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7月 新月

[登場人物]

寺崎 糸 : いつも新月 虚と一緒にいる気弱な少女。

    自己肯定感が低いが、諦めの悪い努力家で割とハイスペック。

新月 虚 : 才色兼備の優等生

    全校生徒の憧れ(妹に欲しい)

高薙 敦 : 新月 虚の幼馴染

    180cmを超える恵まれた体格を持つバレー部のエース

黒白 麗音 : 新月 虚の腐れ縁

     音楽家の家庭に生まれた天才


[注意]

- この物語はフィクションです。

 実在の人物、団体、建物とは一切関係ありません。

- この物語には百合的要素があります。苦手な方はご遠慮ください。

 また、ユリ小説ではありません。

 そのため、親友より上の関係に発展することはありません。

 ご了承ください。

- この作品を生成AIの学習等に使用するのはご遠慮ください。


[その他]

 7月は新月と満月に分割しています。

 上下というわけではなく、新月 虚側の話と満月 雅側の話で分割しています。

 そのため、新月と満月で時系列が連続することはありません。

 両方同じ7月初旬から7月下旬にかけての話です。

7月に入って最初の日曜日。

寺崎は誰もいないリビングで朝食を食べる。

大学生の姉はバイトに行った。

母親は朝食を作り終えると、自室にこもった。

母親の部屋からはタッタッタッタッタッタッタッタッという音が聞こえる。

趣味の裁縫をしているのだろう。

父親は昨日接待ゴルフからの飲み会(ぜろじかい)飲み会(いちじかい)飲み会(にじかい)、カラオケのフルコースだった。

今日は昼過ぎまで起きてこない。

寺崎は起きてから自室で静かに勉強をしていた。

2時間程経ち集中力が限界を迎えたので、

休憩を兼ねて朝食を食べにリビングダイニングに降りた。

ダイニングに用意されていた朝食を持ってリビングのソファーについた。

朝食はサラダとトースト、コーヒーであった。

トーストは4枚切りのものが一枚。バターがケチらずに塗ってある。

サラダには輪切りのゆで卵とハム、スイカが着いている。器の横にデザートフォークが添えられていた。

550円ぐらいのちょっとした喫茶店のモーニング……のような贅沢な朝食である。

ただ、残念ながらコーヒーはインスタントである。

寺崎は先ずパンにかじりついた。食パンは3層構造である。

カリッと焼けた第1層(表面)。バターのしみ込んだ第2層。ふわっふわっの第3層。

第1層の焦げ目がパリッと割れる。第2層からバターが染み出してくる。第3層の食感はいい。

総じて今日も美味しい。

パンを置いて、コーヒーを口へと運ぶ。

テスト期間の味がする。明日からテスト期間だから、ほぼテスト期間だ。

『ご飯を食べ終わったら勉強頑張りましょう』

寺崎はそう決意して、サラダへと手を伸ばす。

先ずは輪切りのゆで卵へとデザートフォークを伸ばした。

スイカは最後に残しておく。


朝食を食べ終わると、寺崎はすぐに自分の部屋へと戻った。

机の上に広げてある化学の参考書に再び向かい会う。無機化学のページだ。

無機化学は、覚えれば何とかなる部分があるので、化学の中では一番好きだ。

気合を入れようと本日二杯目のインスタントコーヒーを口へと運ぶ。

寺崎の唇とカップの端が触れようとする瞬間、新月 虚からメッセージが来た。

『糸、今日暇だったら遊びに行かない』という内容だった。

「虚ちゃん。誘ってくれてありがとうございます。

 でも、ごめんなさい。今日はテスト勉強しないといけないので、行けません。

 代わりにテスト明けに一緒に出掛けたいです」

寺崎はそう返事をして断った。

断ってからため息をつく。

寺崎の中間テストの結果は良くなかった。

理系学年38位であった。それではダメなのだ。

寺崎は8組なのだから……。

寺崎の学校は1学年に9クラスある。

9組は将来の研究者を育成するために作られた特別クラスで、テストや学校行事は一緒であるが1~8組とは扱いが異なる。

通常の授業だけではなく、研究者になるための特別な授業や研修などもある。

残りの1~8組については、1~4組は文系、5~8組は理系である。

文系、理系はそれぞれ学力によってクラス分けをしている。

文系であれば4組、3組、2組、1組、理系であれば、8組、7組、6組、5組という成績順で振り分けられる。

