地味令嬢、婚約者(偽)をレンタルする
私、ルチアはダミアーニ伯爵家の長女として生まれた。隣領のヴェントーラ侯爵家は親同士がとても仲が良い。でも息子のファウストは最悪だ。会う度に私の容姿を「地味だ」と揶揄ってくる。
確かに、私のゆるく波打つ黒髪と菫色の瞳は、ファウストの金髪碧眼に比べれば控えめだ。でも自分としては気に入っている。小さいときのファウストは天使のようにかわいらしく、私とも仲良くしていたのに、背が伸びて貴公子然とした今は、どういうわけか私にだけ当たりがきつい。――いつも些細なことで喧嘩になってしまう。
15歳になると、この国の貴族の子弟たちは皆、王都にある王立学園に入学して、教養と交流を深める。初めて住む王都、新しい友だち――私は学園生活をとても楽しみにしていた。そんなある日だった、虫唾が走るような知らせを耳にしたのは。
「私とファウストが結婚?!」
親は新たに領境で見つかった鉄鉱山の開発のため、ヴェントーラ侯爵家と共同事業が必要である、政略結婚と思って嫁ぎなさいという。いくら抗議をしても、侯爵家からの申し出だから、と言って聞き入れてもらえなかった。
気が向かないまま、顔合わせに向かう。だけど――最初は少しは婚約者らしい雰囲気になるかとちょっとだけ期待した。
「ごきげんよう。婚約者様。」
完璧なカーテシーで挨拶したはずだった。ほんの一瞬、彼が私を見つめ、顔を赤らめたように見えた。でもこちらをまっすぐと見つめた双眸に、すぐに陰が差した。
「ルチア、仮にも婚約者として会う初めてのお茶会なのだから、もう少しその……うれしそうにできないのか?」
残念そうに彼が言う。どういう意味だろう?内心ざわついたが、貴族らしくアルカイックスマイルを浮かべて答えた。
「突然のお話でしたから、私、心の整理がついていませんの。」
「ドレスも……この前うちに着てきたドレスと同じじゃないか?こういう時、女性は張り切って身なりを整え、殿方に会いにいくと聞くぞ。」
「あら、よく他人が着ていたドレスなんて覚えていますね。」
髪の毛はいつもより時間をかけて、専属侍女のジーナがセットしてくれた。まさか前回着ていたドレスを覚えているとは。ファウストの記憶力の良さと目ざとさに思わず目を剥いた。婚約者として仲良くできると期待した自分がやはり馬鹿だった。これでは、まるで世間で噂に聞く『姑』のようだ。
「うぐっ。君のお小遣いが足りていないというわけではないだろう。俺に会うのに派手にしろというわけではないが、ただもう少し着飾るという意欲はないのか。」
「そうですね。ありませんね。」
実のところ、私の服の趣味は壊滅的に悪い。これは侍女たち全員が口を揃えて言うから間違いない。だから母が買ってくれたドレスだけを着ている。もう数年、自分からねだることもしないから、数少ないドレスからやりくりしている。侍女たちが気を使って、コーディネート頑張ってくれるが、ドレスがかぶってしまうのは仕方のないことだった。
「――それはつまり俺のことをなんとも思っていないということか?」
「そうは言っていないです。」
「じゃあどうして、うれしそうにしないんだ?」
「そう言われましても、ここ最近あなたとは喧嘩しかしてませんし。」
「ああ、もううんざりだ。お前といるとどうしていつもこうなってしまうんだ。」
ファウストが唇を噛みしめた。
「それは、あなたが初めに喧嘩を売るからでしょう?」
「ああそうか。お前の考えはよく分かった。そもそも俺は学園でかわいい令嬢を見つけて、仲良くしようと思っていたんだ。なんでお前と婚約なんてしなきゃいけないんだ。」
おお、ついに本音が出たか。
「それは、こちらのセリフですわね。」
売り言葉に買い言葉でつい口走る。
「親の意向だから結婚はする。だが婚約者だということは学園を卒業するまでは、絶対誰にも言うなよ。俺は学園でつかの間のモラトリアムを堪能させてもらう。いいか。学園で会っても話しかけて来るなよ。」
「ええ、ありがとうございます。では私も学園生活を満喫させて頂きますわ。」
手に持った扇子をテーブルに叩きつけて、立ち上がる。ああ、やってしまった。私にだって婚約者になったからには、昔のように仲良くしたいという気持ちはあったのに。
きっとお茶会での出来事を両親に話しても怒られるのは私だ。だから帰るまでにスッキリさせないと。帰りの馬車で侍女のジーナに愚痴を聞いてもらう。ジーナはくるくるとした茶色の巻き毛に茶色い瞳、そばかす混じりの頬が愛らしい。まるで小動物のようだ。少しおっちょこちょいだが、いつも一生懸命で私は好きだ。
