第3話 順番のリスト
昼の終わりが駆け足で近づくのが、もう当たり前みたいになっていた。時計の針は気前よく間を飛ばし、チャイムは十分刻みで日をけずる。二十一時間という数字が喉の奥で引っかかって、僕らは水で流し込みながらそれを飲み下していた。
放課後、写真部の部室。蛍光灯は一本ずつ間引かれ、机の影が長い。暗室のカーテンは端がほどけ、そこから冷えた薬品の匂いが細く漏れている。凪は椅子の背もたれに腕をかけ、静かに呼吸を整えていた。僕は手帳とポラロイド、予備のフィルムを並べて、今日の分の記録の準備をする。扉が開いて、桐生が入ってきた。
いつもの無精ひげ。けれど、目の下のくまは昨日より濃い。持っていた紙袋を机に置いた拍子に、中で瓶が小さく音を立てる。桐生はドアに背をもたせて、しばらく黙ってから言った。
「さっき、兄貴から電話があった」
凪が顔を上げる。僕もペン先を止めた。桐生は口の中で言葉を転がすみたいに、ゆっくり続けた。
「研究機構に勤めてる兄貴だ。こないだの事故の詳しい部署じゃないけど、社食で回ってくる噂話のレベルだって前置きでな。……消えてるのは、寿命でも病でもない。“存在の順番”だって」
部室の空気が、さらに薄くなる。凪が椅子をひく音がやけに響いた。
「存在の、順番?」
「定義は曖昧だ。生まれた順でも、出会った順でもない。兄貴の言い方をそのまま持ってくるなら、世界が内側で保持している“参照順”。ファイルの読み込みみたいなもんだ。どれから呼ぶか、どれを後回しにするか。世界が自壊するなら、負荷の少ない端から切り落としていく。そう考えると、合理的なんだとさ」
合理的、という言葉が机の上で鈍く光った。合理性は、冷たくて、正しいぶんだけ怖い。凪は自分の指を見つめ、それからカメラのストラップを握り直した。
「参照……順。だったら、わたしたちの“順番”はどうやって決まるんだろう」
桐生は胸ポケットから小さなメモを出し、一行だけ書かれた文字を見せた。
〈中心が強いほど残る。周辺から消える〉
「兄貴の上司の上司の、そのまた上のプレゼンの端っこに、そう書かれてたらしい」
「中心……」
凪の声が落ちる。僕は喉の奥の引っかかりを、ようやく言葉にした。
「つながりの薄さ、かもしれない」
ふたりが僕を見る。僕は鞄から印刷した紙束を取り出した。校内の写真。四月の集合写真から、文化祭のスナップ、部活紹介の掲示。さらに、SNSで上がったクラスメイトの日常。昨日から今日にかけて、昼休みと放課後を全部使って集めた。プリントの右下には日付と二十一時間表記を書き加えてある。
「消えた人に共通するのは、真ん中にいないこと。言い換えると、“中心”から遠い。たとえば、一昨日の空席、八番。座っていたはずの人の名前は誰も出せない。写真を追うと、その人はいつも列の端、角、端っこにいる。輪のなかにいても、視線が向かいにくい位置にいる。SNSのやり取りのログも薄い。いいねは押すけど、返信はほとんどない。体育祭のリレーも、補欠の補欠」
言いながら、僕自身の胃が冷えていく。言葉は刃物みたいだ。切れるから役に立つ。切れるから、触ると痛い。
「中心にいるほど後回し。周辺ほど早い。世界が負荷の少ない端から切るなら、端から落ちる」
桐生は腕を組み、少しだけ目を細めた。凪は口を結び、窓の外を見た。夕暮れの色が階段の手すりに溜まり、そこからじわじわ漏れている。
「じゃあ、わたしたちは——後のほう?」
