11話:修理屋にて変わらない愛
修理屋にやってきた。
だが、外観はどう見ても修理屋には見えない。
窓はなく、外壁は前面板張り。
ところどころに、おしゃれなフォントの英語が並んでいる。
古風なカフェのようだ。
「熱海君、カフェに誘ってくれるなんて嬉しい♡」
「けど」と言った後、
美久は後ろにいる翼のほうをチラリと見る。
「何でまだついてくるの?」
「たまたま行き先が同じだっただけです。店に入るならさっさと入ってください」
「翼もそう言ってることだし、美久、入るぞ」
ガチャッ。
ドアを開け店内へ入る。
店内は外観の古風なカフェ感とはうって変わって、
明かりが暗く、不気味な雰囲気を漂わせている。
そして、店主らしき男が受付らしき場所に座り本を読んでいた。
「こんなクソみたいな小説、史上初だな」
と言いながら、男はページをめくっている。
ドアの開閉音で、店主はこちらに気づいたようだ。
何かを察したように、
「ああ、フェスタから話は聞いている。俺はダージュ。」
ダージュは茶髪で丸い眼鏡をかけ、短い顎髭を生やしている。
よれた服を纏い、全体に汚れが目立っている。
「軍の非公認であるが、ロボットの修理を行っている」
非公認……?という言葉に、わずかな引っかかりを覚えたが、
大事なのは修理内容なので聞き流すことにした。
「何でこんなところ連れてきたの?」
美久は自分がここにくる意味がわからないとばかりに疑問をぶつける。
「修理対象はあれか?」
美久の言葉を無視し、ダージュはおもむろに美久を指さす。
「え?ワタシ人間なんですけど!?」
美久は、自分が指さされたことに驚きを隠せない。
そして、危険を感じたのか、店から出ていこうとする。
それを察知した翼は美久を強い力で取り押さえる。
「円滑に物事を進めるためです。少し我慢していてください」
「え!?いやだ!」
全力で拒否する美久。
店内は混沌と化していた。
俺は黙って様子を見ていたが、
頭の中は焦りでいっぱいだった。
どうすれば美久を落ち着かせられる?
ロボットだと指摘され、否定し、店を出ようとしている。
だが修理は絶対に必要だ。
もう隠しきれない。
「ごめん、ずっと黙っていたことがある。
記憶にないかもしれないが……美久、お前はロボットなんだ」
「えっ」
美久は頭を強く抑えて
「そんな、そんなことって...記憶?どこの記憶...?」
ブツブツ呟いて、数秒後、
頭の中がオーバーフローしたかのように
意識を失った。
ー記憶領域に不整合発生
ースリープモードへと移行します
美久の体から機械音声が冷たく流れる。
「ナイスだ。動かなくなったみたいだな、この間に全て修理してしまうぞ」
「依頼内容によれば生体反応発信機の修理だったな。これであっているか?」
ダージュは翼に確認をとる。
「それと、記憶領域についても点検して、異常があれば修理できないでしょうか?」
翼は記憶領域についても点検の依頼をする。
「わかった。生体反応発信機の修理と記憶領域の点検または修理だな」
ダージュは修理する気満々だ。
依頼内容が順調に確定しようとしている。
……待て。
待て待て待て。
「ちょっと待ってください。記憶領域も修理してしまうと、俺また抹殺対象になったりしませんか?」
俺は純粋な懸念事項をダージュに伝えた。
「大丈夫だ。フェスタから抹殺対象から要観察対象へ移行したと聞いているから、
P289(美久)の任務自体も廃棄するように修理予定だ」
「はあ」
今までの緊張が一気に解けた。
美久と初めて出会ってから今までひと時も安心できる時なんてなかったからな。
....
数時間後。
「終わったぞ」
修理室からダージュが出てきた。
続いて、美久が現れた。
「熱海君、ごめんね、今までワタシ自分が人間だと勘違いしていたみたい」
「これからはロボットとしてよろしくね♡」
「今も変わらず熱海君のことは大好きだから♡」
美久の目が一瞬だけ無機質になる。
...ん?
自認が人間からロボットに変わっただけで
あとは何も変わっていないように見えた。
...これは大丈夫なのだろうか?
....
3人が帰った後、
ダージュは誰かと通信する。
「例の機能は組み込んでおいた」
「ご苦労。横山熱海は、必ず殺す」
通信が切れる。
ダージュは小さく舌打ちした。
...
密かな殺意など露知らず、
熱海の夏休みは過ぎていく。
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