。」

「そうしておいてくれ。彼女も喜ぶだろう」


「あれ...?」

周りを見回す。

美久がいない。


どうやら俺とフェスタの会話を聞いていた美久は

いつの間にか先に保健室を出ていってしまったらしい。


「じゃあ、俺、教室に戻りますね」

と言って、急いで保健室を出た。

一抹の不安。

美久はどこへ行ってしまったんだろう。

ちゃんとしているなら教室だが、

と思い、教室を開ける。

美久の姿があった。


真面目に授業を受けているようだった。

今の美久は安定しているように見える


ノートに走るペン先が、まるで機械のように一定だ。


.....安定している。....そう思うことにした。


そのまま安定してもらうために、

俺も嫌々授業を受けることにした。


数十分後。


頭をツンツン指で押される感触。

ぼんやりとしながら、現在の状況を把握する。

いつの間にか机に突っ伏している体。

頭を上げると目の前にピンク髪の少女。

「美久....?」


寝てしまっていたようだ。

授業がつまらなすぎるのが悪い。


「授業もう終わって放課後だよ?」


どうやら俺は2限分寝ていたらしい。

このまま美久に起こしてもらえなかったら

学校に鍵かけられるまで寝ていただろう。


「起こしてくれてありがとう。」

素直にありがたかった。


「帰ろ?」

「おう、帰ろうか。」

美久の誘いに応じ、学校を下校する。

学校にこんな時間までいたのは初めてだった。

夕焼けに染まる廊下が、やけに赤く見えた。

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