凪が夕陽のほうに向けて投げた言葉は、ゆっくりこちらへ戻ってきた。僕はうなずけなかった。凪は誰かの中心で、同時に僕の中心でもある。彼女が消えるのは、いちばん最後であってほしい。最後まで残って、最後に泣いてほしくない。でも、うなずくということは、順番のなかに彼女を置くことだ。リストのなかに、人の名前を並べるみたいに。
「……わからない」
そう答えるのが精一杯だった。凪は「そっか」と小さく笑って、指先を机の端に置いた。
「ねえ、桐生先生」
凪が目を離さずに言う。桐生は返事をせず、代わりに部屋の電気を一本、さらに消した。影が濃くなる。
「先生の兄弟さんは、なんて言ってました?」
桐生は肩で息をして、それから言葉を選んだ。
「“つながりの線を増やせ”。本気で言ったのか、慰めで言ったのかはわからない。線を増やせば中心に近づける。参照される回数が増えれば、優先度が上がる。……でもな、それをやるために誰かを踏み台にするような真似だけは、絶対にするなって」
凪は黙って頷いた。僕も頷いた。救いのある言葉は、いつだって同時に難しい。
部室を出ると、夕方はもう夜に近かった。二十一時間に縮んだ一日の、斜面の角度は急だ。階段を下りる足が速くなる。僕らは図書室に寄り、四月の学校だよりをコピーし、職員室前の名簿の写しを撮り、SNSのログをダウンロードした。校内の掲示板は新しいものが増えて、電車の減便、街灯の間引き、公共施設の日勤夜勤の境界が繰り上がることが赤い文字で告知されていた。そこには妙に明るいフォントで、適応のコツ、と書かれていて、最後に「落ち着いて」とあった。落ち着くための“落ち着いて”は、たいてい効かない。
校門の外、ガードレールにもたれて空を見る。陽はまだ赤いのに、街灯が勝手に点く。点灯時刻の設定が繰り上がったのだろう。商店街ではシャッターが降りる音が連続して、金属のこすれる匂いが路地に溜まった。踏切は遅れて鳴り、電車は先に過ぎた。線路の向こうの市役所の庁舎は、窓が半分しか明いていない。中で光る蛍光灯が、見えない指で数えられているみたいだ。
「帰ろっか」
凪が言う。僕らはそれぞれの帰り道へ分かれた。凪は振り向き、すぐに振り向いたことを後悔したみたいに前を向いた。僕は片手を上げて、それ以上は何も言わなかった。言葉は今日は、もう使いすぎた。
家に帰ると、リビングのカレンダーの数字が、ぺりりと剥がれているみたいに見えた。指で触ると、紙はもちろんそのままだ。でも、目はそこに穴を見る。母は台所にいて、鍋の蓋を開け閉めしながら、明日の買い物のメモに印をつけていた。
「電池、買っといてね。夜長くなるのか短くなるのか、よくわかんないけど」
「短くなる」
僕の声は自分でも驚くほど硬かった。母は振り向いて、すぐに笑顔をつくった。
「そうね。早く寝なさい」
僕は頷いて、自室に戻った。机にすべてを並べる。ポラロイド。スマホのボイスメモ。手帳。ボールペン。四月の集合写真のコピー。職員室前の名簿の写し。クラスのSNSのスクリーンショット。昨日拾った体育祭のスナップ。そこに写る空白の位置に、赤鉛筆で小さな円を描いた。
深呼吸して、作業を始める。スクリーンショットの会話から、投稿者の名前を拾い、誰が誰に反応しているか矢印を引く。反応の回数を数え、線の太さを変える。行事写真の顔の向きを見て、視線が集まる場所に丸を打つ。打点は、教室の座席の位置と重ねると妙に納得のいく形をつくった。ところどころ、穴がある。そこにいたはずの人がいないぶん、形は歪んでいる。でも全体のパターンは残っていた。中心に近い場所が、赤い斑点みたいに濃くなる。端が薄くなる。
