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6月 上

登場人物

  新月 虚:才色兼備の優等生。

     全校生徒の憧れの的。

     努力家で面倒見がいい。

     いつも気を引き締めていて目つきが鋭いのが玉に瑕。


 高薙 敦:新月 虚の幼馴染。

     背が高く、運動神経が高いバレー部のエース。

     口数は少なめ。

     学力は理系学年17位。


 寺崎 糸:新月 虚の中学時代からの友達。

     新月 虚が唯一純粋な友達と思っている少女。

     身体は小さく、気が弱い。

     新月 虚の周りの娘と比べると目立ったところがないが、

     頑張り屋さん。

     学力は理系学年38位


 黒白 麗音:新月 虚の知り合い。

      ひょんなことから新月 虚と良く一緒にいる。

      音楽家の家系に生まれた天才でピアノの腕は超一流。

      学力は理系学年14位。


 満月 雅:才色兼備の優等生。

     全校生徒の憧れの的。

     感情をあまり外には出さない。


 陽光 欠:不思議な雰囲気のある雅の親友。

     かわいい。


 星空 数多:満月 雅の親友。

      雅とは違い勉強が苦手。

      でも、性格がいい。


 闇空 覆:少し不真面目な雰囲気のある少女。

     二年生になってから雅の友達になった。


 鳶葦 伝:新聞部の少女。

     雅の番記者を自称する。


注意

- この物語はフィクションです。

実在の人物、団体、建物とは一切関係ありません。

- 学力と生活態度には相関関係はありません。

- この物語には百合的要素があります。苦手な方はご遠慮ください。

また、ユリ小説ではありません。そのため、親友より上の関係に発展することはありません。

ご了承ください。

- この作品を生成AIの学習等に使用するのはご遠慮ください。

まだ夏には遠く、時間帯的にも涼しいはずであった。

しかし、梅雨入りの準備をしているようなじめじめとした気候のせいか、蒸し暑く汗が引かない。

満月 雅のライバル、女帝新月 虚(しんげつ うつろ)は眠い体に薪をくべる様に足を動かした。

文武両道……。

勉強でも、スポーツでも妥協を許さない。

雅に負けない。

いや、誰にも負けない。

その一心で新月 虚は這い上がって来た。

去年の9月の運動会。新月 虚は雅とブロック対抗選抜リレーの最終走者として直接対決をすることになった。

1学期末テストで雅に敗れ、雅を自分が越えるべき壁だと認識していた。

そんな雅との対決……。

チームメイトは新月 虚に絶好の状態でバトンをつなげてくれた。

新月 虚はリレーの練習を多少なりともしてきた。

でも、新月 虚は仲間が作ったリードを守り切ることが出来なかった。最終走者の自分が雅に抜かれたのだ。

自分がみんなの作ったリードを無駄にした。自分のせいで負けた。

なのに、誰も新月 虚を責めなかった。

入学後すぐの課題テストと体力テストで、圧倒的な実力を示した雅だ。

『雅に勝てないのは仕方ない』とみんなが思っていたのだ。

でも、新月 虚自身はみんなに悪いと思った。

それ以上に悔しかった。そして、ムカついた。

目を強く強く閉じて必死に涙を堪えた。

歯を思いっきり食いしばった。

雅を超えるべき壁だと再認識した。

それ以来、毎朝走るのが習慣になった。雅に負けない体力をつけるために。

それから、12月には冬の球技大会があった。その時には新月 虚は雅とハンドボールで争う機会を得た。

毎朝走ることで体力もついてきた。勝てる可能性があると思っていた……。

でも、負けた。

新月 虚は全力で雅にぶつかった。序盤は上手くいっていた。しかし、後半で体力切れを起こし逆転された。

ペース配分を間違えた。しかし、間違ったペース配分でなければ序盤から負けが確定していた。

もっと体力をつけようと走る量を増やした。効果を上げるために、走るペースも速める様に意識した。

今日もできる限りの全力で走っている……つもりだ。


気が付くとゴールである家の前についていた。新月 虚は両膝に手を置いて息を整える。

気を抜くと吐きそうなぐらいしんどい。心臓がドクンドクン鳴っている。息があまり肺に届いていない。

でも、まだ立っていられる。それだけさぼってしまったのだ。

新月 虚の小柄な全身を汗が伝う。

息がある程度整うと、ゆっくりと歩き出した。

大分息が整った頃、走って来た道に1つの人影が見えた。

背が高く、がたいがいい。

新月 虚の幼馴染高薙 敦(たかなぎ あつ)だ。

高薙は新月 虚の前まで来ると息を整えだした。しかし、新月 虚と違い顔には余裕がある。

「虚様。速いです」

高薙は息を整えながらそう言った。

「敦。貴方が遅いのよ。

 顔に余裕があるわ。

 いつも言っているけど、もっと本気で走りなさい」

新月 虚はそう返した。

「すみません」

「まぁ、いいわ。

 クールダウンがてら少し歩きましょう」

新月 虚はそう言って歩き出した。足の長さの割に歩く速度は速い。

高薙は黙って後をつける。

新月 虚はよほど疲れているのだろう足取りが怪しい。後ろを歩く高薙は気が気でない。

クールダウンとはいえ、走った後に坂道の住宅街を歩くのは地味にきつい。

「ねぇ、高薙」

「はい」

「私もなかなか速くなったでしょ」

新月 虚は得意げにそう言った。無邪気だ。

高薙には背中越しにも得意げな顔をしていることが分かった。

「はい」

高薙は感慨深げにそう答えた。本当に速くなった。