つまり、8組は(9組を覗く)理系の上位40名を集めた精鋭クラスなのである。

新月 虚も、高薙も、黒白もみんな勉強が出来る。だから、みんな当然ながら8組にいる。

寺崎は3人と一緒にいたくて、何とか喰らい付き8組に入れた。

来年も8組にいるためには、みんなといるためには、理系上位40以内を絶対に維持しなければいけない。

38位はボーダーラインぎりぎりなのだ。

それに、新月 虚は何故か寺崎に期待してくれている。それならば、10位内は無理でも、せめて20位内には入りたい。

勉強だけでも、高薙や黒白と肩を並べたい。

だから、遊んでなどいられない……。

そうなのだ。

そう。

言い訳は完璧であった。

しかし、本心は違った。

球技大会以降新月 虚の側にいるのが申し訳なくなったのだ。

だから、新月 虚と距離を置きたくなってしまった。

寺崎はため息を付いてコーヒーを口へと運ぶ。粉の分量を間違えたのか、一杯目よりも苦い。

コーヒーを置いて、無機化学へと集中した。


月曜日の朝。寺崎は早く学校に来た。

自教室に荷物を置き、自習室へと向かう。

球技大会が終わってから、学校のある日は毎日足を運んでいる。

自習室は第1校舎の1階にある。第1校舎は、他の校舎が陰になり、日あたりが悪い。特に1階は悪い。

そのうえまだ電気もついていないせいで廊下は薄暗い。

そんな廊下の奥に年季の入った木の扉があり、その先に自習室がある。

雰囲気のある木の扉はドアノブに手を掛けただけで、蝶番の軋む音がする。

自習室の中へと入る。

第1校舎のなかで自習室の中だけは日のあたりが良く、意外と広い。

そんな広い空間に他の教室同様の配置で4×8の32脚の長机が配置されている。

長机と椅子は鉄などの素材が一切使われていない、100%木材によるもので相当に古い。

噂によると、この高校の前身である旧制中学時代からあるものらしい。本当にそうなら歴史資料として保管されるべきものなので、ただの噂だと思われる。

そうであろうと、そうでなかろうと、どちらにしろ相当に古い。

数々の受験生が汗を流したであろう歴史がある。

たまに右横書きの落書きが掘ってあったりもする。

例年この季節(ころ)から3年生が自習室を利用し始める。

しかし、寺崎の入った段階では、時間帯的にまだ受験生の姿はなかった。

代わりに一人の少女がいた。

自習室の一番奥の列の右から4列目に座る一人の少女。

陽光 欠だ。

彼女はいつもブックカバーのかかったハードカバーの書物を読んでいた。

前に気になって何を読んでいるか聞いてみた。

陽光 欠は熱弁で教えてくれた。そして、最後に何かを諦めた顔をした。

内容はよくわからなかったが、『すごいっ』と思った。

『多様体』と言う単語だけは覚えている。どうやら数学らしい。

寺崎は感心した。

と同時に球技大会以降抱いていた陽光 欠に対する違和感が強くなった。

『球技大会のスリーポイント(ラッキー)シュート(シュート)すごかったです。

 読んでる書物の内容も私には理解できそうにないです。

 陽光さんは本当に私と同じ高校生なのでしょうか?』

と寺崎は思い始めていた。

そんな陽光 欠に寺崎は会釈をした。

陽光 欠も小さく会釈を返す。

寺崎は照明のスイッチの前に立ち、お伺いを立てる様に陽光 欠の方見た。陽光 欠は頷いた。

寺崎は電気をつけた。そして、自習室の一番前の右から4列目の席に座った。

自習を開始する。

朝の集中できる時間帯。一番いい時間帯は数学をやる。

寺崎は数学の教材を開けた。

寺崎は曲がりなりにも8組である。数学の基本的な問題は解ける。

だから、応用問題に挑戦した。今日はその中でも特に苦手意識の強い三角関数の加法定理と二次関数の複合問題だ。寺崎は初手から躓いた。

三角関数の式を色々と変形して、取っ掛かりを掴めないかと考えてみる。それでも、何も手がかりが掴めない。寺崎はついに答えを見ようかと思った。

教材の解問編へと手を伸ばしそうになって辞めた。

『応用問題はただの基礎問題の組み合わせ。

 基礎問題が出来るなら、解くためのパーツはすべて揃っているわ。

 だから、じっくり考えて苦しみなさい』

受験勉強の時に新月 虚から何度も言われた言葉(ぼうろん)である。

その言葉を胸の中で唱えて、再び問題に向き直った。

自分の知っている知識を、総当たり的に、網羅的に、試してみる。