「すみません。お嬢様。まさか同じドレスだったとは。専属侍女としてあるまじき大失態です。」
「いいのよ。悪いのはアイツだから。」
「このジーナ、今度のアンナマリア様のガーデンパーティーではお嬢様を必ずや令嬢一の美少女に仕上げて見せます。」
そこまで言われて、私はやっととんでもない『約束』をファウストとしてしまったことに気づいた。
「どうしよう、ジーナ。アンナマリア様に今度のガーデンパーティーで婚約者を紹介するって言っちゃったのよ~。」
アンナマリア様は公爵家の令嬢。そして令嬢たちを牛耳る偉大な存在だ。そんな彼女に婚約者と早速仲たがいしましたと馬鹿正直に言ったら、なんと噂されるか分からない。令嬢たちは時に辛辣で残酷だ。『婚約者に愛されぬ令嬢』『女として魅力のない地味令嬢』――耳にしたくない悪名が次々と思い浮かぶ。
「困ったわ。実に困ったわ。」
馬車を降りた後も頭の中はぐるぐるしていて、気づけば自室に籠っていた。結局いくら考えても、いい考えは思い浮かばなかった。
「ルチア、ファウスト様とのお茶会はどうだった?昔みたいに仲良くできた?」
夕食の席で母がにこにこしながら、聞いてくる。まさか早速喧嘩をしたとも言えず、黙りこくる。
「今は上手くいかなくても、そのうちお互い素直になれるわよ。」
母は私の沈黙に何かを察したようだが、お角違いである。仮に素直になるなら、私も彼もさっさとこの婚約を破棄したいのだから。
それからあっという間に時間が経って、私は学園入学のため、王都のタウンハウスに移り住んだ。そして、ついに良い案が思い浮かばないまま、ガーデンパーティーまで残り一週間になった。
王都のタウンハウスは自領の屋敷より手狭だが、かわいらしい赤レンガ造りの建物で庭には薔薇も咲いている。今日も一人考え事しながら、中庭でお茶をしていた。そんな時、父の怒鳴り声が家中に響いた。
「もう君の家には十分支援してやっているだろう。さらにたかるつもりか!!」
父の書斎の方を見ると、窓越しにはとこのバルドが父に頭を下げているのが分かった。彼は二つ年上で、既に学園で勉強している。そういえば、王立医学校に進学したいから、お金を援助してほしいって何度もうちに尋ねに来ていたっけ。
バルドの実家、ロマーノ辺境伯家は土地柄治めるのが難しい土地だ。何度も飢饉や災害に見舞われ、その度うちが支援してきたと聞く。その上さらにとなれば、私以上に短気な父が怒るのも分からなくもない。
ただ家を継ぐことができない三男の彼が、実家に頼らず堅実に生きていくために、資格を取るのは正しい選択だ。実家に頼れないから、親族の中でも事業が上手くいっているうちを頼ってきているんだろう。
その時だった。私はひらめいてしまった。これしかない。小走りで、父の書斎に向かった。
「父さま!!」
「なんだ、ルチア。客人の前だぞ。お前も学園に入るのだから、もう少し淑女らしくできないのか。」
「申し訳ありません、お父さま。ですがお願いがありますの。」
父は、短気で時に頑固だが、娘には基本甘い。あきれたように言う。
「それで、願いとはなんだ?」
「バルド様を私の家庭教師にしてくださいませ、私の学園卒業まで。」
ちょうど両親は、王都で私の家庭教師を探していると聞いていた。
「家庭教師だと?」
「ええ。お父さまが、見返りなくバルドにお金を渡すことを渋られるのであれば、私に勉強を教えていただけばよいのです。バルド様は優秀で、学園の成績がとてもいいと聞いています。そんな彼に勉強を教えていただければ、私も心強いです。専属家庭教師のお給金であれば、それなりの額になります。もちろん医学校の学費はそれだけで賄えないでしょうが、バルド様ならなんらかの奨学金も得られるのではないでしょうか?」
「……うむ。家庭教師にはサンチェス子爵夫人を考えていたが。」
え、彼女は礼儀作法にうるさいと聞いたことがある。親としては、学園の勉強よりも淑女教育に力を入れたいということか。
「これからの学園生活で1番大切なことは、人生の基盤になる教養を学ぶことです。学園の勉強までサンチェス子爵夫人がみられるのですか?」
「むむ、しかし……。」
「礼儀作法は伯爵令嬢として恥ずかしくないよう、十分教えられてきました。ご心配なさらずとも、お茶会では楽しくやっておりますわ。それより学園の勉強の方が心配です。ですから、バルド様が必要なのですわ。お父さま。」
