10話:美久の透け透け大作戦
「それにしても何で翼がいるの?」
美久は機嫌こそ直っているが、俺と二人きりでないこと自体は不満のようだ。
ずっと言い続けそうなため、何かしら理由をつけて納得させた方が良さそうだ。
「実は翼も誘っていたんだ。少しでも多く牛乳が欲しいからな」
翼は自分に助け舟を出してくれるなんて、と感激している様子だった。
「熱海君がそう言うなら納得。わかった♡」
と言いつつ、俺の腕を掴む。
熱海は自分のものとアピールしているようだ。
...
牛乳工場。
受付にて。
「予約の横山です」
「横山さんですね、本日は2名でのご予約ですがーー」
やばい。
工場受付の人の一言で、
翼が人数に入っていなかったことがバレた。
「熱海君、どういうこと?誰が人数に入っていなかったの?」
美久は訝しげな表情をする。
不穏な空気だ。
「あれ?3人で予約したはずなんですが、手違いかな?
すみませんが、1人追加できますか?」
即座に自分が予約人数間違えたことにした。
「できますよ。では3人でご入場ください。」
ふう...危なかった。
...
一行は見学通路を順調に歩いていき、
試飲コーナーにたどり着いた。
「ふむ、なかなか美味しい」
熱海は牛乳のおいしさに関心する。
「僕、コーヒーより断然牛乳派です」
翼は昨日のコーヒー事件を引きずりながら、牛乳の美味しさに浸っている。
そんな中、
美久が妙に静かだ。
「えへへ、...やれば熱海君喜んでくれるかな♡」
何かを企んでいるようだ。
嫌な予感。
数秒後
おもむろに熱海に近づき、
バシャッ。
熱海の目の前で
美久は自身が持っていた牛乳を自身の頭の上にぶっかけた。
白い液体が髪を伝い、服を濡らし――
「うわっ!」
俺は即座に目を閉じる。
「何やっているんですか!」
翼は叱責する。
「熱海君が喜ぶと思って♡」
「だって、男の子ってこういうの好きだよね♡」
内心、女の子の服から下着姿が透ける姿はとてもいいと思うが。
場所を考えてほしい。
一瞬目に見えてしまったものが脳内にずっと焼きついているが、
どうするんだよ。俺。
目を開けていいのか?
いや開けたら終わりだ。
「翼、美久を連れて行ってくれるか?」
「連れて行くってどこに!?」
翼は焦っているようだった。
「工場の人に事情話して、何とかならないか交渉してきて欲しい」
「...わかりました。」
二人の足音が遠ざかる。
ようやく目を開けることができた。
....
一連の騒動の後、
俺は牛乳工場の外で美久と翼が出てくるのを待っていた。
手には限定配布の牛乳が一本。
「美久のやつ...まさかあんなことまでするなんて、
思考回路までおかしくなったのか
いや、思考回路は最初からおかしかったか」
「修理屋で何か変なことが露呈しなければいいが、不安だな」
独り言を呟いているうちに美久と翼が出てきた。
美久は服が替わっている。
おそらく替えの服を牛乳工場の人が用意してくれたのだろう。
牛乳工場の人ナイス!
「熱海君、待たせてしまってごめん♡」
美久はあまり反省しているようには見えない様子であやまる。
美久の言葉を無視して
「翼、ごめんな、美久の面倒大変だっただろ?」
翼に声をかける。
「いいえ、これも任務のためだと思ったら耐えられます」
目が死んでいる。
「なんで無視するの」
拗ねる美久。
今回のはさすがにやりすぎな行為のため叱りたい。
が、叱ると何を起こすかわからないので
優しく指摘することにした。
「今回の美久の好意は嬉しかったけど、
同時に周りの人に迷惑をかけていたよね?
次は周りの人に迷惑をかけずに好意を伝えてくれると嬉しいかな」
完璧な優しい指摘だ。
美久は数秒間押し黙った後
「...わかった」
本当にわかったかは不明だが返事はした。
指摘をうけて、少し落ち込んでいる様子だった。
...
翼が俺に目配せをしてきた。
そろそろ修理屋に行ってほしいらしい。
「美久、もう少し時間あるよな?
一緒についてきて欲しい場所があるんだけど」
場所は伏せて誘った。
「熱海君とならどこへだって行く♡」
……さっきまで落ち込んでたのに回復早すぎないか?
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