しばらくすると二次関数の形にまで変形することが出来た。後は、場合分けをすればいい。

そのころになると、寺崎の遥か後ろに座っていた陽光 欠が立ち上がった。

陽光 欠は何も言わずに外へと出ていく。

それに気づいて寺崎が顔を挙げると、周りはもう受験勉強の3年生で埋まっていた。唯一の2年生寺崎には少し肩身が狭い。

そんな寺崎を助ける様にちょうどいいタイミングで自習室の入り口に黒白が現れた。

ホームルームまで黒白に勉強を教えてもらう。

自習室で声を出すのは迷惑になるので、2人は自教室へと移動した。


「最近暑いわね」

新月 虚は高薙にそう言いながら、陰の中を歩いた。

暑さのせいか、新月 虚には珍しく、言葉が微かに間延びしている。

まだましな朝の時間帯にも関わらず、最近は暑い。

駅から学校までの500mの間でさえも、汗をかく。

「そうですね」

高薙はキレのある口調で新月 虚にそう答えて、新月 虚の後ろを歩く。

熱のこもりやすい体育館で部活をしているせいか、高薙の方が新月 虚よりも暑さには強い。

「少し髪を短くすればましになるかしら。

 それなら、私も高薙みたいな髪型にしようかしら?」

新月 虚はそう言いながら、自分のショートカットの髪を触った。襟足が少し湿っていた。

「小学校以来のおそろいですね」

高薙は嬉しそうにそう返した。

その後で自分と同じ髪型の新月 虚を想像する。

後頭部を刈り上げにしたベリーショートの新月 虚。

キリッとして格好良くて、似合っている。

でも、そこに可愛さはない。高薙的には新月 虚はかわいくあって欲しかった。

「でも、虚様は今のままの方がかわいいですよ」

高薙はそう付け加えた。

新月 虚は「そう。なら今のままでいいわ」と返す。

暑い中そんな話をして歩いているうちに二人は自教室の前まで来ていた。

自教室へと入る。

廊下との間に明確な境目が見えるように教室の中だけが涼しかった。

新月 虚はクラスメイトに挨拶をしながら自分の席へと向かう。

寺崎は今日も黒白に勉強を教わっていた。

「糸、黒白。二人ともおはよう」

新月 虚は二人に挨拶をした。

普段は寺崎から新月 虚に挨拶をしてくれる。

しかし、最近はテスト勉強に集中しているのか、新月 虚から声をかけることが多かった。

黒白は「おはようございます」と返した。

寺崎は少しぎこちなさげに「あっ、虚ちゃん。高薙さん。おはようございます」と返した。

特に『虚ちゃん』という部分がぎこちなかった。

新月 虚は「二人とも今日も頑張っているのね。私も頑張らないといけないわね」と返して自分の席へと向かった。

邪魔をしないように。

高薙もそれについていく。

寺崎と黒白は新月 虚を見送って、テスト勉強の続きを始める。


放課後。

大半の生徒が家へと帰って勉強?を始めていた。一部生徒は部活がないのをいいことに遊びに行っていた。

寺崎と黒白の二人は教室に残ってテスト勉強をしていた。

学校に残る生徒は基本的に自習室か、図書室へと向かった。

そのため、放課後の教室には寺崎と黒白の2人しかいなかった。

黒白は今日もピアノの練習があるので、1時間程度しかいられない。

その間は寺崎にほぼ付きっきりで勉強を教える気だ。

今日の寺崎は苦手な英語を教えてもらう。

しかも、長文、難易度はかなり高め。

寺崎は英語の長文を読み始める。接続詞や修飾関係にシャーペンでマークをつけながら、文構造を分解していく。

分解しながら順調に読んでいく。順調に3段落目まで到達した。

このまま最後まで読み進められると思われた。が、寺崎の手が一つの単語の前で止まった。

basketball

都合よく用意されたような単語。もちろん意味が解らないわけではない。

寺崎はその単語を、接続詞でもないただの名詞なのに、シャーペンでぐるぐるとマークしていた。

寺崎の様子を見て、黒白が「分からないところでもありましたか?」と声をかけた。

寺崎は「はい。でも、もう少し自分で考えてみます」と言って長文と向き合う。

しかし、寺崎はその単語の前でまだ止まっていた。集中できていない。

黒白は寺崎が何重にもマークした単語を見て、言葉をかけた。

「球技大会。惜しかったですね」

黒白らしい落ち着いた優しい口調である。

寺崎は何も返さなかった。

英語の長文に集中する様に黙って俯いた。話題から逃げる様に……。

「新月さんも言っていましたが、寺崎さんのせいじゃないですよ」

そんな寺崎の心中を察して黒白が言葉を続ける。