「お前がそこまで言うなら、バルド君、君をルチアの家庭教師に任命する。その給金を医学校の学費に使いたまえ。」
「ご配慮いただき、ありがとうございます。ダミアーニ伯爵、ダミアーニ伯爵令嬢。」
バルドは真摯な眼差しで、深々頭を下げた。私と同じ黒髪に菫色の瞳だが、瞳の色は私より少しだけ濃い。背が高いせいか、不思議と華やかさがある。
「では、バルド様こちらに。自室に案内いたしますわ。今後の学習計画についてお話したいです。」
父の部屋から、自室までバルドを案内する。部屋に入るとバルドは訝し気にこちらを見た。
「――で、君は一体何を企んでいるんだ?急にあんなことを言い出して。」
ファウストほどではないが、親族同士の付き合いでバルドとも小さい頃からよく会っていた。私が勉強を教えて欲しいと言い出したことがよほど意外だったのだろう。
「家庭教師の件は本心ですわ。学園の入学前に勉強の心配をするのは普通のことでしょ。」
「本当にそれだけか?」
さらに、眉間にしわを寄せ、怪しむ表情をこちらに向ける。
「さすが勘がよろしいですね。――実はあなたに私の"婚約者"としてレンタルしたいの。」
「レンタル?!」
そこから私とファウストの間にあったことを話した。
「――それは君が素直に謝ればいいのでは?」
「素直ってなんですの?素直になるなら、こんな婚約、一刻も早く破棄したいです。」
「そ、そうか。分かった。つまりその"レンタル"というのは、婚約者の同伴が求められる場面で君をエスコートするって意味でいいかな?」
「ええ、そうですわ。バルド様と私は、はとこ同士です。婚約者がいない子女が親族にエスコートを頼むことは自然な流れです。それに、非嫡子であるバルド様との関係を、バルド様が医療師の資格を取られるまでは公にしたくないといえば、アンナマリア様も納得して黙っていて下さるはずです。」
「それはそうだが、かなり強引では?そもそも、いつからファウストと仲たがいしたんだ?昔は仲が良かったじゃないか?」
「昔って子どもの頃の話でしょう。ここ何年も、会ったら喧嘩しかしてないの。この前もドレスのこと馬鹿にされたわ。」
「――ドレスと言えば、ガーデンパーティーにはどんな服を着ていくんだ。」
ガーデンパーティーの服か。いつも侍女任せで、自分で決めていない。侍女のジーナが、バルドにクローゼットを見せる。
「君はこれしかドレスを持っていないのか?姉さんはもう結婚して家を出ているけど、この10倍はドレスを持っているぞ。」
バルドは少し驚いた様子だ。私は、どうやら一般的な貴族令嬢というものが、よく分かっていなかったようだ。
「君のそういうところ全く変わっていないな。ふふ。まあ私は嫌いじゃないが。まず初めの授業は、ドレスだ。今から、ドレスを買いに行くぞ。」
バルドに言われるがまま、ドレスを買いに王都の街に出る。ジーナもはしゃぎながらついてきた。王都のブティックは、私も彼女も初めてだ。その中でも今流行だというお店に連れてきてもらった。
「うわー、随分いっぱいドレスがあるのね!」
「どれでもいいぞ、好きなの買ってやる。」
バルドがふんと胸を張る。
「え?いいの。お小遣いなら余っているし、私、自分で払うわよ。」
「いや、私からプレゼントさせて、これも家庭教師としての必要経費だから。」
「ありがとう。じゃあ遠慮なく選ばせてもらうわ。」
お店のドレスを物色していく。でも流行というものがよく分からないから、どれも一緒にみえてしまう。そうだ。確かガーデンパーティーはお庭の薔薇を愛でる会だ。そう思って黒地に赤い薔薇のコサージュがついたドレスを掴む。
「――これなんかどうかしら?お庭の薔薇が素敵だって聞いたから。」
あ、間違ったとすぐに分かった。だってジーナは大きく眼を見開いているし、バルドはすぐに言葉が思い浮かばないのか、あんぐり口を開けたままだ。
「分かったわ。ダメってことね。」
「いや、その服がダメだというわけではないんだ。ただそれは露出が多いし、多分夜会、それも仮面舞踏会のような大人が楽しむ会に向けたものだ。昼間に行われるガーデンパーティーには不向きじゃないかな?」
「そうなのね。」
「そうです。お嬢様にはもっとかわいらしい洋服が似合います。」
かわいらしい服か。ジーナにそう言われて、ピンク色でフリルがこれでもかとついたドレスを手に取る。これならいいんじゃないかしら?