凪の位置は、分かりやすかった。いつも人に囲まれ、笑いかけ、手をあげる。誰かの相談を受け、写真を撮り、配る。中心の熱が、彼女の周りにある。似た熱を持っているのは、委員長の宮原。軽音のリオ。サッカー部の連中。逆に、四月から五月のあいだに輪に入れなかった新入り、帰宅部の男子、昼休みに屋上へ行く数人、文化祭の準備で一回も名前の出なかった三人——それが、薄い。
僕は手帳の新しいページに、タイトルを書いた。
〈順番の仮説:中心性ヒートマップ〉
そこに、今わかっている名前を小さく配置していく。透明なシートを重ねて、時間ごとの変化も書き足す。六月一日、二十三時間。六月二日、二十二時間。六月三日、二十二時間。六月四日——予定は二十一時間。夜の切断音の回数を、別の欄に書く。六月一日は一度。二日は二度。さて、今日は。
窓の向こうで風が鳴った。路地の街灯が一度明滅して、すぐに落ち着く。僕はボイスメモを起動し、録音のレベルを上げる。ポラロイドのフラッシュを切り、シャッターを押しても音が外へ漏れないように布で包む。部屋の灯りを消し、窓際の床に座った。耳を澄ます。鼓動が音になる。息が雑音になる。僕は息を細く、細く吐いた。
“シャリ”
最初の一度は、遠かった。風の稜線の向こう側。録音の波形が、画面の端に小さく山をつくる。
“シャリ”
二度目は、昨日よりも乾いた。金属の刃が紙の目に沿って滑る音。少し近い。
“シャリ”
三度目は、窓のすぐ外で鳴った気がした。思わず身を引く。指先が白くなり、布がカサリと音を立てる。外の路地で影がほどけ、別の形に結び直されたように見えた。目の錯覚、だと思いたかった。録音の画面には、同じくらいの高さの小さな山が三つ並んでいる。保存。ファイル名は「6_4_21h_cut3」。
いつもより早い時間に眠気が来た。というより、眠気が来るのを待たずに日が終わる。二十一時間目の半ばで、世界がすっとページをめくる音がした。次のページに余白は少ない。僕は手帳を膝に乗せたままライトを点け、文字を書き足した。
〈切断音:三〉
〈公共〉電車減便・街灯間引き・市役所の交代制繰上げ。人より施設から先に削る(節約のため/参照の少なさ)。
〈校内〉名簿の穴は枠ごと詰められる。座席番号の繰上げ。体育は「配置変更」。言い換えは消滅の化粧。
〈ネットワーク〉端が落ちる。中心が後回し。でも、中心もいつか“後回しの順番”が来る。
ペンの先が止まる。止まった隙間から、言葉が落ちてくる。拾うか迷い、拾ってしまう。
〈自分は切られない〉
書いた瞬間、全身に寒気が走った。見られてはいけないものを見たような。手帳を閉じかけて、やめた。ページを開いたまま、手を腹に当てる。シャツをめくる。腹の右側、肋骨の下から斜めに走る一本の痕がある。薄く色が抜けた皮膚。縫い目の跡が規則正しく並び、今はもう痛くないのに、触れると内側が覚える。
事故の前夜。世界が切り始める、その直前の夜。僕は病院の手術台の上にいた。短い説明、眩しいライト、金属の匂い。麻酔のにおいに世界が少し遠くなる瞬間。意識の縁がゆらぎ、誰かの声が上から降ってきた。名前を呼ばれた気がした。呼ばれて、こちらが返事をする前に、スイッチが切り替わるみたいに暗くなった。
目が覚めると、朝だった。病室の窓の外で、看護師が話していた。「標準時の調整」と、さらりと言う声。テレビは明るいニュースの調子で、二十三時間を読み上げていた。ベッドに横になったまま、僕は腹の痕を指でなぞった。縫い目のひとつひとつ。痕は、世界の切断線に似ていた。切られて、繋ぎ直され、残された跡だ。