「わかっています。

 私のせいで負けたわけじゃないんです。

 でも、私がもっと頑張れば勝てていたかもしれないから……」

寺崎は長文と向き合ったままそう言った。

「……そうかもしれませんね。

 ですが、そう言うことは他の人にも当てはまります。

 高薙さんなんて、気を抜いてリバウンドを取られていましたし、それに比べれば……」

黒白はそう返した。

別に黒白は高薙に悪意を抱いているわけではない。

決して、いつも自分にだけ厳しい高薙に悪意を抱いているわけではない。

高薙の自分に対する扱いは正当なものなのだから。

「でも、これは私のための試合だったと思うんです。

 だから、私に責任があるんです」

寺崎のシャーペンはもう動いていない。

黒白は寺崎の頭に手を置き、寺崎の艶やかな髪の流れに沿って撫で始めた。

「寺崎さんのための試合ですか?」

「はい。

 虚ちゃんは私にチャンスをくれたんだと思うんです。

 私は高薙さんみたいに運動ができるわけじゃないし、麗音ちゃんみたいに音楽の才能があるわけじゃない。

 勉強も得意じゃない。

 そんな私は虚ちゃんとは釣り合わないと思いませんか?」

「……」

黒白は何も言わずに寺崎の頭を撫でる。寺崎の細い髪の毛が真水の様に寺崎の指の間を流れていく。

「虚ちゃんは満月さんとの大事な戦いの種目に、私のやっていたバスケットボールを選んでくれました。

 こんな私でもせめて役に立てるチャンスを虚ちゃんはくれたのだと思います。

 不釣り合いな私に活躍の場を、居場所をくれようとしていたんだと思うんです。

 それなのに、負けちゃって……」

寺崎はそう言い終わると大きなため息をついた。

「だから、最近新月さんを避けているんですか?」

「……はい。役に立てなかった私は、ただの不釣り合いな私。

 そんな私には居場所はないんです」

「そんなことありませんよ。

 寺崎さんは球技大会のためにあんなに頑張ったんです。

 役に立っていないなんてことはないです」

寺崎は顔だけを上げて黒白の方を見て、「そうですか?」と聞いた。

「ええ。

 寺崎さんが頑張ったおかげであそこまで善戦出来たのだと思います」

「……でも、負けちゃいました。

 虚ちゃんはあんなに頑張っていたのに……」

寺崎はそう言って乾いた笑いを浮かべた。そして、急に真顔になってため息をついた。

「……」

黒白は何も言えなかった。

このまま重い空気が流れるかの様に思われた……。

寺崎が訴えかける様に口を開いた。

「ねぇ。麗音ちゃん。

 役に立てなかった私は虚ちゃんと一緒にいていいのでしょうか?」

黒白は寺崎に落ち着いた笑顔を浮かべた。

「寺崎さん。

 私は新月さんの役に立ったことなんて一度もないですよ。

 友達ってそう言う損得で付き合うものではないですよ……多分」

「でも……。

 麗音ちゃんは役に立っていなくても、

 ピアノが上手だし、その上私なんかよりも勉強ができます。

 新月さんの友達としてぴったりだと思います」

寺崎はそう反論した。

「寺崎さん。そう言うのではないと思いますわ。

 寺崎さん。友達に釣り合う釣り合わないという考え方はないんですよ。

 新月さんは寺崎さんのことを純粋に気に入っているんですから」

「……」

「それに、釣り合うかどうかという話をするなら、

 寺崎さんは私なんかよりもずっと新月さんの側にいてもいい人です」

黒白はそう言いながら視線を下げた。

「お世辞は十分です。

 私なんか麗音ちゃんには到底及ばなんですから」

「そんなことありませんわ。

 寺崎さんは私の汚い部分を何も知らないからそんな風に思えるのです。

 何も取り柄がなくても、私なんかみたいな最低の人間より寺崎さんの方が素敵ですわ」

「麗音ちゃんの汚い部分?」

寺崎はそう聞き返した。

黒白 麗音は寺崎に優しい。そんな黒白に汚い部分があるなんて想像できなかった。

「ええ。寺崎さんはご存じないでしょうが、私には人には話せないような汚い部分があるんです」

黒白は寺崎に気を遣わせないように笑顔でそう吐き出した。

「……」

「新月さんはそんな私ですら側に置いてくれているのです。

 頑張り屋さんでかわいい寺崎さんが釣り合わないとかそう言うことを言う必要はありませんわ」

「……」

「それでも、納得いかないならこうしましょう。

 寺崎さんが思う新月さんに釣り合う人間に今からなりましょう!