「――ではこれは?」
バルドたちの沈黙と視線が痛い。また間違えた。
「それは華やかでかわいらしいね。でも君の髪や瞳の色だとこちらのデザインの方が似合うと思うよ。」
バルドが手にしたのは、薄紫色のドレス。首から胸元は透け感のあるレースで、薔薇の刺繍がたっぷりあしらわれている。スカートの裾は大きく広がっていて、まるで花びらみたいにふわりとしていた。
「バルド様、素敵なAラインのドレスですね。お嬢様こちらにしましょう。さあご試着を。」
言われるがまま試着室に入る。思えば、こんな大人っぽいドレス着るのは初めてだ。鏡の中で自分が別人のようで 思わず見とれてしまった。
「――どうかしら?」
「きゃあ!お嬢様の瞳とぴったりの色味で、花の妖精さんみたいです。素敵でございます!決まりですね。バルド様。」
ジーナの叫び声が、店内にこだまする。
「ああ、よく似合っている。」
バルドがはにかむように笑った。よし、これで"婚約者"とドレスは揃った。完璧だ。
ガーデンパーティー当日は、バルドが家まで迎えにきてくれた。この前贈ってもらったドレスに、手持ちのアメジストのイヤリングを合わせる。ジーナも張り切って髪を結いあげてくれた。
「完璧です、お嬢様。行ってらっしゃいませ。」
「きれいだね。お手をどうぞ、我が君。」
「うふふ、ありがとう。」
これこそ"婚約者"というものだ。手を取られて馬車に乗り込んだ。
「今日は向こうから聞かれた時だけ、あなたを"婚約者"として紹介するわ。でもまだ正式に公表していないから内緒にしてほしいっていうから、あなたも口裏をあわせて。」
「ああ、分かった。その通りにするよ。」
会場に足を踏み入れると、人々の視線がこちらに集まるのが分かった。バルドはすらっとしていて、よく目立つ。地味と言われる自分が、こんなに人に見られるのは初めてだ。とても緊張してしまう。
「大丈夫?手が震えているよ。」
「バルド様と一緒にいると、皆さんがこちらを振り返るので少し緊張しますわ。」
「ふふ、それは違うな。着飾った君が美しいからだよ。」
視線の先、銀髪ストレート美少女の周りに人だかりができているのを見つけた。主催者のアンナマリア様だ。まず彼女にご挨拶しなければ。
「この度は、ご招待いただきありがとうございます。アンナマリア様。」
「あら、ルチア様。今日のドレスよくお似合いよ。お隣方はもしかして!」
「ええ、私の婚約者のバルド・ロマーノ様ですわ。」
後は、もともと考えていた筋書き通り、バルドが医療師の資格を取るまでは関係を公表できないと口止めした。アンナマリア様は取り巻きが厄介なのだが、本人は案外素直なご令嬢だ。すぐに納得してくれた。
「では、バルド様頑張ってくださいね!」
そういって、我々を力強く応援してくれた。ガーデンパーティーは他にも同じ年代の令嬢がたくさん招待されている。知り合いの令嬢と話したり、薔薇を愛でたり、食事をつまんだり、とても楽しく過ごせた。以前、婚約のことをつい口走ってしまった他の令嬢にも、彼のことを聞かれたので、アンナマリア様の時と同じように答えた。
無事に最大の試練、ガーデンパーティーを乗り切ることができた。帰りの馬車でやっとバルドと二人きりになった。
「で、どうだった?私の"婚約者"としてのふるまいは?」
「ありがとう。完璧でしたわ。そうだ!確か学園入学後に新入生歓迎パーティーがあるわよね?その時もエスコートをよろしくお願いします。」
「ええ、喜んで。」
馬車に、西日が差し込んで、バルドの頬を赤く染めた。
***
学園入学後は、新しい友達に、新しい勉強に、新しい遊びで、毎日が楽しかった。バルドは普段は家庭教師らしく、宿題や復習の面倒を見てくれる。まあお金をもらっているから、あんまり私の成績が悪いと困るのだろう。でもとっても分かりやすいので助かっている。
ファウストはあの宣言通り、女の子をとっかえひっかえだ。毎日違う女子を連れて、こちらに見せつけるように話している。女子たちもまんざらではないようだ。そう、ファウストは私以外の女性には紳士的で優しいのだ。
そして、遂に新入生歓迎パーティーの日が近づいてきた。なんとバルドからドレスが贈られてきた。この前のドレスと同じような色味だが、少し濃い紫だ。どちらかというと私よりもバルドの瞳の色に近いかも。胸元は少し大胆にハート型にカットされていて、ウエストのリボンがワンポイントになっている。こちらのドレスもお姫様みたいでかわいい。
「確かに、自分の瞳の色と同じドレスなら何着持っていてもいいわね。」
「うふふ。お嬢様。バルド様に大切にされていますね。」
「これが本当の婚約者なら最高なんだけどね。」
ふとファウストの顔が頭をよぎる。やはり私をエスコートする気はないらしく、入学後一度も連絡を寄こさない。別に構わない。このまま婚約が解消されればいいのに。
新入生歓迎パーティーでは、予定通りバルドに贈られたドレスを着て、夜会用に髪の毛をアップスタイルにまとめてもらった。
「本当にきれいだね。君にぴったりだと思ったんだ。」
うれしいことを言ってくれる。「ドレスが前回と同じだ」とお小言をいう誰かさんとは大違いだ。
パーティー会場は学園の講堂だ。天井には煌めくシャンデリア、床には艶やかな大理石。がっしりと彼の腕を掴んで入場した。この前のガーデンパーティーで会った令嬢たちが、黄色い歓声を上げる。案外バルドは人気のようだ。