元々朝のランニングは高薙が体力づくりのために行っていた。そこに体育祭以来新月 虚が加わったのだ。

初めは高薙に喰らい付いていくのがやっとであった。しかし、気が付くと高薙よりも速く走るようになっていた。

「今月の球技大会が楽しみだわ。

 今度は前回みたいなみじめな負け方はしないから……」

新月 虚は上機嫌にそう言って振り返った。そろそろ調子が整ってきたので家へ帰るのだ。

高薙は「はい」返した。

新月 虚の頑張りを知っているから、そうであるはずだと確信して……。


家の前まで来るとお互いに「じゃあ、1時間半後」と軽い挨拶をして別れた。

玄関を開けると焼き魚の攻撃的な匂いが漂ってきた。7km程走った後の体にはよく効く。

匂いにつられて台所へと向かってしまった。

台所に入ると食事の準備をしていた母親に「虚ちゃん。ご飯はまだできないからシャワーして来なさい」と言われた。新月 虚はお腹を抑えながら浴室へと向かった。

やや冷たいシャワーをさっと浴びる。全身の筋肉がキュッと引き締まるような感覚がする。

シャワーが終わると、小学生の時からサイズが変わっていない下着を身につける。

ドライヤーで髪を乾かし櫛で整え、顔にオールインワンの化粧水をサッとつける。

制服に着替えた。少し大きめのカッターシャツに袖を通し、少し丈の長めのスカートを穿く。

首元のリボンタイをギュッと結んで、鏡に映る自分を睨みつけた。息を吸って息を吐く。

靴下はまだ穿かずに食卓へと向かう。

食卓では朝食の準備が出来ていて、家族はもう席についていた。

中学生の弟が『早く席につけよ』と言いたげに視線を送ってきた。

よっぽどお腹すいているのだろう。でも、新月 虚の方がすいている。

新月 虚は弟の視線を受け流して席についた。

家族全員で「いただきます」と言って箸を手に取る。父親が食事に手を付けると、姉弟は食事に箸をつけた。

今日の朝食は焼き鮭、玉子焼き、ほうれん草のお浸し、味付け海苔、みそ汁とごはん。

焼き鮭は濃い目の味付けでごはんが進む。身はふっくら、皮はパリッパリに焼けていて、身と皮の境界付近は脂が良く乗っている。

卵焼きは、断面から中身がトロッと漏れ出そうなほどに焼き加減が絶妙。味付けは出汁と砂糖が効いている。いつものことながらおいしい。

お浸しはあまり好きではない。凝縮して硬くなったような歯ごたえが得意ではない。

味つけ海苔は市販の安定した味がする。少し湿気ている……気がする。気のせいだと思うことにする。

みそ汁は優しさが口の中に広がる薄味。里芋が入っていて食べ応えもある。

新月 虚とは違い体格に恵まれた弟はご飯をお代わりした。

新月 虚もそれに負けじとお代わりする。

少ししんどいが午前中を頑張るためにしっかりと胃に詰め込んでおく。

全員の食事が終わると食器を流しに置いて、2階の自分の部屋へと向かった。

父親は会社へと向かい、弟は朝練に向かった。それを見送り母親は洗い物を始める。

新月 虚は高薙との約束までまだ時間があるので、数学の問題集を開いた。

昨日から悩んでいる難しめの問題を考え始めた。「あーでもない、こうでもない」と書いて消してを4,5回繰り返した後、アラームが鳴った。問題は全然進んでいない。後10分ほどで高薙ぎとの約束の時間だ。

新月 虚は洗面台へと向かい歯磨きをして靴下をはいた。2階に上がり荷物をまとめると、リビングにいる母親に「行ってきます」と声をかけて玄関へ向かいローファーをはいた。

去年より2cm程かかとを上げたローファーは履きづらく歩きにくいがもう慣れた。ローファーに上手く足を入れるとそのまま家の外へと出た。

「おはようございます」

「おはよう」

玄関の前にはもうすでに高薙が待ち構えていた。

2人は温泉街の路面電車の駅に向かって歩き出した。


2人は7時45分ぐらいに学校に着いた。

新月 虚が前を歩き、その少し後ろを高薙が歩く。新月 虚が高薙を従えている(ように見える)。

2人は第3校舎の2階、2年8組の教室へと向かった。

2年8組の教室にはすでに何人かの生徒が来ていて、わいわいと雑談をしていた。

「おはよう」

新月 虚はそう言って教室へと入った。入り口付近にいた生徒たちは口々に「おはようございます」と返した。

新月 虚の入る一瞬教室内の空気が引き締まる。新月 虚が通り過ぎると生徒たちはまた雑談を始める。

新月 虚は(真ん中の列の前から3番目の)自席へと向かった。自席の前の席には2人の少女がいた。

1人目が中学時代からの友人寺崎 糸(てらざき いと)である。寺崎は前の席に座り、中間テストの振り返りをしていた。

2人目が1年時にできた腐れ縁黒白 麗音(こくびゃく れいね)だ。黒白は寺崎と向かい合わせに座り、寺崎がわからないところを教えていた。

寺崎は新月 虚に気づくと顔を上げて挨拶をした。

「あっ、虚ちゃん。高薙さん。 おはようございます」

2人はそれぞれ挨拶を返した。

「糸。おはよう」

「寺崎さん。おはようございます」

黒白は寺崎とのやり取りが終わるタイミングを伺って振り返り、2人に「おはようございます」と挨拶をした。

新月 虚は「黒白もおはよう」と返し、高薙は「おはよう」と素っ気なく返した。

黒白は2人に優しい笑顔を返した。

新月 虚は寺崎の横まで来ると「糸は今日もお勉強を頑張って偉いわね」と頭を撫でた。

寺崎はこそばゆそうに「偉くなんてないです」と返して、手を振り払った。

新月 虚は「謙遜しなくてもいいのよ。テストが終わったところなのに、朝から勉強をするなんて十分偉いんだから」と言いながら周りを見た。クラスの生徒たちは中間テストから解放されて、緩み切った空気感で雑談をしていた。

