9話:デートのお誘いメールを作成しようとしたら指定先がニッチすぎた
「何で修理しないといけないんだ?」
俺は渋るつもりで返信した。
数分後。
ピロン。
翼から返信。
「以前、ゲーセン跡で美久さんの生体反応が消えたことについてお話ししましたよね。
美久さんの首についていたあれ、実は生体反応発信機でして、
上官に報告したところ修理するよう依頼されたんです」
「それと、これは上官には言っていませんが、
美久さん、昨日、海で記憶が一部消失していましたよね。
念の為点検が必要かと思いまして」
....拒否する理由がない。
仕方がない。行くしかないようだ。
...
「うーん...」
熱海は悩んでいた。
美久を誘う文面はどうすべきか。
どんな文面だろうと来てくれるとは思うが、
(最悪、集合時間と位置情報のURL貼って、ここ集合とかでも応じてくれそう。ではあるが)
最低限、男として、紳士的な誘い方はしたいと思っている。
いくら不真面目でも女の子にモテたい気持ちは少しはある。
いや、
「相手はロボットだろ」とか、
「危ない相手だろ」とか、
内なる二人目の俺がツッコんできそうだが。
これは将来の相手のためだ。決して美久のためではない。
...
翼に指定された修理屋の近くには何があるか調べる。
「...何だこれ」
絶句。
デートにふさわしいと思えるような場所が何一つない。
周辺は、「自動車整備工場と製薬工場と...牛乳工場?」
何で工場地帯にあるんだよ!?
言いたくなったが、まあ修理屋だもんな。そこにあるのには納得と言わざるを得ない
「工場か...見学とかってできるんだっけ?」
それぞれの工場を調べる。
製薬工場は見学NGのようだ。
自動車整備工場は見学できるが、、女の子が楽しいと思えるのか?
最後、牛乳工場、見学はできる。
楽しいと思えるかは微妙だが自動車整備工場よりはまだ興味を持ってもらえそうだ。
決めた。
牛乳工場見学の程で誘うか。
「今日空いているか?
よかったら、一緒に牛乳工場で工場見学してくれないか?
昨日コーヒーたくさん買ってくれただろ?
俺、コーヒーも好きなんだけど、最近よくコーヒーに牛乳を入れて飲んでいて、
気になっている牛乳の工場が、工場見学者に限定牛乳を配布するらしいんだ。
少しでも多く手に入れたいから一緒に来てくれると嬉しい」
...うん。我ながら完璧な文面だ。
送信っと。
瞬間。
ピロン。
「是非!ぜひぜひ!熱海君から誘ってくれるなんて♡歓喜♡すぐに向かうね♡」
即返信だった。
というか
すぐ向かう...?
どこへ...?
....
数時間後、俺は待ち合わせ場所に向かった。
遠くからでもわかる。
叫び散らかしている声。
周囲の工員らしき人たちがざわついている。
「海でのことと言い、何であなたがいるの!?」
「そういえばあなた女の子よね、熱海君に好意があるの!?」
「横取り目的で近づいているんだったら、わかっているんでしょうね!?」
近づいてみると叫び散らかしている人物は美久で、向かいには翼がいた。
翼は「今日もたまたま遭遇しただけです」
冷静に返答している。
「たまたま!?ワタシと熱海君のデートの邪魔をしに来たようにしか見えない!」
美久は激昂している。
うわあ...
嫌なものを見てしまった...
ふと、翼はこちらに気づいたようだ。
助けを求めるような目をしてこちらを見ている。
早く行ってやらないと翼が可哀想だ。
「待った?」
「ううん、全然待ってないよ♡」
一瞬で美久の機嫌が直った。
翼は俺にしか聞こえない声で
「実はあなたから待ち合わせの場所の連絡をもらった直後からすぐに向かったんですが、
そこにすでに美久さんがいたんですよ」
「そのため隠れる隙もなく、見つかってしまい、今までずっと問い詰められていました。
本当は修理屋に行くところで遭遇する予定のはずだったのに。はあ」
翼は非常に疲れていた。
翼に連絡したのは美久にお誘いメールをした直後だったはずなのに。
メールもらった瞬間直行したのか??
それにしてもこの二体のロボットには待ち合わせ時間という概念がないらしい。
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