まずは早速ファーストダンスを踊る。初めて一緒に踊るけど、バルドはダンスがあまり得意ではないようだ。少しでも相手が踊りやすいようにリードする。続けてもう一曲。本来、二曲連続で踊るのは婚約者だけと言われているが、彼は何といっても、私のレンタル婚約者なのだ。ちゃんと2曲付き合ってもらう。
「ありがとう。バルド、とっても楽しかったわ。」
「君は大丈夫?疲れていない?私はもうクタクタだ。」
「ふふ。私はこのくらい全然大丈夫よ。自領では一日中狩りしているもの。体力には自信があるわ。まあこれだけ見せつけたら、会場の皆は私とあなたを婚約者、もしくはそれに近い関係だと思うでしょうね。」
狙い通りと高らかに笑った。地味で婚約者に見向きもされない令嬢なんて絶対に笑い種にされたくない。私だって多少のプライドというものがあるのだ。その時、誰かが後ろから声をかけてきた。
「おい!」
「あら、これはヴェントーラ侯爵令息ではないですか。ごきげんよう。」
ファウストだ!自分が話しかけるなって言ってたのに。私は嫌味ったらしく、挨拶してやった。
「ごきげんようじゃない。――これはどういうつもりだ?」
そう言って我々をじろりと見る。にらむその碧眼が、いつになく焦っているように見えた。
「だってそういう『約束』じゃないですか?それこそ、あなたは随分と自由を謳歌されてますよね?それより、よろしいの?先ほどあなたがエスコートされていた金髪のご令嬢、放置されて困ってらっしゃいますよ。」
「俺といない時は、楽しそうにするんだな。で、そいつは誰だ。瞳の色のドレスを纏うとは、恋い慕っているとでもいいたいのか?」
今までしょっちゅう喧嘩はしてきたが、こんなに怒っているファウストは初めてだ。うむ、この状況をそのまま実家に伝えられると少し分が悪い。できる限り落ち着いて、話をした。
「ドレスは私の瞳の色に合わせて選ばせて頂きました。こちらは、はとこのバルド様。私の兄のような方です。学園で成績がとてもよいので、この度、私の家庭教師をして頂くことになりました。婚約者がいないものが親族にエスコートを頼むのは普通のことでは?」
「では、なぜ2曲踊った?お前だってその意味くらい分かっているだろう?」
射抜くように鋭くにらまれる。強く握りしめた拳。今にも殴りかかってきそうな形相だ。
「あら、気づきませんでしたわ。バルド様と踊るのが楽しかったので。そもそものお話ですが、学園内で話しかけるなというのは、あなた様が言い出したことです。こちらは今後も守らせて頂きますので、どうぞお声をかけないでくださいまし。」
バルドは隣で我々の様子をみて、冷や汗をかいてる。巻き込んでしまって申し訳ないが、あなたを家庭教師に推薦したのは、この私。それにこの役割をお願いできるのは、あなたしかいないのだ。医学校の学費のために付き合って頂く。ファウストは、心細そうに迎えに来た金髪の令嬢を連れて、私たちのもとを後にした。
「バルド様、ご迷惑をおかけしました。それにしてもファウストが話しかけてきたのは、想定外です。」
「いや、いいんだ。私はある程度覚悟はしていたから。」
バルドは何かを悟ったような表情で、ため息をついた。
新入生歓迎パーティー以降、学園の生徒たちは、すっかり騙されて、私とバルドのことをお似合いなカップルだと噂した。私は、彼との関係を聞かれると決まってこう答えている。
「彼は私のはとこで、家庭教師なの。結婚って言う話になるとバルド様はロマーノ家の三男だから、一人で稼げる職業にまずついていただかないといけないでしょう。医療師を目指してらっしゃるから、頑張って欲しいわ。医学校への学費もうちで援助することになっているの。」
全て事実であるが、これを聞くと、結婚前提で付き合っているんだろうと勝手に邪推してくれる。私の平穏な学園生活が担保されたのだ。
もし仮に卒後、私がファウストと結婚することになっても、あれは鉄鉱山の事業提携のための政略結婚だ。より良い嫁ぎ先が見つかって、親に言われるがまま、相手を変えるというのは、貴族であれば少なからずある話だ。
一つ懸念があるとすれば、最近ファウストは様子がおかしい。以前はこちらに見せつけるように令嬢たちと話していたが、それをすっぱり止めた。逆に令嬢たちから話しかけられても、そっけなくしている。お前は、つかの間のモラトリアムを謳歌するんじゃなかったのか。
あとたまに彼の視線を感じることがある。大体バルドと話している時だ。お互い話しかけない約束になっているから無視しているが、その視線が痛い。
今日は、ファウストが私の教室の前で誰かを待っていた。一瞬私と目が合って微笑んだ彼に、思わず鼓動が跳ねた。自分でも不思議だった。ただ昔のファウストのような天使の微笑みが自分に向けられたことに、心臓が驚いたのだ。私は悟られないように顔を伏せて、足早に彼の前を通り過ぎた。
気持ちを切り替えて校門で待つバルドに話しかける。
「バルド先生、今日もよろしくお願いします。」
「私の生徒が、いつも真面目でうれしいよ。」
馬車で自邸に戻り、早速バルドに薬草学の宿題を見てもらう。バルドは医療師を目指しているだけあって、薬草にとても詳しいのだ。
「あ、私この薬草知っている。自領に自生しているの。」
教科書に描かれた月光草の線画を指さす。そういえば、追っかけっこで転んでしまった私を、ファウストがこの草を貼って応急処置してくれたっけ。「泣くなよ、ルチア」って笑った顔が、今でも鮮明に思い出せる。あの頃は優しかったのになあ。なんで変わってしまったんだろう?