そのときから、僕は“切られない”ことを、どこかで知っていたのかもしれない。知っていたのに、言わないでいた。言ってしまえば、ほつれる気がした。僕は口の中で小さく謝った。誰に、ということもなく。凪に。八番の席の誰かに。体育の先生に。桐生に。僕自身に。
手帳を閉じ、枕元に置く。腹の痕は、見なかったことにするには大きすぎる。でも、見つめすぎると飲み込まれそうだ。僕はライトを消し、暗い部屋で耳を澄ました。遠くで、救急車のサイレンが短く鳴り、街灯が一度だけ瞬く。世界は自分で自分を確かめるみたいに、数秒遅れて正気に戻る。
翌朝。六月四日。スマホの画面は〈6/4(21h)〉を示していた。短い朝。母は眠そうな目で僕に弁当を渡し、テレビは今日も優等生みたいな顔で「適応のコツ」を並べる。路地では、新聞配達のバイクが二回通った。一本目は投げ忘れ、二本目は時刻表の変更のお詫びのチラシだった。ポストの口がきしむ。金属は変化に正直だ。
学校の昇降口は、すでに人が減っている。窓の掲示の張り紙がまた増え、そこに“休講”の黒文字が並んだ。教室の扉を開けると、また机の配置が変わっていた。列が詰まり、番号が詰まる。誰も驚かない。驚き続けるための余白が、もう残っていないのかもしれない。朝のホームルーム、森本は笑顔をつくって、口を開いて、閉じて、少しだけ首を振った。配るプリントの束が、いつもより薄い。
凪が席につき、僕に目配せをした。彼女の目の下にも、ほんの小さな影があった。僕はうなずき、手帳の端を見せた。彼女はそこに書かれた太い字に、ほんの少しだけ眉を上げ、何も言わなかった。言わないことで共有するものが、僕らの間に一本、増えた。
昼休み、屋上へのドアは鍵がかかっていた。風の強い日は危ないからではなく、昼休みが短くなって、上がる意味が薄れたからかもしれない。食堂は簡略メニューしかなく、白い紙に黒い文字で「カレー・うどん・パン」と並んでいる。注文の列は短い。レジの女の人は「またね」と言いながら、お釣りの硬貨を少なめに間違えた。すぐに気づいて、足した。足すときに、小さく笑った。
放課後、桐生に会いに行く。彼は部室にいた。窓枠に肘をつき、目の下の影は昨日と同じだったが、口元の線は今日のほうが柔らかかった。僕らが入っていくと、桐生は机の上の紙束を指差した。
「見たか。市の資料。『参照負荷軽減の観点から』街灯の間引きが決まったそうだ。言葉ってのは便利だよな」
「便利すぎます」
「だな」
僕は手帳を開き、作業の成果を見せた。中心性の図。赤く塗った濃淡。欠けていく人のパターン。凪は横で、黙って見ていた。桐生は長く息を吐いてから、僕の頭をぽんと叩いた。
「よくやった。……けど、やりすぎるな。お前がどこに立ってるか、時々確かめろ。地面が抜ける」
「抜けたら、写真で埋めます」
そう言うと、桐生は短く笑った。笑いはまだ硬いが、昨日より少しだけましだった。
帰り道、夕陽はすぐ背中に来た。影が前に伸びる。凪がその影を踏んで、すぐどいた。
「ねえ」
「うん」
「わたしたち、中心にいるから後のほう、なんでしょ。たぶん」
言葉は質問の形をしていたけれど、答えを求めていない声だった。僕は立ち止まり、息を吸って、吐いた。
「凪は、誰かの中心だよ。たくさんの、誰かの」
「あなたも、だよ」
凪は迷いなく言った。その直球に、少し笑ってしまう。笑いながら、腹に手を当てる癖が出る。シャツの向こうで、痕は静かにそこにある。切られた。繋がれた。残った。僕だけが、順番から外れる理屈。でも、理屈が通るほど、心は楽じゃない。
「ねえ」
