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東京幻怪録  作者: めくりの
六章

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第七十話 「地球食探求譚:ワールドフードフェスタの異星人」

 お台場海浜公園の朝は、冬の柔らかな陽光に包まれていた。

海から吹き抜ける風が冷たくも心地よい中、ワールドフードフェスタの準備が着々と進められていた。世界各国の料理が集結し、多くの屋台が並ぶ中で、甘い香りやスパイスの香りが漂い始めている。平和な光景だが、冥府機関東京本部に任務が下されることとなった。


「どうして俺たちがこんな場所に?」

凛が腕を組みながら、フェスタの人混みを眺めていた。その鋭い目つきは、場違いなこの任務に対する疑念を浮かべている。


「宇宙人だなんて、冗談みたいな話ですけど……上層部がわざわざ指示してきたのだから、無視はできませんね」

麗奈が穏やかに微笑みながら、屋台の並ぶ通りを見回していた。その柔らかな口調とは裏腹に、手元の数珠を指でなぞる動きには、何かが起こる可能性を警戒する気配があった。




_______________________________________________


数日前から、ワールドフードフェスタの会場付近で「奇妙な人物」が目撃されているとの報告が上がっていた。目撃情報には共通点があり、「不自然に浮いているように見える動き」と「地球の言語を理解していない様子」が挙げられている。


「地球の食事に興味がある宇宙人って……どこか抜けてる感じがしますよね」

麗奈が小さく笑いながら言うと、凛は静かに答えた。「抜けているかどうかは関係ない。敵対する意図があるかどうか、それを確認するのが俺たちの役目だ」


会場を歩き回る二人は、ふと視界の端に不自然な存在を見つけた。頭に触覚のような飾りをつけ、全身を銀色のボディスーツで包んだ人物が、カレーの屋台をじっと見つめている。周囲の人々はその姿をパフォーマーか何かと思っているのか、特に気にしていないようだ。


「灰島さん、あれですか?」

麗奈が静かに指さすと、凛はすぐにその方向へ視線を向けた。「可能性は高い。接触する」


二人が近づくと、その人物は振り返り、ぎこちない動きで片手を挙げた。「コ、コノクニノ『カレー』……スゴイニオイ、ナゼダ?」


「やっぱり宇宙人……?」

麗奈が驚きながらも穏やかな声で問いかける。「こんにちは。私たちはこの場所を守る者です。あなたはどちらからいらしたのですか?」


宇宙人らしき存在はしばらく考え込むように動きを止めた後、答えた。「ワタシ、トオイホシカラ……シリタイ。地球ノ『タベモノ』ナゼ、コンナニ……オイシソウナノカ?」


凛は鋭い目で宇宙人を観察しつつ、「お前の言う '遠い星' とはどこだ? 地球に来た理由は本当に食事の調査だけなのか?」と問いただした。


「ソウ、タベモノ……ワレワレノホシ、タベモノ薄イ。地球ノ、ナゼ美味シイカ……知ル必要。」

宇宙人は懸命に言葉を選びながら答える。その不器用さに、麗奈は思わず小さく微笑んだ。「彼、あまり悪意はなさそうですね」


「それでも、確認は必要だ」

凛が一歩前に出ると、宇宙人は少し身構えたように後退した。しかし、その目には怯えよりも純粋な興味が宿っている。


突然、周囲がざわめき始めた。何か異常を感じた宇宙人が手をかざすと、その動きに反応するように屋台の一部が宙に浮き始めた。


「待て、その力を乱用するな!」

凛が影喰いを抜き、冷静に宇宙人を睨みつける。


「ワタシ、止メルツモリ……アレ?」

宇宙人が慌てて手を振るも、浮かび上がった屋台は次々に回転を始め、周囲の人々が悲鳴を上げる。


麗奈が即座に笏を取り出し、浄化の呪文を唱え始めた。「灰島さん、時間を稼いでください!」


「了解」

凛は影喰いを振り抜き、屋台を飛ばしていた力を霧散させるとともに宇宙人に向かって突進した。しかし、宇宙人は予想外の素早い動きで後退し、空中に逃れる。


「ワタシ、悪クナイ! シラナイダケ!」

宇宙人が慌てた声を上げると、麗奈が手を挙げて止めた。「待ってください。彼、本当に地球の食事について知りたいだけのようです」


凛は冷静な表情で影喰いを収め、宇宙人を見据えた。「なら、これ以上混乱を起こすな。我々が地球の食事を教える」




_____________________________________________


宇宙人と和解した後、三人はワールドフードフェスタの屋台を回り、次々と料理を試していった。カレーを一口食べた宇宙人は目を輝かせ、「コレ、ウチノホシニモ……モッテイキタイ!」と感激する。


麗奈が微笑みながら「食事は人々をつなぐ力がありますから。きっとあなたの星でも喜ばれると思いますよ」と言うと、宇宙人は何度も頷いた。


凛は少し距離を置きながら、「お前の星に戻る前に、この混乱の責任を取れ」と静かに釘を刺した。その冷静な態度に、宇宙人は恐縮しながら「ワカッタ、オ掃除スル!」と答えた。


こうして、フェスタは平和を取り戻し、宇宙人は地球の食事に満足して帰路に着いた。凛と麗奈はお台場の夕陽を背にしながら、静かに次の任務へと思いを馳せた。

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