「どうした?ぼーっとして。」
「いえ、何でも。月光草のことを教えてくれたのファウストだったなと思って。」
「――そう。」
「それにしてもこんなきれいな花が咲くのね。色は何色かしら。」
「菫色だね。ちょうど君の瞳のような色さ。」
「あら、素敵ね。今度実物も見てみたいわ。」
「この花は冬になる直前に咲くんだ。珍しいだろう?」
「へえ。確かに"冬の訪れを告げる花"って説明にも書いてありますね。」
「そういえば、ヴェントーラ侯爵令息とはその後どうなんだ?」
「ファウストですか?どうも何も、何ひとつ変わっていないわ。」
「――私が言うのもなんだけど、君たちはもう少しちゃんと話しあった方がいいんじゃないか?」
「え?どうして?」
「君と婚約したくなかった、話しかけて欲しくないっていうのは、本当に彼の本心だったのかなって思って。」
「私は直接彼から言われたのよ。婚約者になって、初めてのお茶会で。」
「でも、私には彼が君のことを思っているように見えるよ。この前の新入生歓迎パーティーだって、血相変えて引きはがしに来ただろう?あの時の彼の目は、嫉妬しているように見えた。」
「彼だって、金髪の令嬢を連れていたわ。ごめんなさい。バルド様に迷惑をかけてるのは分かっているわ。でも協力していただかないと!私にだって令嬢としてのプライドというものがあるの。」
「分かっているよ、ルチア。それに私なら大丈夫。君が必要なら、いつでも手を貸すから。」
そう言って、にこりとバルドが微笑んだ。どこかさみしそうな笑みだった。
***
その後もファウストとの距離は縮まらないまま、日々は淡々と過ぎていった。そして王都の街に木枯らしが吹きはじめ、吐く息が白く染まる季節がやってきた。気づけば、もう私の誕生日が近い。
「はあ、もうすぐ誕生日パーティーか。」
「もう、そんな季節なんですね。準備、気合入れさせて頂きます。」
侍女のジーナは張り切っている。招待状の送付に、パーティーで振舞うケーキの手配。そして当日の衣装。最近はバルドに贈ってもらったドレス以外にも、ジーナと一緒に選んでもらって、手持ちのドレスの種類が増えた。
「ねえ、ジーナ。エスコート、またバルドにお願いしていいかな?」
「一応ご両親のこともありますし、初めにファウスト様に打診された方がよろしいのではないでしょうか?」
「そうね。少し気が重いけど。まあでも、あんなこと言ったのは向こうだし。普通に断るわよね。」
学園で彼を毎日見かけるが、話しかけない約束になっているので、手紙にしたためる。もちろん、断ってもらって構わないと書き添えた。
「では、この手紙をよろしくね。ジーナ。」
「はい。お嬢様!」
それから、二週間以上経ったが、ファウストから返事はない。さっさと断りの連絡を入れて欲しい。こちらにも準備というものがあるのだ。
今日は、バルドの家庭教師の日だ。初めてのテストで私の成績が学年で10番以内に入ったから、お給金を増やしてもらったそうだ。彼には『レンタル婚約者』としていろいろ手助けをしてもらっているから、本当によかった。
「ねえ、バルド様。誕生日パーティーの件だけど、一応両親のこともあるから、ファウストにエスコートをお願いしたの。でも、ファウストからいつまで経っても返事が来なくて。また、あなたにお願いしてもよろしいかしら?」
「ああ、もちろんだよ。ちゃんとエスコート役に決まったら、君の瞳の色に合わせたジュエリーでも贈ろうかな。私の買えるものだから、ちっちゃいやつだけど。」
「うれしい!男の人にジュエリーもらうの初めてなんです。」
「じゃあ決まり。あ、そういえば、瞳の色で思い出した。この前学園の裏庭で、月光草が咲いているのを見かけたぞ。」
「え!あの薬草って、王都では自生していないんじゃないですか?」
「もしかすると、生徒の誰かが植えたのかもしれないな。便利な薬草だから。」
「私、葉っぱしか見たことないので、花を咲かせている姿を見てみたいです。」
「だったら、急いだほうがいい。1週間も咲かない花だから。知っていると思うけど、月の光で淡く光るのが名前の由来だ。明日はちょうど満月だから、きっときれいだろう。放課後に行ってみたらどうだ?」
「ありがとうございます。見に行ってみます。」
