第六十七話 「冥府機関との全面協力」
原宿での調査から数日後、未明の東京湾岸エリアで異常な妖気の急上昇が観測された。冥府機関本部では、深見夏菜が冷静な口調で報告をまとめる。
「黒羽根の女の影響下にある可能性が高いです。妖気の密度が尋常ではありません。怨獣の発生が予想されます」
一方、アトラスのアレックスも情報を受け取り、メンバーを緊急招集した。
「この状況では、冥府機関との全面協力が必要だ。私たちの技術だけでは妖気を扱えない」
こうして、冥府機関とアトラスは合同作戦を開始することになった。だが、両者のアプローチの違いが再び表面化し、現場での緊張感を予感させていた。
東京湾岸の工業地帯に到着した両チームが目にしたのは、空間そのものが歪んでいるような異常な光景だった。建物はねじれ、地面から黒い霧が立ち上り、不気味な音が響き渡る。
「この区域は妖気に完全に支配されています。人間の立ち入りは極めて危険です」
冥府機関の灰島凛が状況を冷静に説明する。
セリーナが小型スキャナーを操作しながら答えた。
「スキャン結果では、この空間の物理法則が部分的に崩壊しているわ。地球の科学では説明がつかない」
その時、地面が大きく揺れ、巨大な影が黒霧の中から現れた。それは無数の怨霊が絡み合い、建物ほどの高さを持つ新たな怨獣だった。
怨獣は低い咆哮をあげながら巨大な腕を振り下ろし、地面を砕いた。その衝撃でチーム全員が一瞬怯むが、すぐに行動を開始する。
「まずは動きを止める!」
アトラスのアレックスが指示を出し、ヴィクトールが重火器を使って牽制する。爆発音とともに怨獣の一部が吹き飛ぶが、即座に再生する。
「効かないのか…」
ヴィクトールが歯を食いしばりながら呟く。
「怨獣は物理攻撃だけでは倒せない。妖気を封じる必要がある!」
深見夏菜が叫び、双短剣を手に霧の中へ突撃する。
セリーナが驚いた顔で追いかける。
「ちょっと、無茶しないで!」
夏菜の双短剣は妖気を打ち払う力を持つため、怨獣の霧を切り裂くことができた。その隙をついて冥府機関のメンバーが怨獣の中心部を目指す。
激しい戦闘の最中、葵の右腕が再び薄い光を放ち始めた。変身アイテム「エターナルリンク」が起動しようとしているのだ。
「葵、この怨獣はただの妖気ではない。黒羽根の女の力が深く関与している」
ルミエールの声が心の中で響く。
「つまり、あなたの力を使えば解決できるってこと?」
「可能性は高い。しかし、アトラスの技術と冥府機関の術式を合わせれば、変身せずに対処できるかもしれない」
葵は一瞬迷ったが、変身を選ばず、周囲の状況に目を凝らした。
「まだタイミングじゃない。みんなの力でやれるところまでやる!」
エターナルリンクの光は薄れ、再び沈黙した。
冥府機関とアトラスは、それぞれの得意分野を活かしながら作戦を進めた。冥府機関は妖気を封じ込めるための術式を準備し、アトラスは最先端の装備を使って怨獣の動きを抑える。
「ジエン、怨獣の構造をスキャンして弱点を解析しろ!」
アレックスが指示を出す。
ジエンが即座に反応する。
「了解。解析中…中心部にエネルギー核がある。そこを破壊すれば、再生を止められる可能性が高い!」
灰島凛が頷きながら応じた。
「我々が術式で核を露出させる。その間、攻撃を加えて動きを止めてくれ」
セリーナが微笑みを浮かべた。
「了解よ。やっと協力できる気になったのね」
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術式が完成し、怨獣の中心部が一瞬露出する。アトラスのヴィクトールが大型火器を構えた瞬間、怨獣が咆哮を上げ、強烈な妖気の波動を放った。その衝撃でメンバーが次々と吹き飛ばされる。
「くそっ、間に合わない!」
アレックスが叫ぶ中、夏菜が立ち上がり、双短剣を手に怨獣へ突進する。
「まだ終わらせない!」
夏菜の攻撃が核に到達し、怨獣が一瞬動きを止めた。その隙をついて、ヴィクトールの火器が核を破壊し、怨獣は崩れ落ちた。
怨獣の消滅により、空間の歪みは徐々に収まり、静寂が戻った。冥府機関とアトラスのメンバーは互いに視線を交わす。
「今回はうまく連携できたわね」
セリーナが皮肉っぽく言うと、夏菜が静かに微笑んだ。
「あなたたちの技術のおかげよ。私たちだけでは手に負えなかった。まあ、あの宇宙人がいれば話は別だったけど」
アレックスも頷いた。
「冥府機関の術式がなければ、核を露出させることはできなかった。我々のアプローチを見直す必要がある」
葵は少し離れた場所で右腕を見つめた。エターナルリンクは再び消えている。
「ルミエール、今回はみんなの力で解決できた。でも、次はどうなるかわからないね」
ルミエールの声が心の中で答えた。
「君の判断は正しい。だが、いずれ私の力が必要になる時が来る。それを忘れないでくれ」
葵は小さく頷き、仲間たちの元へと歩き出した。
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この事件を通じて、アトラスと冥府機関は互いの能力や信念を少しずつ認め合った。しかし、それでも完全な信頼には至らない微妙な関係が続く。
「次に何が来るか、私たちも全力で準備するしかないわね」
夏菜の言葉に、葵は頷きながら心の中でルミエールに語りかけた。
「私は、守り抜くから」
こうして、新たな戦いに備える彼らの物語は続いていく。




