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東京幻怪録  作者: めくりの
一章
9/71

第九話 「異星の影、地球の刃」

 とある晴れた昼下がり、特務機関のメンバーたちは任務の合間に珍しく集まって昼食をとっていた。凛が話題を振り、珍しく世間話に花が咲いていたところへ、通信が入る。


「緊急連絡です!都心に謎の飛行物体が出現し、特務機関の対応が要請されています!」


通信を聞き、葵が目を輝かせる。「飛行物体ってことは……宇宙人!?まさかの宇宙人登場ってやつ!?」


隼人が大笑いしながら冗談めかして言う。「まさかな、宇宙人なんておとぎ話じゃあるまいし。でっかい戦斧で、どうやって奴らと戦うんだって話だろ?」


しかし、次の瞬間、スクリーンには都心の空に浮かぶ円盤型の飛行物体が映し出され、一同の表情は一気に真剣になった。麗奈が数珠を握りしめながら、「妖気とは違う異様な気配があるわね……気をつけましょう」と警告する。


その報告には、宇宙人が都内の公園に出現し、怪しげな機器を用いて何かの活動を行っているという情報が記載されていた。誰かの冗談かと思わせる内容だが、特務機関には通常の警察では対処できない案件が届くため、メンバーは訓練の一環として調査に出ることとなった。


_______________________________________________


現場に向かう車内で、斎藤がぼそりとつぶやいた。「まさか宇宙人なんてな……いや、これで動く俺たちもおかしなもんだが」


助手席に座る深見夏菜が、斎藤の言葉に同意するように頷きつつ、冷静な声で返す。「まったく。妖怪でも霊でもない相手なんて、どう対処すればいいのかしらね。でも、これも新しい経験と思って挑むしかないわ」


後部座席のメンバーたちはそのやりとりを聞きながら、小声で笑いを漏らしていた。特務機関の仕事に慣れているとはいえ、さすがに宇宙人との対峙は想定外だ。だが、斎藤も夏菜も表情を崩さず、淡々と任務に向かう姿勢を保っているのが印象的で、彼らの内に秘めた緊張感が伝わってきた。


_______________________________________________


特務機関のメンバーが現場に到着すると、すでに公園の空気は異様なものに包まれていた。

公園の中心に設置された謎の装置は青白い光を放ち、周囲の重力が不安定に感じられるほど、空間がねじれている。装置の周りには緑色の皮膚を持つ宇宙人たちが、何か複雑な操作を行っていた。彼らの手に持つ奇妙な機械からは、異常な数値を示す波動が放出され、普通の妖気とはまったく異なるエネルギーが拡散されていた。


「これ、ただの監視機器じゃないわね……むしろ、エネルギー転送装置のように見える」


葵がタブレットで測定したデータを確認し、驚いた表情で皆に伝える。その言葉に、隼人が顔をしかめて斧を握りしめた。「要するに、ぶっ壊せばいいってことか?」


「そう簡単にいくかどうかは分からないわ。機器が展開している防御シールドがかなり強力みたい。私たちの通常攻撃が通用するかは微妙ね」


深見夏菜が冷静に状況を分析し、仲間たちに警戒を促した。その瞬間、宇宙人の一体が奇妙な動きを見せ、何かを装置に向かって操作し始める。次の瞬間、強烈な閃光が放たれ、目が眩むような白い光があたり一面に広がった。


「くそ、こんなトリックまで使うのか!」隼人が叫び、影を目で追おうとするが、視界が乱されて思うように動けない。


その中、斎藤義明は冷静に目を閉じ、瞬間的に周囲の気配を研ぎ澄ませた。視界に頼らず、気配だけで敵の位置を探り、わずかに目を開けてライフルを構え直す。その精密さに驚いた様子の夏菜が、「頼むわ、斎藤」と短く声をかけると、斎藤はすかさず宇宙人の一体に照準を定め、息を止めたまま引き金を引いた。


弾丸は見事に宇宙人の中心を貫き、周囲の閃光が一瞬にして揺らいだ。その隙に、夏菜が短剣を片手に地を蹴り、一瞬で装置の近くまで跳躍する。彼女の動きはまるで影そのもので、機敏かつ無駄のない軌跡を描き、次の宇宙人に向かって鋭く突き刺さる。


「うまく隙を作ってくれて助かったわ、斎藤」


「お前が動くからこそ、こちらも狙いがつけやすいってもんだ」


その間にも、装置から放たれたエネルギー波がメンバーたちを包み込もうと広がっていく。斎藤がライフルを連射し、葵が装置の波動を観察しながら仲間に情報を伝える。「今のところシールドの隙間が見えないわ。これ、かなり厄介なテクノロジーね……」


「どうにかして、そのシールドを破る方法を見つけないとだな」


一瞬の間、全員がどう突破するか悩んでいる中、麗奈が数珠を握りしめ、冷静に呪文を唱え始めた。彼女の祈りが周囲に安らぎの波を送り、仲間たちの動きに安定をもたらす。隼人はその光の中で再び戦斧を握りしめ、今度は冷静さを取り戻し、宇宙人たちに突進していく。


「風間、霧を巻き上げて奴らの視界を奪え!」斎藤が指示を飛ばし、風間が指輪に妖気を込めて突風を送り出す。霧が広がり、宇宙人たちの視界が遮られた瞬間、隼人が戦斧を振りかざして装置に突進したが、再びシールドに跳ね返される。


「ちっ、硬すぎるだろ、これ!」


その瞬間、夏菜が装置をじっと見つめ、何かを悟ったように言った。「あのシールド、一定の間隔でエネルギーが弱まっている。次のタイミングで一気に突入するわ」


斎藤が再びライフルを構え、夏菜の計算に合わせて動く準備を整える。彼女が短剣を握りしめて装置に向かって駆け出すと、斎藤もその背後から全力で援護射撃を行った。弾丸が宇宙人の動きを封じ、シールドが弱まった瞬間、夏菜が装置に飛び込むように突き刺し、ついにシールドを突破した。


装置が急激に不安定になり、周囲に強烈な風が吹き荒れる。

装置の中心部から異様な音が響き、宇宙人たちがそれに応じて不規則な動きを見せ始めた。その混乱の中、装置の一部が爆発し、宇宙人たちは次々と倒れ込んでいく。


「さすがだ深見、完璧なタイミングだった」


夏菜が息をつきながらも斎藤に軽く笑いかけ、斎藤も珍しく満足げに頷く。最後の宇宙人が装置にすがりつくようにして倒れたその瞬間、装置のエネルギーが一気に消滅し、周囲の空気が静寂に包まれた。


_______________________________________________


帰り道、車内で仲間たちは戦いの話に花を咲かせていた。

「宇宙人のシールド、まさかあそこまで硬いとはな」と隼人が苦笑しながら言い、風間が指輪を弄りながら同意するように頷いた。「僕の風も、あのシールドには全然通じなかったし、さすがに焦ったよ」


葵がタブレットを眺めながら、「でも、あれほどのテクノロジーに勝てたってことは、私たちもそれなりにレベルアップしてるのかもね」と笑みを浮かべると、斎藤が少し照れくさそうに視線を逸らしながら言った。


「いや、今回は全員の連携がうまく噛み合っただけだ。次も気を抜かないようにしないとな」


夏菜がそんな彼に視線を送り、落ち着いた声で返す。「あなたの狙撃のおかげで、何度も助けられたわ。次も頼むわね、斎藤」


斎藤が短く「任せておけ」と答え、車内に小さな笑いが広がる。

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