次の日の放課後、早速バルドに教えてもらった学園の裏庭に向かう。日が落ちるのも早くなって、既に辺りは暗かった。
「ふぅ~さむい。確か、花が咲いているのは、ガゼボの先だとバルド様が仰っていたわね。」
歩いていくと、ガゼボの裏の生け垣に隠れるようにして、小さな空き地があった。月灯りにともされて、淡く発光する菫色の花が群生している。
「まぁ、幻想的だわ。」
まるで、秘密の花園に迷い込んだみたいだ。思わずうっとりとして、その場にしゃがみこんで花を眺めた。
「――きれいだな。」
いつの間にか、後ろに誰か立っている。振り返ると、そこにいたのは――ファウストだった。
そのままファウストは、私の隣にしゃがみこんだ。驚いて立ち上がろうとすると、私の制服の袖をそっとつまんだ。
「――行かないで。」
ファウストの声は、力強くも、どこか震えていた。そのまま、二人の間に重い沈黙が流れる。月の光を受けて、ほわほわと菫色の光にゆらぐ月光草を見つめていた。
「ごめん……。」
沈黙を破ったのは、ファウストだった。
「本当は、君が婚約者に決まった時、すごくすごくうれしかったんだ。でも、どう伝えていいか分からなくて……。ずっと意地張ってばかりで、ごめん。」
「ど、どうしたの……ファウスト。あなた、熱でもあるんじゃない?」
思わず半歩、距離を取ってしまう。けれど彼の言葉が追ってきた。
「俺は、極めて正気だよ。」
少し照れくさそうに、けれど真剣な瞳でこちらを見る。
「君の誕生日――俺がエスコートする。だから、もうバルド殿にエスコートを頼まないで欲しい。」
「……え?」
「新入生歓迎パーティーの時、君があいつと手を取り合って踊っているのを見て、……気が狂いそうだった。」
「でも、あなただって金髪の令嬢を連れていたじゃない?」
「ごめん。あの時は、俺が色々な女の子と仲良くしていたら、さすがの君も焦るんじゃないかと思ったんだ。軽率だった。」
「それにしては、令嬢たちと親しげだったと思うけど?」
「正直に言うと、はじめは楽しかった。ただすぐに空虚だなと気づいたんだ。彼女らは俺の容姿や家柄しか見ていないから。」
「ふーん。それで?地味な私とやり直したいと思ったわけ?」
「君は宵闇に咲く月光草のようにきれいだよ。――俺の一番好きな花なんだ。」
「何よ。急に。」
「ドレスのこともごめん。従姉が毎回ドレスを新調して、婚約者に会っていたから、あれが普通だと思っていた。君には君の考えがあるのに、それをよく理解していなかった。」
「ファウスト、実はね、今まで恥ずかしくて言っていなかったけど、私ファッションセンスが壊滅的に悪いのよ。自分で選ぶとろくなことにならないから、全部侍女任せにしているの。だからまさか同じ服だと気づかなかったの。」
「それなら、今度の誕生日のドレス、俺に贈らせて。君に一番似合うドレスをプレゼントするから。」
ファウストが真剣な眼差しでこちらを見つめる。それだけで彼は、本気なんだなと伝わった。
「ありがとう。うれしいわ。」
「あと、これも受け取ってほしい。本当はあのお茶会の時に君に渡そうと思ったんだ。」
月光草がモチーフになったペンダントだった。花びらの部分にアメジストがあしらわれている。
「まぁ、とてもきれいね。」
思わず、息を飲んだ。
「好きだよ。ルチア。」
そういうと抱き寄せられ、ほっぺにやさしくキスをされた。不思議と嫌じゃなかった。
「君にちゃんと婚約者だと紹介してもらえるように頑張る。だから、チャンスが欲しい。」
「分かったわ。でも今度、学園で話しかけるなって言ったら、許さないわよ。」
「ありがとう。俺、頑張るよ。」
昔みたいに優しい微笑みを浮かべるファウストがうれしくて、胸がいっぱいになる。気づけば涙があふれてこぼれ落ちた。
「――君たち、仲直りできたみたいだね。」
二人だけの世界に浸っていて、全く気づかなかった。声のする方を向くと、ガゼボに人影があった。バルドだ。一部始終を見ていたのか、にっこりと笑っている。
「ど、どうしてバルド様がここにいるの?」
「おい、どういうつもりだ。見に来ていいなんて言ってないぞ。」
ファウストは私の前に立って、バルドをけん制している。まるで大事な物を外敵から守ろうとする大型犬みたいだ。
「これだけ巻き込まれたんだから、知る権利くらいあるだろう?それに今日ここにルチアが来ることを、君に教えたのは、誰でもないこの私だ。」