凪がもう一度言う。夕陽の色が彼女の髪に乗る。
「もし、順番が本当にあって、誰かが端から落とされるなら。……線を伸ばせるかな」
「伸ばす?」
「写真を撮るみたいに。わたしたちから端っこの人に、線を伸ばす。参照する。そしたら、順番が少し、ずれるかも」
僕は彼女の横顔を見た。真っ直ぐで、怖がっていて、それでも前を見ている顔。
「やろう」
言葉が出た。迷いはあとから来るだろう。やる前に来た迷いは、やることでしかおとなしくならない。
夜。窓の外の路地は、人影が減った。街灯は一本おき。電柱の根元の白い粉は、雨が降らないのに少しずつ薄くなっている。風が持っていっているのだろう。あの粉は、何の粉だろう、と考えてはいけない。考えると、目の裏に小さな穴が空く。穴を埋めるのは、写真と、字と、音だ。僕は録音アプリを開き、今日のファイルにメモをつけた。
〈仮説〉中心性を上げる行為で消滅を遅らせることができるか。撮る、呼ぶ、書く、触る。やり方は限られているが、ゼロではない。
そして、最後にもう一行を足す。書くたびに寒くなる一行。
〈自分は切られない〉
書いたあと、掌が汗で湿った。シャツの裾で拭き、腹に当てていたもう片方の手をそっと離す。痕は、そこにある。世界の切断線に似た一本。そこだけ、時間が止まっているみたいな感覚。僕は息を吐き、カーテンをわずかに持ち上げた。
“シャリ”
今日も、音は来た。三度。録音の画面に小さな山が三つ並ぶ。世界は薄くなり続ける。けれど、ページの余白は、まだ少しだけ残っていた。そこに僕は書く。書いて、貼る。名前のかわりに番号を打ち、番号のかわりに温度を書く。温度のかわりに、指の震えを書く。震えは、まだ生きているという合図だ。
合図を、写真にして残す。残すことは無力じゃない。無力じゃないと信じることが、今できる最初の仕事だ。順番のリストは、冷たい。けれど、その冷たさのなかで、僕たちはまだ指を動かせる。動かして、線を伸ばせる。端のほうへ。消えやすいほうへ。そこに誰かがいる。名前は思い出せなくても、輪郭は指でなぞれる。
そのとき、机の上のスマホが震えた。画面に光る新着通知。クラスのグループの名前が表示され、短いメッセージが一つ。読んだ瞬間、口の中が乾いた。
〈明日の朝練、なし〉
送信者の名前は、空白になっていた。丸いアイコンに、灰色の人の形だけが残っている。誰だったか、はっきりしない。けれど、その人がいつも朝練を仕切っていたことだけは、体が覚えていた。指が、スマホを強く握る。画面に指紋の跡がつく。
順番のリストは、更新され続ける。だから僕も、更新をやめない。ページは薄い。日も薄い。けれど、まだ、書ける。
僕はペンを取り、次の行にゆっくり書いた。
〈明日、線を伸ばす。端へ〉
そして一拍置いて、もう一度、深く息を吸った。六月四日の終わりは、やはり早かった。けれど、終わる前に書けた。書いたから、たぶん、次に渡せる。
そう信じることが、今夜の眠りのための条件だった。瞼を閉じると、腹の痕がじんわりと温かくなった気がした。世界の切断線みたいな一本の線。僕がそこにあることを、世界の外側が参照し損ねるなら、内側から名指す。名前を呼び続ける。僕は、僕を。凪は、凪を。八番は、八番を。体育の先生は、どこかで自分の名字の断片を拾えるように。拾えるまで。
音が、また遠くで鳴った。今夜は三度。きっと明日は、もっと近い。だからこそ、線を伸ばす。中心から端へ。端から、もうひとつ先の端へ。そこまで届いたとき、順番が一行だけ、遅れるかもしれない。
それだけで、今は十分だと思った。