「そんなことないです。

 私はみんなとは違って今回のテストあまりできなかったんです。

 だから、しっかり復習をしておきたいのです」

と寺崎は言った。謙遜ではない。

実際、寺崎のテストの結果はクラスで下から5番目だった。

「そうやって、失敗したときにすぐにリカバリに移行できるのはあなたの強みよ。

 自信を持ちなさい」

新月 虚はそう言いながらもう一度寺崎の頭を撫でようとした。新月 虚は密かに寺崎は自分と同じタイプの人間だと思っている。

寺崎は今度は抵抗しなかった。寺崎は嬉しそうに頬を緩める。

寺崎は地味だが笑うと意外にかわいい。

寺崎は地味だが一生懸命だ。そんなところがまたかわいい。

寺崎は何故かかわいい。

黒白はそんな寺崎を羨ましく思い、新月 虚に目線を送った。

新月 虚は寺崎に優しい視線を注いでおり気づかない。寺崎の目線も新月 虚に釘付けだ。

代わりに高薙が黒白の目線に気づいた。高薙は鋭い視線を送る。『私はお前を許していない』とでも言いたげだ。

黒白は歯を食いしばって頭を下げた。

『新月さんに頭を撫でてもらおうなんておこがましいことですわ。

 自重しなさい。黒白 麗音』

黒白は胸の中でそう唱えた。

腑には落ちるが、惨めな気持ちになる。仕方ないのだ。

「黒白。あなたも糸に付き合って勉強を教えてあげるなんて偉いわよ」

新月 虚はそんな黒白の事も褒めてくれた。黒白は自然と頬が染まった。

黒白は「困っている人が居たら助ける。ただ、当然のことをしたまでですわ」と照れ隠しの言葉を返してしまった。

新月 虚は「当然の事じゃないわ。十分偉いわよ」と返した。

黒白は「ありがとうございます」と俯きがちに答えた。

そして、「寺崎さんの復習が忙しいのであまり邪魔しないでください」と付け加えてしまった。

新月 虚は「ごめんなさい。邪魔したわね」と言って後ろの自席へと座った。それに続いて高薙も新月 虚の席の後ろの自席へと着いた。

新月 虚は自席に着くと今朝の数学のつづきを始めた。高薙は新月 虚を邪魔しないように読書を始めた。


数学を初めてしばらくすると新月 虚は教室の時計を見た。7時55分だった。

また、しばらくすると新月 虚は教室の時計を見た。8時だった。

またまた、しばらくすると新月 虚は教室の時計を見た。8時3分だった。

またまたまた、しばらくすると新月 虚は教室の時計を見た。8時5分だった。

……。

「虚様。気になりますか?」

後から高薙が小さな声で聞いてきた。

「気にならないわよ」

と新月 虚は返す。本当は気になって仕方ない。

今日は6月中間テスト成績上位者の順位が張り出される日である。

張り出しの時刻は8時15分。

その時間に新月 虚と満月 雅の戦いに一つの決着が着くのだった。

「私が勝つに決まっているもの」

新月 虚は願う様にそう返した。

ちなみに、新月 虚が雅に勝ったことは……一度もなかった。

しかし、今回の中間テストは解いた感触で言うとよかった。

満月 雅に勝っている可能性がある。

……そう信じたい。

「虚様はたくさん頑張ってきたのですから、

 今度こそは満月さんに勝てますよ」

高薙はそう返した。

「もちろんよ」

新月 虚はそう言って数学の問題に向き直った。



8時15分頃、いつもよりはるかに遅れて雅が校門をくぐった。

先週は中間テストの結果が教科ごとに帰ってきた。

今回の中間テストは調子が良く、過去最高得点を出した

雅の一番の心労の種であった星空も、30点台はちらほらあったものの全教科で補習を回避できた。

そこで星空が「テストのお祝いと打ち上げを兼ねて、遊びに行かない?」と誘ってきた。

そう言うわけで、昨日は闇空と星空と共にカラオケに行った。

終電近くまで遊んだため寝るのが遅くなったのと、カラオケで疲れてしまったため、いつもと同じ時間に起きることが出来ず遅れてしまった。

雅が教室に着くと、当然のことながら電気はもうついていた。

「おはようございます。」

雅はさっとそう言って教室の中に入ると、まず欠の席の方を横目で見た。

欠はもうすでにそこにはいなかった。

雅はそれを確認して自分の席へと向かう。

教室の中は時間帯の割に人が少ない。それに、星空と闇空の姿も見えない。

雅はそれで今日がテスト結果の張り出しの日だと思い出した。

2人ともテスト結果の張り出しを見に行ったのだろう。

雅は特に2人を追いかけることはせずに自分の席について、数学の問題を広げた。

2人は、鳶葦と共に、すぐに帰ってきた。

教室に入った星空は雅を見つけると走り寄って来た。

「雅。今日遅かったから心配したよ」

星空は安心したようにそう言った。

「星空が昨日連れまわしたせいだろ」

後ろで闇空がガラガラ声でそう言った。その通りである。

闇空は「雅もいるか?」とのど飴の袋を差し出した。

雅はあまりダメージを受けていなかったが、「いただくわ」と言って1つ受け取った。柑橘系の甘酸っぱい味が口の中に広がる。ほのかに喉に染みる。

闇空は「ついでに星空も……」といってのど飴の袋を差し出した。

星空は歌いなれているのか全くダメージを受けていない。が、貰えるものは……と受け取った。

「まぁ、昨日ははしゃぎすぎたなとは思っています。ごめんなさい。」

星空は飴玉を転がすのをやめて、ガラガラ声の闇空と寝坊した雅に向けて謝った。

「星空、謝らないで。私たちはいやいや付き合ったわけじゃないのだから。

 それに、星空はあんなにテスト期間頑張ったのだから……ね」

雅がそう言って闇空の方を見た。

闇空は「3回目の延長をしようとしたときは正直止めようと思ったけど……。まぁ、頑張ったしな」と返した。

三人の会話がひと段落着いたのを見て鳶葦が割り込んだ。

「いいですね。3人でカラオケですか。

 今度私も誘ってくださいよ。」

星空と闇空があからさまに嫌な顔をした。

鳶葦は掴みはばっちりと言わんばかりに言葉を続けた。

「まぁ、そんなことより、満月さん。

 中間テストも雅さんは学年1位でしたよ。

 おめでとうございます」

鳶葦はこのまま中間テストのヒーローインタビューに持っていくつもりだ。

雅は鳶葦に「そう」といつもの薄い反応を返した。

星空と闇空が雅に「おめでとう」と言った。雅は2人には「ありがとう」と返した。鳶葦に向けた言葉とは違い柔らかい口調だ。

鳶葦は不満を隠してお手本のような口調で、

「満月さん。いつものことながら反応が薄くないですか?嬉しくないのですか?」と聞いた。

雅は「嬉しいわよ」と答えた。本当にうれしいのか?自分のことながら少し懐疑的ではある。

義務を果たしただけと言うのが適切ではないのか?

鳶葦はため息をついた。

新聞部は中間テストと期末テストの後には、各学年文理上位3名に必ずインタビューを行う。

このインタビューを受けることは名誉なことである。そのため、対象者は皆乗り気で、協力的。みんな自分の努力とかを語りたく、相手の話を聞くだけで終わる楽な仕事である。

しかし、満月 雅だけは別である。

毎回対象の15人(第1学年は文理選択がまだなので3名)の中で一番扱いにくいのは決まって満月 雅だ。

第2学年の絶対王者で15人の中で最も華々しく才能に溢れているはずなのだが……。

インタビューに非協力的なわけではない。むしろ協力的ではある。

しかし、順位に対する関心がない。(人と比べないのは美徳なのだろうが、新聞部員としては悩みの種である。)

テストに対する感想が薄い。『今回もやれるだけのことはやれた……以上』である。

そのため、記事に出来るだけのボリュームの内容を引き出すのに毎回苦労し、時間がかかってしまう。

鳶葦はそんな雅のインタビューは朝の時間では終わらないと判断した。休み時間にすることにした。

せっかくの時間だ。

学年3位闇空 覆へのインタビューは……もう終えていた。

闇空はいつもめんどくさそうな態度を取っている。しかし、勉強について何かしらのこだわりがあるらしく、一度話始めると舌が良く回る。

今回も5分程度でインタビューが終わった。

テストの話題はこれ以上広げそうにない。そのため、鳶葦は別の話題を切り出した。

「そう言えば、雅さん今月の球技大会何に出るかお決まりですか?」

「球技大会?」

「ええ。こういう学校行事の記事は人気ですから、注目人物の動向を知って盛り上げたいのです」

雅は絶対王者というだけで話題性がある。その上新月 虚というライバルがいる。

2人が直接対決をする球技大会の話題性は計り知れない。

「特に決まってはいないけど、今年もハンドボールじゃないかしら?」

雅はそう答えた。

球技大会はバレーボール、バスケットボール、卓球、サッカー、ハンドボールの中から球技を選んで参加するようになっている。自身が所属している部活と同じ競技には参加できないが、中学時代に経験があったり、高校で挫折して退部し半年以上が立った生徒は参加することが出来る。

バレーボール、バスケットボール、卓球、サッカーは中学の競技人口が多いため、クラスに経験者が何人かいる。そのため、経験者を軸にチームが作られる。

しかし、ハンドボールは経験者が少ない。捨て競技になるか、運動神経がいい人間が優先的に割り振るかになっている。

そのため、1年時は雅も新月 虚も運動神経がいいというだけの理由でハンドボールに割り振られていた。雅は『今年もきっとそうだろう』と思っていた。

「安心しました。まだ、決まってはいないということですね?」

「ええ。決まってはいないわ」

「今朝成績の張り出しを見に行った時に新月さんに捕まりまして、

 そこで球技大会について伝言を託されたのです」

鳶葦はそう言っていつもの?微妙に似ている新月 虚の声真似を始めた。

「満月 雅。

 中間考査理系学年1位おめでとう。今回()あなたの勝ちね。

 今回()……ね。

 今月末の夏の球技大会、私と勝負するわよね。

 競技は……ハンドボールは前にやったからつまらないでしょ。

 だから、バスケットボールにしましょう?