「それでも、盗み聞きは趣味が悪いぞ。」
ファウストの顔は見えないが、耳の先がほんのり赤くなっているのが分かった。この人はとんでもない照れ屋なのかもしれない。
「ルチアは私のはとこでもあり、生徒だ。頼むから大事にして欲しい。」
「あんたに言われなくても大事にする。」
「ふふ。でも今度邪険にされているところを見かけたら、次は本気で奪いに行くから。」
そう言って、バルドはウィンクをして、その場から立ち去った。
***
月光草の告白以来、ファウストは信じられないほど私にべったりになった。新入生歓迎パーティーで、私のことをきれいだと話している令息が複数人いたらしく、ずっと心配だったらしい。休み時間はしょっちゅう私の教室に来るし、帰りは必ず教室の前で待っている。急な態度の変化にこちらはすぐにはついていけない。
いつの間にかファウストは私のタウンハウスまでついてきて、バルドの授業にまで顔を出すようになった。けれどずっとバルドを牽制しているものだから、バルドも少しやりづらそうだ。せっかく成績優秀な一流の家庭教師に指導してもらっているのに、その指導を十分に受けられないのは少し惜しい気がする。
誕生日会用のドレスは澄んだ空のような淡いブルーをベースにした、ふわりと広がるプリンセスラインのドレスが贈られてきた。ところどころ立体的な菫色の蝶のモチーフがついている。
「お嬢様、とてもよく似合っています!ファウスト様って、昔からお嬢様のことよく見てらっしゃいますよね。ずっと愛してらっしゃるんだろうなって思っていました。」
ジーナが感慨深げに言う。
「あら、そうかしら。私はそんな風に思ったことはなかったけど。」
「ふふ、そうですよ。私には分かります。」
誕生日当日は、これに以前もらった月光草のペンダントも合わせた。準備万端だ。ファウストは控室で私を一目みるなり、飛びついてきた。
「もう!せっかくきれいに着せてもらったのに、しわになっちゃう!」
「あまりにもきれいだったから。それにしてもよく似合っている。君がドレスを選ぶのが苦手なら、これからもたくさん贈る。」
「それは助かるわ。ありがとう。」
ファウストのエスコートは紳士的で優しかった。年上のバルドの隣は安心感があったが、ファウストは少し不器用でも一生懸命守ってくれようとする。本日の主役である私をお姫様のように扱ってくれるのがうれしかった。
「あら、仲直りしたのね。本当によかったわ。」
両親もにこにこと嬉しそうにしている。鉄鉱山の件もあるし、私たちが仲がいいに越したことはないのだろう。
バルドも今日の誕生日会に招待していたが、初めにちょっと挨拶した以外は遠くから会の様子を眺めていた。ファウストが私を近づけないようにしていたというのが正しいのかもしれない。
ファウストは、アンナマリア様や私がバルドを婚約者だと令嬢たちに律儀に、自分が本当の婚約者だと言って回った。仕方がないから私も「ちょっと喧嘩をしてしまって、あの時は嘘をついて申し訳なかった」と謝罪した。皆、少し驚いた様子だったが、笑って許してくれた。
「ちょっと、ファウスト。そんな律儀に訂正して回らなくても。」
「だって、バルド殿が君の婚約者だと思っている人からしたら、俺が横恋慕しているみたいだろう。そんなの絶対ゆるせない。」
「あなたって意外と独占欲が強いのね。」
「ああ、そうだよ。だから覚悟して。」
広間に音楽流れる。お待ちかねのダンスタイムだ。
「お手をどうぞ、我が君。そういえば、この前、ルチアはバルド殿と2曲踊ったね?今日は最低でも3曲は付き合ってもらうから。」
「ええ!そんな無茶よ。」
そのあとファウストは、私が足を攣って動けなくなるまで手を離してくれなかった。 動けなくなった私を、ファウストは満足げに抱きかかえ、耳元で囁いた。
「ああ、やっとこれで君を独り占めできる。」
そしてそっと私のおでこに口づけを落とした。広間一杯に歓声が響く。
婚約者(偽)をレンタルしたつもりが、本物の婚約者の激重執着愛を目覚めさせてしまった。こうして、私の偽装婚約は幕を下ろしたのだった。
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