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東京幻怪録  作者: めくりの
四章 東京・大阪交流会

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第六十話 「帰還の道」

 冷たい冬の風が、大阪本部の敷地内を吹き抜ける。空は澄み渡り、柔らかな日差しが庭の松や石畳を照らしていた。その光景の中、冥府機関東京本部のメンバーたちは準備を整え、帰還の時を迎えていた。


「ほんまにお世話になりました!」

葵が元気よく一礼し、大阪本部のメンバーに向けて手を振った。その隣で亮も「いやー、大阪最高だったよ! もうちょっと居たかったくらい!」と笑顔を見せる。


「そら嬉しいこと言うてくれるなぁ。けど、こっちはまだまだ仕事があるんや。次、会う時はまた共闘しようや!」

堂島蓮司が豪快に笑いながら答える。その声にはどこか寂しさも混ざっていた。


「あなたたちの力、心強かったわ。また何かあればすぐに連絡するから」

沙羅が月映の楯を手に、東京のメンバー一人ひとりに目を向けて言う。彼女の言葉はいつものように冷静で落ち着いていたが、その瞳には感謝の気持ちが込められていた。


凛が一歩前に出て、短く頭を下げた。「今回の任務での協力、感謝する。大阪本部の支援がなければ、いくつもの命が危険に晒されていただろう。」


その言葉に、堂島は満足そうに頷いた。「こっちもお前らのおかげで、天狐やらなんやらを抑えることができたんや。ほんま、頼りになる奴らやな」


葵が横から口を挟むように、「堂島隊長もすっごく頼りになりましたよ! あんな凄い雷鳴号、初めて見た!」と笑うと、堂島は大きな声で笑った。「そら、俺の自慢やさかいな!」


麗奈が静かに微笑みながら言葉を添えた。「皆さんの優しさとチームワークには、本当に助けられました。またお会いできる日を楽しみにしています」


_____________________________________________


大阪駅に向かう道中、メンバーたちはそれぞれが静かに大阪での任務を振り返っていた。天狐との戦いや、大阪本部との模擬戦、そして大阪で解決した数々の事件。それら全てが濃密で充実した日々だった。


「大阪の人たち、明るくていいよね」

葵が窓の外を見ながら呟く。その言葉に、亮も同意するように頷いた。「ほんと。なんか、あったかい感じがしたよな」


隼人が腕を組みながら静かに言う。「あいつら、実力も本物だ。だが、それ以上に人間味がある。いい連中だった」


凛は何も言わず、車内で目を閉じていた。彼の中には、多くの思考が渦巻いていた。天狐との戦いで感じた妖怪との繋がり、大阪本部との協力で見えた新たな戦術。そして、メンバーたちの成長。


麗奈がそっと声をかける。「凛さん、少しは休んでください。帰ったらまた忙しくなりますから」


凛は目を開け、軽く頷いた。「そうだな。だが、今回の経験は無駄にはしない」


_____________________________________________


新幹線に乗り込んだ一行は、それぞれ思い思いの時間を過ごしていた。葵と亮は窓の外を眺めながら、お好み焼きやたこ焼きの話題で盛り上がり、隼人は車内販売で買ったお土産を大事そうに手にしている。


「これ、東京本部に持って帰ったらみんな喜ぶだろうな」

隼人がにやりと笑いながら言うと、葵がすかさず突っ込んだ。「いやいや、ほとんど自分で食べるつもりでしょ!」


麗奈は車内の落ち着いた空気の中で、そっと祈りを捧げていた。「今回の任務で救われた命が、平穏でありますように」


凛は手元にある資料を見つめていたが、ふと視線を上げると、仲間たちの和やかなやり取りを見つめて小さく息を吐いた。その表情には、ごくわずかながら安堵の色が浮かんでいた。


_______________________________________________


新幹線が東京駅に到着し、冷たい冬の風が再び彼らを迎えた。荷物を持ちながら本部へ戻る道すがら、全員の表情には新たな決意が宿っていた。


「さて、戻ったら報告書を書くのが先決だな」

凛が冷静に言うと、葵がげんなりした表情で「えー、それ、亮にやらせちゃダメ?」と言い、亮が「俺だけ押し付けるなよ!」と即座に反論した。


「まあまあ、みんなで協力しましょう」

麗奈が優しく微笑みながら二人をなだめる。その光景を見た隼人は、「お前ら、本当に変わらねえな」と呆れたように笑った。


本部の扉をくぐり抜けた瞬間、東京の冷たい空気と共に、また次の戦いが始まる予感が全員の胸に広がった。だが、大阪での経験が彼らをさらに強く、絆を深めたのは確かだった。

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