 別の競技を選んだら、あなたの不戦敗と見なすわ」

言い終えると鳶葦に戻って「と伝えろと言われました。受けますか?」と付け加えた。

雅は少し煩わしそうに「受けるわよ」と返した。雅に拒否権はない。

鳶葦はうっきうきで

「では、今週の校内新聞は『球技大会!新月 虚の挑戦状 満月 雅の宣戦布告』とでもタイトルをつけてこのことを載せておきます。当日までに新聞部の方で盛り上げておきます」

と言った。

雅は嫌そうな顔をした。あまり派手に目立つのは好きではない。

鳶葦は気づかないふりをして「そろそろホームルームの時間なので、自分の教室に帰ります」と言って雅の前を去っていった。

雅を励ます様に「球技大会頑張ろう。私しっかり応援するから」と星空が言った。

「ありがとう。でも、星空球技大会は全員参加よ。人の応援をする前に、自分の競技を頑張りなさい」と返した。

星空は「そうだね」と笑みを浮かべた。

闇空が少し不思議そうな顔をして「いつも思うのだが、雅ってあまり勝負事に関心がない癖に、新月 虚の挑戦を必ず受けるよな?」と聞いた。素朴な疑問である。

「勝負事に関心はないけど、挑戦を受けなかったら不戦敗になるでしょ。

 私が逃げたみたいに扱われかねないでしょ。

 私は負けることが許されていないし、逃げることも許されていないのよ。

 だから、受けるしかないの」

と雅は答えた。

闇空は少し黙った後「なるほどな。それは大変だな」と返した。

闇空は『雅の両親は、娘に敗北を許さない程厳しいのですね』と勝手に思いこんだ。


朝のホームルームで担任から球技大会についての話が行われた。

今週中に各競技の出場者を決める様にとのお達しがでた。

雅たちの学校は各学年9クラスあり、1~4組が文系、5~9組が理系である。文系と理系では男女比に差があり、その差をなくすために文系と理系のクラスをくっつけてチームを作る。具体的には1組と8組、2組と7組、3組と6組、4組と5組と9組の4チームが出来る。その中で各競技男女ごとに2チームを作り、各競技の成績で総合優勝を決める。

各競技の人数はそれぞれ決まっていて、バスケはスタメン5人、控え1人の計6人で1チームを作る

鳶葦が広めたのか、4組と5組の生徒達も雅と新月 虚がバスケで戦うことを聞きつけていた。盛り上げると言っただけのことはある。

昼休みになると4組、5組の体育委員と身体能力に自信のある生徒、バスケ経験者が9組の雅の机の周りに集まって選手決め会議が勝手に始まった。

全校生徒の憧れ満月 雅と新月 虚との戦い。その戦いに参戦できる。

そのためか、集まった生徒たちの熱量は高い。雅を除いたバスケの5枠を、決めるのではなく奪い合うという感じだった。

雅はそんな生徒達とは対照的に冷めていた。自席の周りで誰が出るかを話し合う生徒たちの話を聞きながらもお弁当を食べていた。星空は周りの人たちに圧を感じながら気まずそうに箸を動かし、闇空は会話に耳を傾けつつも何気ない風におにぎりを食べていた。

一悶着あったものの雅がお弁当を食べ終わるころには出場選手が決まっていた。

雅のチームメイトは以下のようになった。

- 徹碧(てつへき) 英子(えいこ)

 4組。身長180cm。部活はバレー部。

 バレー部内では高薙の影に隠れているが、高いジャンプ力と身体能力を持つ。

 高薙が居なければバレー部のエースであっただろう。

 新月 虚のチームにはその高薙が居るはずである。高薙に高さで対抗するために選ばれた。

- (つらぬき) 美実(びみ)

 4組。身長150cm台前半。部活は陸上部。

 足の速さは校内の女子の中ではトップクラスで、3年生の男子陸上部の先輩にも勝ったことがあるとか……。

 そのうえ、足の速さ以外の身体能力も全体的に高い。

- 的撃(まとうち) 詩華(しか)

 5組。身長156cm。部活は美術部。

 文化部に属しているが、中学時代はバスケ部に所属していた経験者だ。

 全体的な技術が高く、それでいてシュートの射程が長く、成功率も高い。

- 空田(そらた) (はぐむ)

 9組。身長168cm。部活はハンドボール部。

 9組の体育委員で、体育委員になるだけに身体能力は高い。

 スポーツに関しては容量が良く、割と何でもできる。

- 陽光(ひのひかり) (かける)

 9組。身長141cm。部活?(同好会)は数学研究会(月1活動を目標にしている。物理部の付属品ではない)。

 運動はあまり得意ではないことになっている少女。体格にさえ恵まれていない。

 バスケは小中学校の授業でやったきり。でも、ミニバスを3年間していたと嘘をついて選ばれてしまった。

 欠よりも別の娘を選ぼうという流れになっていたが、雅が欠を推したのと、それに徹碧が乗っかったことで選ばれた。

この5人と雅の6人で新月 虚と戦うことになった。


放課後。テストが終わったとこだったので星空が「今日もどこか遊びに行かない」と2人を誘った。

テスト期間の間色々我慢したのだからまだまだたくさん遊びたいのだろう。

しかし、闇空は「悪いな、今日は喉の調子が良くないからパスで」と言って断った。

雅も「ごめんなさい。昨日の疲れがまだ残っているから、今日は付き合えないわ」と言って断った。

星空は「分かった。今日は積んでいる本を読む日にする」と諦めた。

雅は学校が終わるとすぐに帰路に就いた。

しかし、駅へと向かう途中で欠からメッセージが届いた。メッセージには位置情報が付与されていた。

『そこに行け』という意味だった。

雅はその位置情報に従って、市営の総合センターにたどり着いた。

総合センターは体育館やプールと言った体育系の施設から、図書館やプラネタリウムと言った文科系の施設までそろった公共施設だ。

総合センターの前には欠が待っていた。欠は雅を見つけると控えめに手を振った。雅は欠に手を振り返すと、歩くペースを上げた。

「欠。いきなり呼び出して何かしら?