 手始めに期末テストは理系学年4位を目指しましょう」

黒白は名案を思い付いたかのようにそう言った。

寺崎はとっさに「えっ。厳しくないですか」と返した。

「いいから、頑張ってみましょう。

 はい、はい、勉強に集中してください」

「……はい」


新月 虚と高薙は普段は別々に帰っている。

いつもは高薙が部活で遅くなるためだ。

しかし、テスト期間は部活がないため、一緒に帰ることとなった。

朝とは反対側に進む路面電車のロングシートに並んで座る。

少し図書室で時間を潰したため、他の生徒たちはいない。

一両編成の狭い電車の中は、新月 虚と高薙、後数人の乗客のみである。

新月 虚は窓から外の景色を見ていた。路面電車は川に沿って走っている。茜ががかった川の水が見える。

高薙はそんな新月 虚を眺めていた。母親が子供を見守るように……。

「ねぇ、敦」

新月 虚は唐突に名前を呼んだ。

「はい。どうされました?」

「私、最近糸に避けられている気がするのだけど気のせい……じゃないわよね?」

新月 虚の問いに高薙は「ええ。よそよそしいですね」と同意した。

新月 虚は背もたれに体重を預けた。

「そうよね。

 テスト勉強に集中するために距離を置いているのだと思いたかったのだけど、

 違うわよね」

「そうですね」

高薙はそう返した。新月 虚は困ったように首を傾げた。

「私、糸に避けられるようなことした覚えないのだけど……」

「そうですね。虚様が何かしたわけではないです。

 寺崎さんは恐らく球技大会のことをまだ引きずっているのだと思います。

 負けたことに対して変に責任を感じているのだと……」

「寺崎らしいわね。

 あの娘は精一杯頑張ってくれた。

 何も悪くないのに……」

新月 虚はそう言いながら視線を下げた。自然に奥歯に力が入る。

球技大会の敗北について一番責任を感じていたのは新月 虚だった。

『私たちで雅を倒すの。頂点に立つのよ』と言ってチームメイトを焚き付けた。

チームメイト達はその言葉についてきてくれた。たかが球技大会のために数か月間も練習に付き合ってくれた。

みんな新月 虚のためにリソースを割いてくれていた。新月 虚はそんなみんなと勝ちたかった。

なのに、最後の最後、みんながつないだボールを新月 虚は決められなかったのだ。

みんなの時間や努力を無駄にしてしまった。

一番努力し、リソースを割き、やれる限りのことをやったのが新月 虚だ。

それでも、責任を感じずにはいられない。

高薙はそんな新月 虚を慰める様に頭に手を置いた。新月 虚はすぐに振り払った。

小学生の頃のようには行かない。

高薙は代わりに声をかけた。

「虚様は悪くないです。みんなの責任です」

思ってもいないことを口に出す。

口では『みんなの責任』と言った。

でも、心の中では『自分の責任』としか思えなかった。

第2クォーター徹碧とのリバウンド勝負。あそこで勝っていれば新月 虚達の勝ちだった。

それなのに負けた。しかも、あの勝負は実力で負けたのではない。

自分が雅の撃ったシュートが外れないと思って油断して負けたのだ。

信頼すべき新月 虚(チームメイト)を信用せずに、新月 虚が作ったチャンスを無駄にした。

思い返しただけでも、胃酸が溢れ出して来る。

「敦。少し顔が怖いわよ」

新月 虚は高薙の顔を覗き込んだ。

新月 虚の黒い瞳に視線が吸い込まれた。

高薙は何か言おうとした。しかし、その前に新月 虚が口を開いた。

「そうよね。敦。みんなの責任よね。

 みんな1つ2つ至らない点があった。

 それが積もり積もって負けた。

 だから、みんなの責任よ」

新月 虚はそう言っていたずらな笑顔を浮かべた。

幼馴染だ。生まれた時から15年、ずっと隣に住んでいる。

新月 虚には高薙が責任を感じていることはお見通しだった。

『みんなの責任』

新月 虚の声で脳内再生した。新月 虚の気遣いを無駄にしてはいけない。

高薙は目を瞑って息をはいた。表面上だけでも、アスリートとしての切り替えの早さを発揮した。

「そうですね。虚様」


期末テストは荒れに荒れた。

先ずは1日目の最初の科目数学Ⅱで、数学教師が本性を表した。

生徒たちは問題用紙を見た瞬間に固まったことであろう。8組(理系の精鋭クラス)の予想平均点が50点ぐらいである。

それほど難しかった。

数学教師の言い訳はこうである。

「えーっ、君たちは仮にも理系なので数学だけでもできないといけないと思います。

 えーっ、そのうえで、先生は理系平均70になるように問題を作ったつもりです。

 えーっ、これくらいは解けて当然だと思います。

 これから頑張ってください。」

続く2教科目の物理。

先生は生徒を突き放すような問題を選んできた。

物理教師の言い分はこうであった。