 図書館にでも寄っていくの?」

雅は欠にそう尋ねた。ここの図書館は市内最大で欠が良く利用していた。

「違うよ。今日用があるのはこっち」

欠はそう言いながら、図書館とは反対方向の体育館やプールのある体育棟を指さした。

「2人で自主練でもするのかしら?」

「違う」

欠は体育棟の中へと入る。雅もそれについていく。

体育棟にはメインアリーナとサブアリーナの2つの体育館がある。サブアリーナは地下にあり、入口近くに取り付けられた窓から様子が見れるようになっている。欠は何も言わずに窓の方へとむかった。雅はそれについていく。

窓からサブアリーナを見下ろした。窓側の半面では大学生と思われるグループがバドミントンの練習をしていて、奥側の半面では女子高校生のグループがバスケの練習をしていた。

「雅。あれがあなたのライバルよ」

欠はそう言いながら女子高生のグループの1人を指した。欠の指の先には小柄な少女がいた。新月 虚である。

新月 虚は球技大会のチームメイトと3on3の試合形式の練習をしていた。

「新月さんってバスケの経験があったのかしら。

 すごく上手ね」

雅は新月 虚のプレーを見ながらそう言った。

今の雅たちには敵いそうにない程洗練されていた。

「いいえ。

 ここ最近で上達したのだと思う」

欠はそう言いながら真剣に新月 虚のプレーを観察していた。

『新月さんだけなら何とかなりそうだけど、高薙さん、寺崎さんとの連携が厄介そうね』

とでも考えているのだろう。

「新月さんって前からここで練習していたのかしら?」

雅はそんな欠に話しかけた。

「おそらく2、3カ月は前から……。

 雅が星空さんと遊びに行く時とか、ここの図書館で時間を潰しているの。

 で、ちらほら新月さんを総合センターの近くで見かけるようになって、

 少し後をつけてみたらここで練習をしていたの。

 毎日ではないけど週に2日ぐらいは通っていたと思うわ」

「そう。新月さんは2,3カ月も前から練習していたのね」

雅は感心するように言った。欠はあまりいい表情をしない。

「ええ。きっと裏でずっと準備していたの。卑怯よね」

欠はそう言いながらサブアリーナの中を見下した。

「そうかしら。

 自分の時間を使って準備することが卑怯なのかしら?」

雅は新月 虚にフォローを入れた。

「……」

欠は黙る。

「それだと、テスト期間しか勉強しない人にとっては毎日予習復習をしている人は卑怯ということになるでしょ。

 ただ、新月さんは影で努力をしているだけで、それは卑怯なことじゃないわ?」

「準備するだけなら卑怯じゃない。

 でも、自分が準備していたバスケに雅を誘い込んだのは卑怯だよ」

「……それはそうかもしれないわ」

雅はそう言って黙ってしまった。欠も黙る。

しばらくして、雅が口を開いた。

「でも、少し卑怯なことをしてでも勝ちに執着するのは彼女の美徳じゃないかしら?」

雅はすがすがしい声でそう言った。ライバルとして新月 虚のそう言うところも雅は認めていた。

「……それはそうかもはしれない。

 でも、それが彼女の美徳だとしても、そのせいで雅が負けるのは納得できない」

欠はボソッとそう言った。

「大丈夫よ。

 欠。貴方の理想とする私はなにがあっても負けないんでしょ」

「……もちろんよ」

「なら大丈夫よ。私は必ず勝つ。

 これから私も練習して強くなるから……。

 それにもしもの時は貴方が着いているものね」

雅はそう言って微笑んだ。

欠は「本当の本当にもしもの時は……」と苦笑いを返した。

雅から頼りにされていることが内心は嬉しかった。


次の日。

欠の発案で自主練をすることになった。

普段目立たない欠から自主練の話が出た時、一同は戸惑っていた。が、欠が昨日の新月 虚の練習風景を撮影したものを皆に共有したことで、賛成してくれた。

皆、このままだと負けると思ったのだ。

ただ、自主練にあたり2点ほど問題点があった。時間と場所である。

ほとんど皆部活動があるため土日と放課後が厳しかった。また、学校の周りの体育館は人気があるためすぐに埋まってしまう。それに予算の問題もある。

そんな中でも雅と体育委員の空田が中心となり調整した結果、公共の体育館のハーフコート分を早朝の時間だけおさえることが出来た。早起きをしないといけないが、早朝と言うことで皆部活の心配をしなくていい。また、人気のない時間帯だからなのか格安で借りることが出来た。

来週の月曜日から球技大会までの3週間朝練が始まることになった。


朝練の初日雅はいつもよりも2本早い電車に乗って学校へと向かった。

偶々駅のホームで欠と出会った。欠は何時もこの時間帯の電車に乗っているのだろうか……。

欠の横には1人の男性がいた。欠とは違い背の高い男性。

欠の父親だ。欠の父親は雅に気づくと快い挨拶をした。雅は心苦しい挨拶を返した。

あの日以来雅は欠の両親に苦手意識を覚えるようになっていた。

雅と欠は別々の車両に乗り込んだ。

まだ乗客のほとんどいない時間帯の静かな車両。その中には電車の音だけが響く。

欠と父親は特に何か喋るでもなく、並んで座っていた。

降りる駅の1つ前の駅まで来ると父親が電車を降りた。欠に何か言うでもなくただすっと立ち上がって降りて行った。欠は父親が降りると暇そうに本を開いた。

電車を降りてからは少し距離を開けて学校へ向かった。

朝練に行く前に校門前で一度合流するようになっていた。

まだ、雅と欠しかいなかった。

2人校門前で顔を合わせずに待つ。

雅は「欠は何時もこの時間に来ているの?」と聞いた。

欠は「ええ。いつも父親に合わせて家を出ているから」と返した。

「学校に来てからは何をしているの?」

「雅が来るまでは自習室で時間を潰している。

 雅が着た後は図書館に移動している」

雅は「そう」と返した。

そんな2人の元に星空がやってきた。

星空はバスケに参加するわけではないし、経験者とかそう言うのではなかった。ただ、星空と闇空、鳶葦の3人が応援と取材として付いてくることになっていた。

「雅、おはよう。陽光さんもおはよう」

「おはよう」

「……星空さん。……おはよう」

雅と星空はいつものように挨拶をし、欠はぎこちなく星空に挨拶をした。

星空は雅と欠を交互に見た。

「何か話していたの?」

星空は興味深げに雅に聞いた。

雅は「軽い世間話よ」と返す。欠はそれに頷いて同意した。

「そうなの。陽光さんってどんなことに興味があるの?」

星空は欠の方を向いた。

陽光 欠。

教室の中では何時も1人でいる。

これと言って仲の良い子はいない。クラスメイト全員と平等に没交渉。

星空にとって謎多き存在。星空はそんな欠と雅が話していることに疑問を抱いた。

少し欠に興味を持った。

欠は少し押され気味に「……読書とか……」と答えた。

雅には、欠が星空と話すことが嫌そうなのが分かった。でも、助け舟を出す気にはなれなかった。

雅は星空を信用していたから……。

星空は「そうなの。意外かもしれないけど、私も読書するんだ。普段はどんな本を読んでいるの」と欠に迫った。

欠は、読んでいる本を聞かれるのは頭の中を覗かれているようで嫌だった。

でも、星空の()しに耐えられなかった。

欠は星空の様子を伺うように恐る恐る「ロシア文学とか……」と返した。

星空は「へぇ、ロシア文学……。難しそう」と言った。

欠は苦い顔をした。

「おすすめの作品とかあるの?できれば短めのもので……」

星空はそう聞き足した。

(欠の中で)予想外の反応に、欠の顔は少し明るくなった。自分を受け入れてもらえたような気になった。

ほんのり嬉しそうである。

それを見て雅は安心した。それと同時に自分以外にそんな顔をするんだと不思議に思った。

星空の質問に、欠は即答でドストエフスキーの『地下室の手記』を薦めてしまった。

雅の顔から苦笑いがこぼれた。

比較的短め?(中編小説)ではあるが、星空に薦めるには難解である。

それに、雅の偏見ではあるが、星空の好きそうな作品ではない。

欠に悪意はない。でも、悪いところが出てしまった。

おすすめの本を聞かれたことが嬉しくて、相手の要望を全無視してしまったのだ。自分の好きを出しすぎてしまったのだ。

星空はなにも知らないので「どんな話なの?」と興味を示した。

欠はざっくりとした内容をネタバレなしで説明した。欠の説明は分かりやすいし、面白そうに感じる。

星空は興味を示して「学校の図書館で調べてみるね」と言った。

欠は星空の反応にとても嬉しそうである。

雅はそんな欠の顔を見ていると胸の縄が緩んだ。

ただ、読んだ後の星空の反応を考えると少し胃が痛んだ。

その後も人が揃うまで星空と欠は話をしていた。

2人の噛み合っているのか、噛み合っていないのか、よくわからない会話に、雅の胃は常時キリキリと収縮をしていた。

人が揃うと雅たちは体育館へと移動した。


体育館はバスケコート3面ほどの大きさがあり、壁には計6個のゴールが設置されていた。

その中で雅たちに与えられたのは奥の一角だった。

雅たちの隣ではバレーの練習を、向かい側ではバトミントンの練習をしていた。両方とも高校生であったが、球技大会の練習と言うよりも部活の練習の延長と言った感じである。恐らく、学校の校門が開かれるまでの間、自主練習をしているような人たちなのだろう。熱気がすごかった。

そんな周りの熱気に便乗しながら、雅たちも練習を始めた。

練習メニューは経験者の的撃が考えた。

今日のメニューはパス、ドリブル、シュートなどの基本練習。そして、ラスト10分で3on3での試合形式の練習だ。

4、5、9組の中から選ばれた精鋭だけあり、皆基礎的な技能は難なくこなせた。

3on3はのチーム分けはグッパーで行った。雅、的撃、欠がグーをだし、徹碧、貫、空田がパーをだした。

どちらが先に攻めるかは雅と徹碧のジャンプボールで決めた。高身長と長い四肢を生かし徹碧がボールをタップし、徹碧チームの攻めから試合が始まった。

徹碧に的撃が、貫に欠が、空田に雅が付く1on1ディフェンスを展開した。

経験者というだけあり的撃のディフェンスはこの中では一番上手い。徹碧はどうしようもなく前方にボールを投げた。貫はそれに気づくと欠をまいてボールへと走り出した。それとほぼ同時に雅もボールを取りに向かった。欠は貫に集中してボールを見ていなかったため出遅れた。

雅の方が貫よりもボールに近かった。しかし、貫はその足の速さを生かし、ボールを手にした。貫はボールを前に進めようと地面に着いた。そこにボールには間に合わなかった雅が立ちはだかる。雅は両手を広げて、貫に圧をかけた。貫は困ったように雅を見据えた。

「貫さん。こっち」

空田が貫に後から声をかけた。雅がボールを追いかけたことで空田はフリーになっていた。貫が空田にパスをする。それをまずいと思った的撃が空田の元へと走る。

空田と的撃の1on1になる。空田はボールを守りながら周りを見回した。

ゴール下には徹碧と欠がいた。空田はジャンプシュートを撃った。的撃がそれを妨害しにかかる。空田の放ったボールは的撃の手にあたり軌道が大きくずれた。バックボードに当たり跳ね返った。

ゴール下にいた徹碧がリバウンドを取ろうと跳んだ。いつの間にか徹碧についていた欠もリバウンドを取るために跳んだ。

いくら欠であっても徹碧の高身長とバレー部で鍛えたジャンプ力にはリバウンドでは勝てない。リバウンドは余裕で徹碧の者となかった。徹碧はリバウンドを取り地面に足を付けると膝をギュッとまげてもう一度飛び上がる。そして、両手でダンクシュートを決めた。

次に雅たちの攻撃である。

雅には徹碧が、的撃には貫が、欠には空田が着く1on1ディフェンスで守ってきた。

雅はドリブルをしつつ徹碧を抜こうとした。しかし、その長い四肢からくる徹碧の守備範囲は広く隙が無い。

雅はパスを出すことを考えた。

的撃か欠か……。

相手にとって経験者かつスリーポイントシュートまで打てる的撃は脅威になりうるはずである。本来なら守備範囲の広い徹碧が的撃に着くと思っていた。

しかし、徹碧が雅についた。そして、的撃にはあまりディフェンスに乗り気でない貫がついた。

つまり、相手の作戦はこうだ…………。

"何が何でも的撃にだけはボールを渡さない。 そのために雅と欠を徹底的に抑える"