「最近は原理を知らず、公式や解法だけ覚えてくる輩がいます。

 そう言う生徒をふるいにかけることを意識して問題を出しました。

 公式や解法が何故そうなるのかを知っていれば、簡単に80点は取れます。

 我ながら自分のことが優しすぎて大丈夫かなと心配になります。はっはっはっ」

次に一日目最後の科目英語Ⅱ。

英作文しか出なかった。

英語教師の無駄に熱い言い訳はこうである。

「英語とはなんだ。

 それはただの科目ではない。

 言語なんだ。

 ならば、単語をいくら知っていようが意味がない。文法を知っていようが意味がない。

 使えなければ価値がない」

他の科目も概ねこんな感じである。

第2学年の洗礼である。

新月 虚はもちろんのこと、高薙、黒白は問題なくテストを解いていった。

寺崎は少し怪しいところもあったが、黒白のおかげもあり何とか喰らい付けていけた。

そうやってなかなかハードな期末テストが終了した。


テストの最後の科目が終わり、寺崎は机のかたずけを行っていた。

大量に出た消しかすをゴミ箱に捨て、消しゴムのカバーを消しゴムにつける。

鞄から筆箱を出してテスト用に買った無色透明のシャーペンをしまう。

テスト用のシャーペンは普段使いの他の文房具から不自然に浮いて見えた。

筆箱と答案用紙をカバンの中に入れて、帰路に立とうと立ち上がった。

「糸。この後空いてるかしら?」

後から新月 虚が声をかけてきた。

寺崎は「……はい。空いてます」と返す。

「なら、2人でどこかいかない。お買い物とか」

新月 虚はそう寺崎を誘った。寺崎は『2人』という言葉に戸惑いを覚えた。

「2人で、ですか?高薙さんとかは……?」

「高薙はこの後部活、黒白はピアノ、あの娘は向こうの用事があるだろうし……」

「皆忙しいんですね」

寺崎はほぼ無意識にそう答えた。

少し残念そうであった。

「ええ。

 私と2人は嫌かしら?」

新月 虚はじーっと寺崎の目を見た。

「嫌なわけではないです」

寺崎はそう返した。嫌ではない。ただ、気まずい。

「テスト期間が終わったら遊びに行く約束していたでしょ」

新月 虚はそう言って、ほぼ2週間前のメッセージを見せた。

「……はい。

 遊びに行きましょう」

寺崎はそう返した。


新月 虚は「糸が良ければ、買い物に行きたいわ」と提案した。

寺崎は特に行きたい場所を考えていなかったので、買い物に行く流れになった。

2人で電車に乗って、都市型ショッピングモールパルティトゥーラへと来た。

寺崎は「虚ちゃん。今日は何を買いに来たんですか?」と聞いた。

新月 虚は「夏が近いから、そろそろ浴衣を買いたいのよ」と答えた。

「去年着ていた浴衣が着れなくなったのですか?」

寺崎は疑問を浮かべた。

高校入学からほぼ成長の止まっている新月 虚への悪意はそこにはない。

ただ純粋な疑問だった。

新月 虚はそのことをわかっていたので、特に引っ掛からずに答えた。

「別に着れるけど、新しい浴衣が欲しくなったの」

「新しい浴衣?」

「あの浴衣子供ぽいでしょ?」

寺崎は「そうですか?」とやや否定の疑問形で返した。

新月 虚の浴衣は青地に朝顔の絵が描いた夏らしいものだった。

寺崎はとても似合っていて可愛いと思っていた。

普段の新月 虚の恰好からは浮いていたが、子供らしいと言う程ではなかった。

「でも、あの浴衣。実は子供用なのよ。」

新月 虚はそう付け加えた。

「えっ、そうだったんですか!」

寺崎は控えめにだが驚いた。

寺崎には意外だった。

あの浴衣を着た新月 虚は、寺崎からは大人に見えたからだ。

「ええ。高薙の小学生時のお古だから」

新月 虚はそう言って煩わしそうに息をついた。

「あの浴衣を来た高薙は小学生なのに大人みたいに見えたの。

 それで、私もあんな風になりたいと思って、憧れていたのよ」

「……」

「そしたら、中学生の時に高薙ぎが着れなくなって、私に回ってきたの。

 そしてね。嬉しくって袖を通したらぶかぶかだったわ」

新月 虚は少し自嘲気味に笑った。

寺崎は相槌に困った。

体格に関することは、新月 虚のコンプレックスなので反応が難しい。

本人はあまり表に出さないが高薙との身長差はその中でも最もデリケートな問題だ。

寺崎が反応に困っていると、新月 虚は続きを語りだした。

「それでね。去年やっとサイズが合ったのよ。

 まぁ、身体じゃなくて、浴衣を合わせたのだけど……。

 小学生の時に憧れていた浴衣は、

 私が着ると……いや、高校生の私には子供ぽかったのよ」

「それは、残念でしたね」

寺崎は同情するようにそう言った。

自分と高薙達との格差を見せられているようで苦しくなった。

それと同時に、自分にとって雲の上の存在新月 虚の劣等感を見て親近感を覚えた。

「だから、新しい浴衣が欲しくなったのよ。