それに気づいた雅はそれを利用するしかない。

雅は欠にアイコンタクトを送った。雅の考えることだ。欠に通じないはずがない。

そして、的撃の方を見た。的撃は経験者として雅が何がしたいのか察した。

的撃はパスを要求するように両手を挙げた。徹碧チームの注意が的撃に向かう。

欠はその隙をついて、空田のマークを外す。

雅はその隙をついて、的撃が居る方向と反対側の左に体重をかけた。

徹碧は抜かせないために右足を一歩出して対応する。伸ばされた徹碧の右手が雅に圧をかける。

雅はその圧から逃れる様に右側に重心を移動させる。右腕で右側にいる的撃へとパスを送ろうとする。

もちろんそうはさせてはもらえない。

徹碧は思いっきり左手を伸ばしてパスをカットしようとする。

雅にはそれが分かっていた。だから、右手を後ろに回し、そのまま背中から欠へとパスを出す。

徹碧には、的撃にパスしようとしたボールが突然消えた様に見えた。ついつい本来のボールの軌道を追うように的撃の方を見た。もちろん、的撃の元にはボールはない。

雅はその隙にゴールへと走り出した。

空田を振り切って雅のパスを受け取った欠が前方を走る雅にボールを返す。

ボールを受け取った雅はそのままドリブルで勢いをつけてレイアップシュートを決めた。

その後も素人集団にしては高度な攻守を繰り返した。

結果は僅差で雅チームが勝った。


朝練が終わると来た時と同じようにまとまって学校へと戻った。

空田、貫、的撃、徹碧がまとまって話しながら前を歩いた。

その後ろに、雅と星空が並んで歩いた。

また、その後ろを欠が1人で歩いた。

先頭の4人はなにを話しているのだろう。楽しそうに話している。

雅と星空も盛り上がっている。

欠はそんな6人を眺めながら最後尾を歩いていた。

大通りから路地に入り道幅が狭くなるところで、徹碧が先頭の集団から離れた。

徹碧はそのまま後ろに下がり、雅と星空に混じろうとした。しかし、2人には混じれないと悟り、その後ろにいる欠の隣へと来た。

欠は話慣れていない徹碧が隣に来たことで警戒した。

主導権を握るべく、何かを自分から先に切り出そうと考えた。しかし、普段雅以外と話さない欠には何を話せばいいか分からなかった。

徹碧は少しためらった後、「星空さんに妬いているの?」と独り言のように言葉を投げかけた。

予想外の言葉の先制攻撃。欠は動揺せざる負えなかった。

欠と雅は他者から見れば一切関係のない赤の他人だ。そんな状況で欠が星空に妬く理由はない。

何かに気づいている可能性がある。

その一言で徹碧に対する警戒心が高まった。

欠は「そんなことない」とわざとぶっきらぼうに言った。動揺を悟られないように……。

徹碧は「本当に?」と聞き返した。胃のあたりを握られているような嫌な感じがする。そのせいか胃が重い。

欠の動揺と警戒心は最高潮に達する。

「本当に妬いていない……。

 どうしてそう思うの?」

欠は平生を装ってそう聞いた。口調は落ち着いていたが、言い回しはむきになっている。「そんなことない」の一言で十分だったはずだ。

徹碧もそのことに気づいたのだろう。

「陽光さん。嘘ついたよね」

と欠を詰めて来た。

「嘘?」

欠は今度はぼろが出ないように短めの返答を返す。

「陽光さん。実はバスケ経験者じゃないよね。

 バスケ経験者にしては下手すぎるし……」

徹碧はそう言った。欠はじわじわと袋小路に追い詰められ始めていることに気が付いた。まだ、必死ではない……はず。

「小学校の時だから、感覚を忘れているのよ」

我ながら苦しい言い訳をする。

「それでも、未経験の私たちよりかは上手いはずだよね。

 でも、陽光さん私たちより下手だよね」

「徹碧さんも、貫さんも、空田さんもみんな精鋭だけあって、運動神経が良すぎるの。

 だから、経験があっても私じゃ相手にならないの……」

欠はさらに苦しい言い訳を重ねる。

「大丈夫だよ。みんなに言ったりしないから……」

徹碧は欠の耳元でそう言った。今の状況で信用はできない。

欠は目を逸らしながら「何の事かしら?」とまだとぼけた。

徹碧は核心を突くように

「陽光さんって、満月さんの隠れファンなんだよね。

 どうしても満月さんに近づきたくって、嘘ついてバスケに参加したんでしょ?」

と言った。

欠は胃が解放される思いがした。

徹碧は欠と雅の関係に気づいていなかった。今になって考えると、徹碧目線で手に入る情報では当たり前のことだった。

欠は少し大げさに「ええ。私は満月 雅のファンよ。どうしても、満月さんの勇士を近くで見たくて、嘘をついたの」と言った。

あたかもばれたくないことがばれた様に装って……。

徹碧は「その気持ち分かるよ。私もカバーするよ」と言ってくれた。

そして、「満月さんってかっこいいよね」と付け加えた。

これには欠も同意をした。


雅たちは朝の練習に加え、空いている時間等に図書館でバスケ関係の本を読み戦術の研究をしていった。

週に1度くらいは4、5、9組のもう1つのバスケチームと合同で朝練を行う。その中で研究した戦術を実際に試してみたりもした。

そうやって、どんどんと実力を上げていった。

球技大会直前の土曜日には、4、5、9組の女子バスケ部員に練習試合をしてもらった。

手加減をしてもらってだが、それなりの勝負が出来た……つもりだ。

バスケ部員からも、「学校の球技大会に出ていいレベルのチームじゃないね」とお墨付きをもらった。

ただ、雅たちの相手は新月 虚だ。総合センターで見た新月 虚のレベルは相当高かった。

当時の新月 虚であれば、今の雅でも勝てるだろう。

しかし、新月 虚は確実にこの数週間でも実力を上げてきている。油断はできなかった。

日曜日は球技大会に備えて各々体を休めることに専念した。

そして、月曜日。

遂に球技大会が始まった。

夏の球技大会は計2日。

全ての競技で1日目は予選を行い、2日目に学年と男女で分けた各階級毎に予選を勝ち抜いた2チームで決勝を行う。

バスケの予選は参加チームを階級毎に2つのリーグに分けて行う。また、予選は試合数が多いため10分のワンクォーターで試合を行う。

雅たちは圧倒的な戦力で予選リーグを全勝して、決勝へと進んだ。もちろん、2年女子のもう1つのリーグは新月 虚達が全勝してして予選リーグに進んだ。

予選リーグでは雅たちの準備してきたものがすべて面白いように刺さった。

しかし、決勝の相手は新月 虚だ。

今日の雅たちの試合を見て、対策を考えてくるに違いなかった……。

というわけで、放課後になると雅達と星空の7人で学校近くのファーストフード店で作戦会議を行った。

闇空は決勝に進んだので、卓球の練習をするために欠席。

鳶葦は今日取ったメモと写真の整理のために、新聞部部室へと連れていかれ欠席。

そんなわけで予選落ちして、放課後予定のない星空だけがついてきた。

7人は各々好きなものを勝手に注文して席に着いた。

雅はエビカツバーガーとハッシュドポテトのセット、

欠はハンバーガーを7つ程、

徹壁はウーロン茶のみ、

貫は3種のチーズ特盛特製バーガーとフライドポテトのセット、

的撃もウーロン茶、

空田はホットドッグ、

星空はカフェオレを注文した。

席に着くと先ず欠が1つ目のハンバーガーの包み紙を外した。今日は一日中動き回っていたためお腹がすいたのだろう。徹碧は欠のハンバーガーを物欲しそうに見ながら、空腹を誤魔化そうとウーロン茶に口をつけた。

「今月お小遣い厳しいの?お腹すいているでしょ、1つ上げる」

欠は視線に耐えかねてハンバーガーを1つ徹碧の前においた。

徹碧は「ありがとう。でも、間食すると体重が増えるから……」とハンバーガーを差し戻した。バレー部は全国を目指している。徹碧はそのバレー部のレギュラーとして、それなりのストイックさがあるのだろう。

欠は差し戻されたハンバーガーを、徹碧がいつでも取れる様に、自分のトレーの外に置いた。

徹碧は視線をハンバーガーからなかなか離せない。

それに気づいた貫が徹碧の肩をポンポンと叩いた。

「大丈夫。大丈夫。てっちゃんはいつもバレー部で頑張っているから……。

 それに今日はずっとバスケの試合していたでしょ。だから、ハンバーガーの1個ぐらい誤差の範囲だよ。」

貫の言葉が徹碧を誘惑する。

「でも……」

徹碧は何か反論をしようとした。欠の前に置かれたハンバーガーが見つめ返してくる。

今日は1日コートの上を走り回ったのだ。胃の奥から手が出そうなほどお腹がすいている。

そんな徹碧を引きずり込むように貫は言葉を続けた。

「それに食べ過ぎると太るけど……、

 食べないと体重と一緒に筋肉まで落ちて結果が出なくなるよ」

貫はいい笑顔である。

『食べなければ筋肉が落ちる。

 そしたら跳べなくなる。

 食べる事も体づくりの一環。

 なら、しょうがない』

と徹碧はハンバーガーに手を伸ばそうとしていた。

そんな中で急に高薙の顔が脳裏に浮かんだ。心なしか自分を蔑んでいる気がする。

『私の仲間達ならそんな言い訳には乗らない』

徹碧は心の中でそう唱えた。高薙のおかげ(?)で何とか貫の甘言に乗らずに済んだ。

胃から出た手が喉を通り身体に戻る気色悪いような心地いいような感触がする。

「私は弱いから、その1個でタガが外れそうなんだ」

徹碧は貫にそう言った。貫は「そっか」と返した。

そんな徹碧に横から的撃が「分かるわ」と同調した。因みに的撃の手は欠の前に置かれたハンバーガーの方へとアメーバのように伸びていた。

徹碧の言葉を聞いて的撃は引きずるように手を引いた。

「的撃ちゃんも我慢しているの?