 できれば、今高薙が着ているのよりも大人っぽいものがいいわ。

 お小遣いをためて、予算も結構用意したのよ。

 一緒に選んでくれるわよね」

「はい」

寺崎はそう答える。新月 虚は寺崎の手を引いて婦人服売り場へと向かった。


新月 虚は婦人服売り場で何着か浴衣を試着したのち1着を選んだ。

青地に朝顔の絵が描いた夏らしい浴衣を選んだ。

去年着ていたものと似た柄ではある。やはり何かしらの執着があるのだろう。

しかし、青色は去年のものより濃く黒く紺に近い。朝顔の絵も彩度、明度が抑えてあり、落ち着いて見える。

全体的に去年の者よりも大人っぽかった。

新月 虚は満足げに浴衣の入った袋を胸の前に抱えて歩いた。

その態度を少し妹みたいだと寺崎は思った。こういうところは本当かわいい。

新月 虚を愛でたくなるのもわかる。

2人はそのまま、パルティトゥーラ内のコーヒーショップに入ってお茶をした。

テスト期間明けと言うこともあり、高校生が多くいた。

新月 虚はエスプレッソを頼み、寺崎はアールグレイを頼んだ。

エスプレッソは新月 虚の瞳の様に黒かった。

新月 虚はエスプレッソの小さなカップを口元へと運ぶ。

一瞬眉を寄せた。初めて口を付けたエスプレッソは想像以上に苦かったのだろう。

が、すぐに取り繕うような澄ました顔をしてエスプレッソをすすり始めた。

寺崎はそんな姿を見ないようにした。

寺崎もアールグレイに口をつける。ベルガモットの香りが口の中いっぱいに広がる。

新月 虚はエスプレッソのカップを置くと、口内の苦みを洗い流す様に水を口に含んだ。

水を置くと新月 虚は口を開いた。

「学校の外で一緒に過ごすのは球技大会以降初めてね」

新月 虚は作為的に『球技大会』という言葉を使った。

寺崎はその言葉にとっさに身構える。

新月 虚はそんな寺崎が話し始める前に「球技大会はごめんなさい」と声をかけた。

寺崎は「謝らないでください」と返した。

新月 虚は「謝らせなさい」と返す。

新月 虚と寺崎の瞳が向かい合う。

「……」

5秒ほど黙って向かい合った。

寺崎は「分かりました。でも、私も力になれなくてごめんなさい」と謝った。

新月 虚は『そんなことないわ』と言いたかった。寺崎は頑張ってくれた。

でも、寺崎の気を汲んで「お互い様ね」とエスプレッソに口を付けた。

今度は我慢して、終始すました顔ですすった。上手くいった。

寺崎も紅茶に口を付けた。

寺崎は紅茶で無理やり流し込んで「そうですね。お互い様です」と言った。

自分に言い聞かせる様に……。

でも、自分は効いてくれなかった。少し納得できていない雰囲気である。

新月 虚はさりげなく水を飲みながら、「他に何か言いたいことでもあるの?」と聞いた。

寺崎は「……大丈夫です」と言って紅茶を置いた。

新月 虚は「それならよかったわ」と表面的に言って、一度話を遠ざけようとした。

「糸。夏休みの予定どうしましょうか。

 2人でどこか遠出しない?」

新月 虚は楽しみな夏休みの予定の話をした。

「いいですね。

 折角なので、みんなを誘いたいです」

寺崎はそう言う。

「いいわよ。でも、そうなると予定を合わせるのが難しくなりそうね」

新月 虚はそう答えた。

「やっぱり麗音ちゃんは夏休み中もずっと練習ですかね?」

「そうでしょうね。

 それに高薙も忙しいわ」

「部活大変なんですか?」

「ええ。

 高薙にバレー部の練習予定を見せてもらったのだけど、想像以上だったわ。

 ほぼ(れんしゅう)(れんしゅう)(れんしゅう)(れんしゅう)(れんしゅう)(れんしゅう)(れんしゅう)だったわ。

 今年こそは全国大会に行きたいから、学校の規則のギリギリまで練習日を増やしたらしいわ。

 それに、高薙ぎは部長になったから部長会議とか安全講習とかもあって忙しいみたい」

寺崎は「そっかぁ。みんな忙しいんですね」と言って紅茶を口に含んだ。

高薙も黒白もみんな頑張っている。

『自分も何か頑張らないといけないな』と思った。

それから2人は夏休みの計画について話し合った。

計画がおおむね定まるころには2人ともカップの中が空になっていた。

それを機に、新月 虚は「そろそろ行きましょうか」と言った。

寺崎は「はい」と答えた。

新月 虚はそんな寺崎に「何か言いたいことでもあるの?」ともう一度聞いた。

寺崎は少し悩んだ。

そして、思い切って言葉にした。

「虚ちゃんはどうして私と一緒にいてくれるのでしょうか?」

新月 虚はよくわからないと言う様に「うんっ」という相槌を打った。

寺崎は補足した。

「虚ちゃんの周りはみんなすごい人ばっかりです。

 高薙さんは運動ができますし、黒白さんはピアノがとても上手です。

 しかも、2人とも私よりも勉強ができます。

 私は5人の中で悪い意味で浮いていると思うんです。