 バスケ部引退したし、そこまでストイックにならなくてもいいじゃない?」

貫は不思議そうにそう聞いた。貫にとって減量は結果を出すための1手段でしかない。そのため、バスケ部を引退したのに食べるのを我慢する的撃が理解出来なかった。

「バスケ部引退したからよ。

 最近腰回りが気になりだしたのよ」

的撃は『常識でしょ』と言うような口調で説明した。

貫は少し自分の頭の中を探ってみた。そして、的撃の言おうとすることが理解できた。

「なるほど。ダイエットっていうやつか。

 始めてみた」

貫はそう言って納得した。貫の周りは陸上部の生徒ばかりだ。

ダイエットとは無縁で本当に初めて見たのだろう。

貫は物珍しそうに的撃を見た。

「そんなに珍しいものじゃないわよ。ね、星空さん」

的撃は星空に振った。ここに集まったメンバーで一番星空が運動と無縁そうだったからだろう……。

星空はいきなり振られて驚いた。

「……そうね。結構周りにいるよ。

 私の友達でもテスト期間に夜食を食べ過ぎて、今ダイエットを頑張っている人がいるわ……」

星空は平然を装ってそう言いながら目を逸らした。雅はそんな星空の様子に笑いそうになるのを何とか我慢した。

「ほらね。陸上部が無縁なだけで、結構ダイエットしている娘はいるのよ」

的撃は星空の賛同を得てそう言い返した。

そして、星空に向けて付け加えた。

「後、星空さん。おせっかいかもだけど……。

 案外飲み物で太ることもあるから気をつけてね」

星空は「友達にそう伝えておくわ」と言いつつカフェオレに口をつけた。そう言われてしまうとよく味わえない。

「なら、ほしーと的撃ちゃんとてっちゃんはいらないから、

 私が2つ貰っていいかな?」

貫はそう言いながら欠のハンバーガーを2つ取ろうとした。欠は貫の手をペシッと払った。

「ごめんごめん。なら1個もらうね」

貫は諦めず欠のハンバーガーを今度は1つだけ取ろうとした。今度も欠に手を払われた。

「ひかりん。私の分は?」

貫は納得いかないという風にそう聞いた。

欠は「ない」と言って2つ目のハンバーガーの包み紙を外した。

貫の目線は下へと落ちた。毎朝一緒に練習してきたチームメイトに拒絶されたのがショックだったのだろう。

「なんで私だけ……」

貫はそう小言をこぼした。

欠の前にはハンバーガーが7つあった。この場には7人いた。

常識的に考えれば、ハンバーガー7つを体の小さな欠が食べるとは思えない。そうなると、欠はみんなにハンバーガーを分けるために買ったのだと思ってしまう。

貫の中ではそう言うことになっていた。だから、自分だけ欠に拒絶されたと思ったのだ。

普段の欠の食生活を知らなければ、そう思っても無理はない。

徹碧が「陽光さんは自分で食べるために、7つ買ったんだよ」と貫にフォローを入れた。貫は欠の方を見た。欠は頷いた。貫の口から「よかった」と言葉が漏れた。

そんなやり取りを見ながら星空は雅に「なんか、みんな仲良くなっているね」と言った。

雅は欠の方を一瞥して「そうね」と言った。いつもより少し嬉しそうである。

「バスケ。楽しそうでいいな」

星空はそう呟いた。雅は「サッカーは楽しくなかったの?」と聞いた。

星空は「いや、楽しかったよ」と返した。雅は「それならいいじゃない」と相槌を打つ。

星空は「うん」と返してカフェオレに口をつけた。サッカーは授業の中だけで練習して、試合の時だけチームになっていた。所詮は球技大会なのだからそれが普通だ。文化祭や体育祭でもあるまいし……。

でも、学校行事が好きな星空からすると、学校外で練習したり、こうやって作戦会議をするのが羨ましく感じた。

そんな星空の感傷と貫たちの談笑を遮るように空田が声をだした。

「そろそろ明日の作戦会議をしない」

空田の声に貫たちは静かになった。ここにいるのは精鋭たちだ。引き締めるべきところは引き締められる。

一瞬で場の空気が反転した。星空は少し気圧されている。

「星空さん。お願いしていたあれを見せてもらえるかしら」

空田の言葉に星空は「はいっ」と返事をした。場の空気に飲まれている。

そして、クラスメイトと協力して撮影した、新月 虚達の試合の映像を共有した。早送りで2試合分の試合の映像を見た。

雅達は極力新月 虚達の試合を見るようにしていた。しかし、自分たちの試合やウォーミングアップで落ち着いて見れなかったため、ちゃんと見るのは初めてだった。

やはり新月 虚達は想像以上の強敵だと分かった。

試合を見終わると、手短に作戦を決めて、明日へ備えて早めに解散した。

読んでくださりありがとうございます。

面白ければ次回も読んでいただければと思います。

次回は7月5日に投稿する予定です。


以下、謝罪、今回の話の感想と次回予告を書きます。

[謝罪]

 6月のエピソードについては上を6月28日、下を6月29日に掲載する予定でした。

 ですが、今月は残業が多く書く時間が取れなかったのと、当初の予定よりも分量が多くなったため掲載日が伸びてしまいました。

 申し訳ございません。


 7月のエピソードは7月27日に掲載できるように頑張ります。


[今回の話の感想]

 今週はついに雅のライバル新月 虚が出てきました。

 新月 虚は作者が成りたかった理想の自分と、

 高校時代の恩人を足して、少しの弱点を加えて作っています。

 これからのエピソードでさらに魅力的なキャラクターになるように頑張りたいです。


 本編とは関係ない話ですが、今回欠が星空におすすめした小説「地下室の手記」は作者にとって、最終的な目標とする小説です。

 作者はこの小説を初めて読んだときに、自分と似た部分を主人公に感じ取って思いっきり感情移入しました。

 そんな作品を書けたらなと思っています。


[次回予告]

 次回は球技大会回の後編です。

 雅と新月 虚達の対決になります。

 新月 虚は雅を倒すことができるのでしょうか……。

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