 そんな私でも球技大会では役に立てると思いました。

 ですが、あんな結果になっちゃって……。

 虚ちゃんの役立つことすらできなかった。

 私にはいいところが何もない。

 なのに、なんで私を友達にしてくれているのでしょうか?」

新月 虚はそんな疑問に「性格」と短く返した。

寺崎は「性格?」と聞き返した。

「あなたが、頑張り屋さんで、諦めが悪くて、諦めが悪くて、諦めが悪くて、

 私に似ていたから気に入ったのよ」

「私が虚ちゃんみたいですか?そんなことないです」

「いいえ。あなたは似ているわ。

 もし今からボウリング場にでも行って勝負しましょうという流れになったら、

 あなたは私に勝とうとするでしょ」

「それは……もちろんです」

寺崎は即答した。

勝負をするなら勝とうとするのは当たり前のことだ。

「スコア的に逆転不可能でも勝てる可能性がある限りは、

 足掻くでしょう」

「当然です。

 戦うからには最善を尽くします」

寺崎は即答した。

途中で勝負を投げ出すなんて問題外だ。なんなら、負けが決まっていても、少しでも点差を詰めて一矢報いたい。

「そう言うところかな。

 そう言う人間は珍しくて貴重なの。

 私の周りにも格上相手だと戦っているふりをして勝利を放棄する娘がいるわ。

 案外そんなのばっかなのよ。

 でも、あなたは私にさえ勝とうと考える」

「はい」

「そこが気に入ったし、そこに可能性を感じたのよ。

 だから、親しくなりたいと思ったわ。

 納得してくれたかしら」

「……はい」

寺崎はとりあえず頷いた。

納得はできていない。

新月 虚が言ったことは当たり前のことだから……。

そんな人間は山ほどいるから……。

ただ、当たり前のことができることを褒められて、煙に巻かれた気分だった。

新月 虚はそれを見透かしていた。

「納得していないわね。

 でも、大丈夫。

 今のままのあなたでいれば1年後のあなたはきっとすごいことになっているから」

新月 虚はそう言って笑いかけた。

それが自分と寺崎の唯一の才能だから。

もちろん寺崎には自覚なんてなかった。

「そうですか?」

寺崎はそう返す。

「ええ。そうよ。

 だって今のあなたは、中学時代のあなたからすれば雲の上の存在なのだから……。

 赤点ばかり取っていたようなあなたがそれなりの進学校に合格して、その中で上位40名に入っているのよ」

新月 虚は寺崎にそう語りかけた。寺崎の頭が手の届く範囲にあったら、撫でていただろう。

「そう言われるとそんな気がします」

寺崎は腑に落ちないながらに納得した。

「だから、気にする必要はない。

 それに、友達にすごいすごくないは関係ないわ」

「……」

「わかったわよね」

「……はい」

「今日は混んでいるし、長居は迷惑だわ。

 そろそろ行きましょう」

新月 虚はそう言って立ち上がった。寺崎もそれに続いた。

読んでくださりありがとうございます。

面白ければ7月 満月(8/9投稿予定)も読んでいただければと思います。


[謝罪と言い訳]

 本来この7月の新月は7/27に投稿する予定でした。

 ですが、7/29の投稿になり申し訳ございません。

 

 以下は遅れてしまった言い訳になります。

 投稿前に読み直してみると、ある人物の口調が6月までと別物になっていました。

 その修正のために投稿を延期してしまいました。


[感想]

 今回は寺崎 糸のメイン回でした。

 新月 虚の周辺人物は、運動神経抜群の高薙 敦、音楽の才能を持った黒白 麗音、勉強がすごくできる〇〇 〇(未登場?)等ハイスペックな人間ばかりです。これだと、新月 虚が付き合う人をスペックで選んでいるような嫌な感じを受けます。

 実際の新月 虚はスペックで人に判断するような人間ではありません。そのため、新月 虚の周りをハイスペックな人間だけで固めるのは不自然です。そこで、寺崎という人物を追加しました。

 当初の寺崎は星空のライバルで、勉強も運動もできないけど新月 虚が唯一親友だと思っている娘になる予定でした。しかし、成績によるクラス分けという制度のせいで、寺崎も客観的には勉強が出来る娘になってしまいました。

 他の新月 虚の周りの人物と比べると劣ります。ですが、よく考えると寺崎も十分ハイスペックな人間になってしまいました。

 当初の目的とは違いますが、作者はこう割り切ることにしました。

 「寺崎はハイスペックだから新月 虚に選ばれたんじゃない。

  新月 虚に選ばれたから、寺崎はハイスペックになったんだ。

  新月 虚が寺崎を育てあげたんだと……」


[次回予告]

 次回は満月 雅の7月です。

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